表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Battle Bet Quest (ばーべきゅう)  作者: 五流工房
お約束(イベント)編
11/18

4.3話~4.6話_お約束4品

おや、またお会いしましたな。

今回は、本編では語り継げないと申しますか、ぶっちゃけ語るには、内容が少々乏し過ぎましたゆえ、ここで一気にまとめて語ってしまおうと言う試みでございます。


しかし


どうでもいいお話から、本編に重要なお話まで、色々と用意しましたので、どうぞお気軽にお読みいただければ幸いでございます。


それではそろそろ始めるとしますかな。

まずはこちらから。




Battle(ばー) Bet() Quest(きゅう) 4.3ミシシッピ_小さな願い ~




暑い日差しにも負けず、今日も一行を乗せてケバスは走ります。

旅の前半までは、ケバスの活躍により、一行のレベルがひたすら上昇しておりました。

ですが。現在は、本来の役割であります馬車的存在に戻り、一行を乗せて旅をする乗り物(なかま)となったようです。


そんなある日の事。

ケバスの燃料補充のため、とある町に立ち寄った一行。その町で燃料を補充し、すぐに出発する予定だったのですが。


「着ぐるみ大会だって。どうするヒロさん?」

「え?僕が参加するのかい?」

「だって、男女ペアって書いてあるし、それに他の仲間だってほら」


「仕方ないわね、行くわよアキト」

「ああ」


「ハクトはん。これでまた一儲けして遊ぼうや」

「お供します姉御」


「ね?だから~いいでしょ?」

「じゃ~参加しようか」


どうやら本日は、この町で『着ぐるみ大会』らしき物が開催される模様。

各々パートナーを見つけ、会場へ入って行くのであります。


「………………。うちも着ぐるみ着たかったな」


会場の外では、女武道家が独り残され、あいや。正式には、消去法で出遅れたしの。

決して彼女の事が嫌いであるとかではなく、たまたまの偶然なのであります。


「はぁ。これからどうしよう。やけ食いでもするか?」

「ならうちも連れて行ってくれへん?」


背後から聞き覚えのある声が聞こえて、慌てて振り返る彼女。

そこに立っていた人物、それは先輩でありました。よく見ると、先輩だけではなく、全員が戻って来ていたのです。


「ど、どないしたん?大会に参加するんやなかったん?」

「聞いてしの。この大会って、仲間(パーティ)の中から代表2名までしか参加出来ないんだって」

「へ?そうなんや」

「そうなんですよ。ですから、今から話し合って代表を決めたいのですが、私、是非とも参加したいです。女性の方で、どうしても出たい人いません?いないのなら、私が女性代表になります」

「私はさわっちに譲るわ。どうしてもってこだわりないし、パイセンはどうです?」

「私も妹が出たいなら譲るで。積極的に、殿方と密着したいみたいだし」

「ち、違うもん。ただ着ぐるみに入りたいんです。はっ。確かに男女ペアってなると……あの狭い中で……逃げ場なしですね」


突然悪寒が走り、怯えた瞳で男性メンバーを見るさわ。

そんな顔を見せられては、誰も代表になんかなりたくないと、心の中で思う男3人。


「さわくん、俺とハクトは降りるよ。みあに悪いし、嫌な思いはさせたくないしな」

「んだな。って事で、ヒロ。お前が代表な」

「え?ちょっと待って。さ、さわちゃんは正直どうなの?嫌なら参加しなくていいんじゃない?」


長い旅路。旅のいざこざは極力避けたいと思うヒロ。どうにかして諦めさせようと考えていたその時。


「あの。うち……出たい……です」


恥ずかしそうに、小さな声で宣言する彼女(しの)

その言葉を聞き逃さず、悪知恵(かいけつさく)を思いつく先輩。


「じゃあ、妹としのちゃんで出ればええんとちゃう?」

「でもパイセン。女同士は参加出来ないんですよね?」

「せやから~どちらかが男になればええんよ。それが可能な人物がそこにおるしな」


「え?僕ですか?……あ、なるほど」


ヒロの奇跡の力を使用し、どちらかを男にしてしまえば万事解決。無茶苦茶ではございますが、確かにこれが最善の解決策だと思い、ヒロは先輩の作戦に同意しました。

そして、どっちが男になったかと申しますと……


「なんだか不思議な感じやな」

「しのさん、ごめんなさい。不快じゃないですか?」

「え?別にかまへん。うちも参加したかったし、身体はこんなんやけど、着ぐるみ入れるなら安いもんや」

「しの。戦闘外(フィールド)での使用だから、日没までは効果は続く。すまないが我慢してくれ」

「おおきに。ほんならさわさん。受付に行こう」


嬉しそうに会場へ向かって行く彼女達。いや、今は異例のカップルと言った所でしょうか。

しかし、いくつになっても可愛い物を好むと言うのは、やはり女の子。


「俺らはしのが代表になってくれて、正直安心したな」

「んだな。セクハラ変態扱いされずに済んだし。しかし、お前なら喜んで引き受けると思ったのにな」

「何でだよ。別に嫌とかじゃないんだよ。でも、さわちゃんのあのリアクション見ただろ?あんなの見て、喜んで出ますなんて言えるか?」

「な~に今更な事言ってるの?アンタが変態なのはもう十分知ってるから、女性(わたしら)も諦めがつくわよ」

「お前な~。最近扱い酷過ぎだろ。僕が何かしたのか?」


どうやらいつもの日課が始まったようですな。後輩達の会話を楽しみながら、建物の壁に貼ってある、大会のポスターを眺める先輩。そのタイトルには、"密着から生まれる恋もある。第13回 着ぐるみ婚活大会"と書かれております。最初の文字から第13回までが小さい文字で、着ぐるみの文字は多きく、婚活の文字は、吹き出しの絵柄の中に申し訳ない程度に、大会の大きな文字との間に、差し込まれるように書いてあるようですな。


「はは~ん。ネット上の婚活のイベントなんやね。だから男女ペアってのが条件か」


真相を知った先輩。しかし、いや。当然この展開は先輩の大好物であります。おそらく、いえ、確実に彼女達はその事を知るはずもなく、ただ純粋に、着ぐるみに入りたい思いで、参加を決意したのですから。


「ね~みんな。うちらも会場に急ぐわよ。客席から~あの子達を応援してあげるのよ」



先輩の言葉に、何も知らず会場へ歩き出した一行。

真実は大会会場で知る事になるのですが。この結末は、読者(あなた)様のご想像にお任せいたします。




◆◇◆◇◆◇◆




Battle(ばー) Bet() Quest(きゅう) 4.4ミシシッピ_コンビ結成? ~




ゲームの世界とは言え、現実世界と同じように、気温も感じられますが、日本のような四季はございません。この世界は、年中夏と言うのがふさわしい。タイ、マレーシア、シンガポール辺りの気候を、思い浮かべていただければと思いますな。


さて一行は、今日も全魔導士の手掛かりを探すべく、長い長い荒野を突き進むのであります。とは言え、進むのはケバスでございまして、一行は涼しい車内で、のんびりとしておりました。


そんな車内では、一体どんな事を話しているのでしょう。

本日は、ケバス内での何気ない会話を、少しばかり覗いて見るといたしましょうか。



先輩:「もっちゃんです」

しの:「しのちゃんです」


先輩/しの:「「2人合わせてキャラ被りよん(です)」」


しの:「やだやだやだ。もう2度とやらへん」

さわ:「いいじゃないですか。その調子で漫才かコントでもして、その名を轟かせましょうよ」

みあ:「いいわね。ズバリ、コンビ名は?」

さわ:「うちやねん」

しの:「絶対に嫌や。先輩もなんか言うて下さいよ」

先輩:「まずは事務所探しやな」

しの:「何でやる気になってるんですか?私はやりませんからね」


ハクト:「なあ。前から気になってたんだが、昔から姉御としのさんは、あんな喋り方だったのか?」

ヒロ:「先輩は会った時からあんな感じだけど、しのは地元を離れて変化して行ったんだと思うんだ」

みあ:「そうね。あの子は向こうの暮らしに慣れて来てから徐々に変化して行ったわね。でも昔の言葉だって使うでしょ?だから、そっちがあの子本来の喋り方って所かしらね」


どうやら車内では、しのの喋り方がテーマになって来た模様。

確かに、彼女の喋り方には特徴といいますか、性格といいますか、何やら理由があるようで。


さわ:「でも、私は今の喋り方がいいです。何でしのさんは、たまに昔の喋り方になるんです?無意識で出てるのかなぁ?」

しの:「そ、それは……やっぱりおかしいですよね?」

さわ:「いいえ。何でおかしいんです?」

先輩:「せやな。別にそこは誰も不思議に思わん。問題はそこやないんよ?この意味、わかるよね?」

しの:「あ、あの。さっきさわさんが言ってたように、無意識に出るようになったの」

みあ:「て事は、感情の変化か何かで、無意識に地元言葉になるって事?」

しの:「ううん。逆なの。無意識で今の言葉になって、意識を集中すると元に戻る。でも変なのは、感情が上がり下がりすると今の言葉に戻るし」

さわ:「なんだかややこしいですね。でも、しのさんの言葉が変化した時は、冷静になっている証。つまり」

ハクト:「クールビューティーモード」

さわ:「そう、それ。かっこいいですね」

ヒロ:「何気にディスられているような」


しの:「はぁー。先行が不安になって来たわ」


アキト:「理由はそれだけじゃないだろ?この際、話してやったらどうだ?別に隠すような事でもないだろ」


運転席で聞き耳を立てていたアキトが、彼女に告げる。

それを聞き入れ、彼女は語り出したのです。


しの:「先に言っとくけど、これは本当にくだらない理由なの。変な期待とかオチはありませんよ?」


「え~?オチはないの?」と先輩はがっかりしておりましたが、そんな事はお構いなしに、一行に目をやり、少し笑顔で口を開きます。


しの:「私は産まれたあの場所が好き。そして、そこで出会った仲間(みんな)が好き。私にとってそれは大切な宝であり誇り。だからね」


会話の途中、ヒロとアキトとみあを見てしばしの無言。


しの:「意識しなくちゃ出せなくなって来ているこの言葉。私はまだ無くしたくないんです。ただの自分ルールですけどね」

先輩:「ほんまにそれだけ?」

しの:「わ、わかりました。正直に白状します。仲間といる時くらい、昔みたいに普通に話したいんや。あ……すみません」


みあ:「そんな事気にしなくていいわよ。私とあんたは親友なのよ。言葉が変わった所で何も変わらないし」

ヒロ:「そうだよ。時とともに僕たちも変化して来たじゃない。でも、今も変わらずここにいるし」

アキト:「だそうだ。安心したか?」


しの:「そ、せやね。でも、これからもうちはこのままでいさせてもらうで」

先輩:「よっしゃ。なら事務所探しやな」

しの:「せやから、何でそうなんねん」



さわ:「とりあえずオチもついた所で、次は私と姉さんのキャラ被りね」

ヒロ:「いや、そこは顔が似てるだけで、後はさわちゃんが自分で似せて行ってるだけだから」


まだまだ話は尽きぬようですな。

しかしながら、お時間となってしまいましたゆえ。今回はこのへんでお開きといたしましょう。




◆◇◆◇◆◇◆




Battle(ばー) Bet() Quest(きゅう) 4.5ミシシッピ_必殺技は青いもの ~




穏やかで、平和に見えるこの世界でも、どうしても避けては通れない道がございまして。

それは何かと申しますと。


「ほんならいくで、ハクトはん」

「おう。トラップカードオープン」

「聞くが、それって賭博師の特技なのか?某カードゲームのカードに見えるが」

「細かい事は気にしない方がいいぜ、恋敵(アキト)。俺のキャラは、未だに定まっておらんのでな」


ハクトとアキトのやり取りを最後まで聞かず、魔物に向かって飛び出すしの。ハクトのトラップカードが魔物の行動範囲を奪うのであります。そこに弓を構えるアキト。ええ、途中ではございましたが、避けては通れない道と言うのは、戦闘ですな。


「あれ?ミスした?」


勢いに乗ったしのの拳が空を斬る。意外と魔物の身のこなしがよいようですな。


「避けろしの」


言葉とともに放たれる矢。とっさにしのは飛び退き、左拳に力を溜める。

ゴリラ型の魔物が雄叫びをあげ、飛んで来た矢を相殺。近くにいたしのも、雄叫びを喰らってしばらく動けない模様。


「待ってろしの。今助ける」


奇跡師の力を使い、現在"白魔導士"になっているヒロが、状態変化無効のスキルをしのに使った。


「てか、僕はずっと回復役だな」

「メンバーの中で、回復要因はお前だけだからな。我慢しろ」

「んだな。さてと、最近の敵さんは、随分強くなって来たもんだな」

「それほど僕たちが強くなったって証拠なんだろ?何か策はある?」

「ん?まぁ、あるっちゃある。でも彼女頼みになるかな」

「俺たちは後方支援タイプだからな、男としてどうかと思うが」

「だから僕が白魔導士にならなければ、攻撃に出れただろうに」


「ただいま。おおきにな、ヒロくん」


男同士の作戦会議?になってたかは別にして、しのが仲間と合流いたしました。


「いいタイミングだ、しのさん。次は俺と同時に攻撃を仕掛ける」

「は?ハクちゃんが攻撃?まさかまた自爆系か?」

「さすがに同じネタは読者様も飽きる。攻撃はしのさんに任せるが、俺も前に出るだけだ」


何やらハクトには考えがあるようで。彼の作戦には実績がありますゆえ、疑う事はしないのですが。


「自爆じゃないなら、魔物と一緒に木端微塵か」

「勝手に殺すな。しかも冷静につぶやくなアキト(おのれ)は」

「ま、とりあえずアキトは後方から攻撃して。出来れば動きを止めれる(やつ)で」

「わかった」

「僕もついて行くよ?いい?」

「おう。お前なら俺のやりたい事を理解出来ると思うぜ」


「話しは済んだかいな?うちはいつでもええで」


気合い十分で魔物から目を離していない彼女。


「んじゃ、そろそろ行きますか」


ハクトの声を合図に、魔物に向かう3人。アキトは両手に水色の光りを纏い、矢を放つ。魔物が雄叫びの構えをとった所で矢が消える。驚きと、戸惑いの表情になる魔物の目の前に矢が現れ、左腕に刺さる。


「もろたで」


動きが止まった魔物の目の前で左拳を突き出すしの。しかし魔物も右拳で対抗し、拳同士がぶつかり合ったのでございます。


「くっ。重い……けど」


彼女の左腕に赤い光を纏わせ、力を上げる。押され気味の拳を、押し返すように振り抜き、その勢いで身体を回転させ、右足で蹴りを入れる。怯んだ魔物を確認したハクトが、彼女に向かって何かを投げる。


「しのさん、俺からの切り札(カード)だ」

「ハクトはん。これは?」

「俺とヒロの青春期の技名だ。是非ともこれでキメてくれ」


彼女がカードを確認し、合気道の構えに入る。


「来るぞヒロ。しかと見ておけ」

「も、もしやこの技は」


「やったるでー!ろ~りんぐ場外ぃぃぃってなんか意味不明やん」


彼女が両手ですくう動作をした瞬間、魔物が空高く舞い上がり、謎のぶっ飛びを見せた。


「「おお~。見事に魔物が場外へ」」


文字通り。空中で回転しながら遠くへと、この場合、場外を意味するようですが。とにかく、絶賛ぶっ飛び中の魔物。


「な、なんやよう理解出来ひんけど、後は頼むで。アキトくん」

「了解。空なら逃げる術は限りなく少ない」


再び両手に水色の光を纏い、空へ放つ矢。その矢は途中で拡散し、魔物を見事に捕え、撃破したのであります。


「こんなもんでしょ。おつかれ」

「まさか生であの技が見れるなんて、しのには感謝だな」

「技名はようわからんけど、とりあえず役には立ったみたいやな」

「ではケバスに戻るか」



いやはやなんとも、緊張感があるのだかないのだか。一行らしいと言えばそうなのですが。

しかし、確実に成長はしているようですな。


「ねぇ、しの。次は"サイクロン内股"をやってみせてよ」

「お。またなつい物を出して来たな」


「いや、もう2人の謎の技には付き合わんから」




◆◇◆◇◆◇◆




Battle(ばー) Bet() Quest(きゅう) 4.6ミシシッピ_寝起きと言えばアレ ~




突然ですが、ここはとある宿屋でございます。

まだ太陽が登るか否かの早朝に、ハイテンションな男と、ローテンションな男が2人。

一体、男性陣はなにゆえ集まったのかと申しますと。


「これから寝起きドッキリを行う」

「あ~。今日は本当に死ぬかもしれないな」

「実は俺は楽しみだ」

「え?そうなんだ?てかアキトも、さっきまでローテンションだったじゃん」

「寝起きだからな。さ、早く始めよう」

「さすが我がライバルだな。では最初のターゲットはこちら」


どこからともなく、フリップを差出すハクト。


「女性陣の可愛い妹。さわさんだ」

「私がどうかしました?」


男性陣の背後から、眠そうな声で話しかける女性。

慌てて振り返る男性陣。


「さ、さわちゃん。は、早いね」

「ぁ。ぉはようヒロさん。みなさんも。私の部屋の前でどぅしたの?」


なんと。ドッキリを開始する手前、ターゲットがまさかの登場となり、混乱する男性陣。

ハクトは急いでフリップをへし折り、投げる。


「こ、これはだな。決して寝顔を拝ませてもらおうだなんて、じゃない、だから」

「今から女性陣に寝起きドッキリを仕掛けようとしてな。さわくんには仕掛人になってもらおうと思い、誘いに来たんだ」

「ゎたし……ですか?」

「やるな、ライバルよ。そう言う事だ。旅の思い出に、いっちょどうよ?」


若干寝起きの彼女は、思考が曖昧であったがゆえ、彼女自身がターゲットにされていたとは気づいていないご様子。アキトのアドリブでその場を誤摩化しまして、彼女の返答を待つのです。

しかし、彼女の寝ぼけ顔と無防備な姿。なんとも貴重なお姿であります。最初のドッキリは失敗でしたが、これはこれでありだと思う男性陣。しかし、いつまでもここで時間を無駄にはしたくないのも事実でございます。いや、彼らには決して無駄ではないのでしょうけれど。


「ぃぃですょ。面白そぅ」


かくして。

アクシデントを無事に乗り越え、ここからが本番。寝起きドッキリの幕が上がるのでありました。


「さ、改めて最初のターゲットはこちら」


静かにフリップを差出すハクト。


「小麦肌の清純派インテリ格闘クイーン。しのさんだ」


仕掛人達のサイレント喝采がドアの前で起る。


「しのさんてほんと綺麗な肌だよね?」

「彼女は昔から変わらず若い」

「確かにね、でも彼女は最初にして最大の難関なんだよ?」

「お前の言いたい事はわかる。護身術絡みだろ?安心しろ、別に寝込みを襲う企画ではないんでな」


ここで、このドッキリの流れをご説明いたしましょう。仕掛人はターゲットが起きないよう、なるべく音を立てずに部屋の中へ入り、少しばかり部屋の様子を確認した後、ベットへと向かいます。そこでターゲットの寝顔を観察し、起こすという流れでございます。


おっと、説明をしている内に、仕掛人達は部屋に入ったようですな。


「それでは行って参ります」


小声とともに敬礼をし、ターゲットの部屋の奥に歩き出すさわ。男性陣はその場で待機し、さわを見失わない程度に付いて行き、様子を伺うようですな。では、ここからは彼女にお任せするとしますかな。


・・・

・・


さすがしのさんね。部屋は全然綺麗だし、無駄な物は置いてない。あら?壁際の小さいテーブルの上にあるのって……お酒?これは缶ビールね。しのさんてお酒好きなのかな?今度一緒に誘ってみよっと。あ、その前に、このお宝を男どもに見せなきゃね。ほ~れ、しのさんが飲んだやつだぞ~ってね。ふふふ。こんな物で喜ぶなんて、男って単純。さて、そろそろ寝顔を見て来よっと。


慎重に足音を殺して、ベットに向かう私。

なんだか泥棒みたいね。でも、やるからには成功させるもんね。

寝息が聞こえる距離まで辿り着いた私。彼女はまだ気づいていないようね。

着衣は私と違ってしっかりしているけど、布団はかけていないんだ。まぁ暑いしね。


「さわちゃん。そろそろ頼む」

「ヒロさん達もおいでよ。今なら彼女の事、見放題だよ?」


小声のやり取りで男性陣も合流し、小麦色の女性を眺める。


「予想以上に可愛いな」

「あ、アキト。お前大丈夫か?キャラ崩壊してるんだけど」

「大丈夫だ。問題ない。ヒロも同意見だろ?」

「う、うん。懐かしい寝顔だ。今も昔も変わらない」

「やっぱお前さん、しのさんを」

「そうなの?ヒロさん」

「違う。そうじゃないんだって、公園のベンチで彼女がうたた寝した事があって」


それはどんな風に?と私が質問すると、ハクトさんが彼女を起こすのも兼ねて、私がヒロさん役になって、当時の場面を再現しようとしたの。

私はゆっくりと、しのさんの隣りに寝そべって、彼女の頭をそっと、私の右肩にくっつける。彼女は少し反応したけれど、ギリギリセーフだった。小顔で綺麗な肌。なんだか私より若く見えるもんね。羨ましい。


「ねぇ?少しなら触ってもいい?」


思わず本音を耳元で囁いた私。それが引き金となって、彼女の目蓋が開いたの。


「な、なんや……の?耳元で吐息吹きかけんといてーな……って。キャ!!。さ、さわさん!?」


「あ、おはようございます。しのさん」


あまりにも状況が把握出来ず、ただ驚き、私と彼女との距離が近い事に気づいたのか、ものすごい勢いで後ずさりしながら、声を震わせて口を開くの。


「あ、あのな、さわさん。うちは……私……そう言った趣味は……な、ないんよ。だ、から……見んかった事にするから……」


「何を言ってるんです?誤解ですって、ゆっくり周りを見て下さい」

「へ?」


彼女がベットの上からゆっくり部屋を眺め出し、更に怯えた表情になり、着衣を確認しながら、いつものツッコミのトーンで叫んだの。


「なんやのあんたら。もしかしてアレなんか?」

「さっすが、優等生さんは理解が早くて済むな」


ハクトがドッキリ大成功の看板を差出す。

それを1秒も見ないまま粉砕した彼女…………さて、私は一足先に部屋から出ようっと。


・・・

・・


最初のドッキリから数分。

次なるターゲットの部屋の前に、辿り着いた仕掛人達であります。


「さ。次は誰に仕掛けるん?楽しみやな」

「やっぱ優等生も、他人の不幸を喜ぶのは、人なんだと実感出来る証拠だな」

「なんや?元はハクトはんが悪いんやないん?」

「もめるな。時間が惜しい」

「なんやえらいやる気になっとるね、アキトくん。どないしたん?」

「どうやらドッキリが好きらしいです。人は見かけによりませんね」

「んじゃ、次のターゲットを発表するぞ。こちら」


またしても静かにフリップを差出すハクト。


「強気で元気、走るの大好き、ツンデレ盗賊。みあ」


「なぁ、お願いあんねん。ここはヒロくんに行ってもらお?」

「僕はダメだって。彼女なら、アキトかハクちゃんが無難でしょ?」

「でもそれならドッキリの効力が少ないんじゃないかな?」

「んだな。俺もお前さんがいいと思う」

「右に同じ。覚悟を決めて来い、ヒロ」

「あのな……死にかけたら助けてくれよ?」


渋々仕掛人を承諾し、ターゲットの部屋に入って行くヒロ。なぜか瞳を光らせている彼女(しの)の姿が気になりますが、彼女は一体、何を期待しておられるのでしょう?とりあえず、ここからは彼にお任せしましょうか。


・・・

・・


なんだ。しのと同じで、部屋の中は綺麗にしてるんだ。けど、服は結構乱雑に脱ぎ捨ててるんだな。テーブルにあるのは……ノート?どうしよう?この場合、中を見ろ的な流れだよな?

僕は後方組に視線を送ると、早く見ろとジェスチャーをしてるし。仕方ない、開くか……。


彼女がノートに書いてあった事、それは"これまでの旅の記録"。いわゆるセーブみたいなものって言えば、ゲームらしいのかな。要するに日記だ。そこには戦闘で学んだ経験やスキル。戦術などが書いてあった。きっと同じ事は他の仲間もやってる。しのは暗記タイプだから、そんな事はいちいちしないけれど。まあ、彼女は彼女なりに努力してるのだと感じたんだ。

あ。とりあえずみんなには、遠くから彼女の日記だと伝えて、内容は伏せとこう。


「ねえ、しのさん。さっきからすごくワクワクしてません?」

「せやな。だって、ヒロくんがみあちゃんの寝顔を見て、起こしてあげるんやで?こんな事、一生にこの日だけやと思わん?それに……追い込まれるみあちゃんの姿……ふふふ」

「完全に妄想の世界へ旅立ったな。ま、あいつなら間違いは起こさないだろう」

「んだな。だがな……あいつも色々と持ってるからな」


ったく。好き勝手言ってくれる。聞こえてないけど。

じゃあ、覚悟を決めて、寝顔を見せてもらうとしますか。


ゆっくりとベットに近づく度に、彼女の姿が鮮明に見えて来る。彼女は僕に背を向けているので寝顔は見えないけれど、僕は途中で足を止め、後方組(あいつら)に振り向き顔を左右に振った。

なぜか?それは彼女の服装が、あまりにも僕には……。例えるならビキニを着て寝ているよう。実際に説明すれば、白のへそ出しタンクトップシャツに、白の下着のみ。せめて布団でも被ってくれてたら安心したんだけど。


「まぁ。みあちゃん大胆。ヒロくん、そのまま一気に行くんや」


しのさんや。これはさっきの仕返しか何かですか?行ってもいいけど彼氏組(あいつら)がって、何でお前達まで乗り気なんだよ?はぁ。とにかく、さっさと寝顔見て起こせばいいだけだ。行くか。


ベットに辿り着き、彼女との距離もほとんどない。相変わらず背を向けているのだけど、隠せていない肌が多過ぎなんだよ。そういや、みあと海やプールのような場所なんて、行った事ないもんな。こんだけ無防備な姿なんて初めてだよ。あまり見ないようにしてるけど、どうしても肌色の部分ばかり視線が流れる。

とにかく寝顔を見ようと言い聞かせ、彼女の顔の方に移動した僕。幸せそうに眠ってやがるな。なんか起こすのがもったいないくらいだ。


寝顔を確認した途端、仰向け体制になった彼女。これでみんなにも寝顔が見えるだろ。てか、シャツ短か過ぎだって。ご自慢の膨らみも揺れ過ぎ……って、下乳出とるやんけ。まさか…………着けてない?

一気に体温が上昇し、彼女を直視出来なくなってしまった。


「ヒロ、そろそろ起こしてくれ」

「ちょっと待って。その前に、しのかさわさんをこっちに来させて」

「お~。ヒロさんが照れくさそうに、みあさんを起こそうとしてますよ」

「よー見とき。歴史的瞬間や」

「悪いが女性陣はダメだ」


まったく使えない。なら起こして直ぐに立ち去ろう。


僕は、彼女の耳元に顔を近づけた時、彼女が予想外(おやくそく)の行動に出た。

なんと、寝ぼけざまにタンクトップシャツに手をやり、たくし上げようとしている。いや、もう上げ出したのだ。


「ば、バカ、それだけはやめろ」


僕は無意識に、大きな声とともにベットに駆け上がり、左手でシャツの握っている手を剥がし、その反動で倒れそうになった自分の身体を、彼女にまたがるように両膝をベットに納めてから、右手で彼女のシャツを下ろした。


揺れるベット。なぜか歓喜の悲鳴を上げる女性陣。そして呆れた顔の彼氏達。

そして、彼女はゆっくり目を開ける。


「や、やぁ……おはよう……みあ」

「…………ぇ?……ひ、ひ、ひ……ろ?」

「ち、違うんだ。僕はただ……お前のスイートブールをだな」


僕の右手に彼女の視線が流れる。それに気づいて、慌てて手をタンクトップシャツから離す。

彼女は当然、いつものように怒鳴るのだろうと思ったのだけど、少しだけ僕から後ずさりして、右手で左の胸?いや、心臓を押さえる動作をし、少し息を整え、力のない小さな声で話し出したんだ。


「あ、あんたには昔から感謝する事は沢山あるゎ……でも私は……ね、あの、彼氏達(あいつら)の事もあるじゃない?」


僕はそんな事より誤解を解きたかったんだけど、真剣な眼差しを送られて話されては、うなずくことしか出来ないじゃないか。


「だから最近は、アイツらともそう言う事はしないようにしてるの。すぐ許すと軽い女っぽいでしょ?……でも。あんたが、ヒロが……どうしても我慢出来ないって言うのなら……魅せる事くらいは……いい……よ」


そう言って、自らタンクトップシャツをたくし上げようとした。


「待てまてまってくれ。よくない。てかそんな事されたら放送事故だ。実際には放送しないけども」

「じゃあ、どう言うつもりで私を……私、こんな事されるの初めてなの。わかる?本音を言うと怖いんだから」

「み……すまん。普通はそうだよな。とりあえず殴れ。話しはそれからにしよう」


「はいはい、その辺でいいでしょ。女性陣が興奮しすぎて手に負えなくてな」

「ハクト?あれ?アキトも?しのにさわっちまで……」

「すまない、みあ。ヒロを責めないでやってくれないか?」


そう言って、ドッキリ大成功の看板を差出すアキト。


「これは一体どう言う事なのよ?」

「みあちゃん。やっぱヒロくんなら許せるんやね」

「ち、ちがうわよ。あんた私の話聞いてた?実際襲われてみなさいよ?私はしのみたいに、護身術なんて持ってないんだから」


「だから、襲ってないんだよ。てか下着さっさと着けてくれ」


・・・

・・


さてさて、さわ、しの、みあと、女性陣をターゲットにして来たドッキリ企画もいよいよ大詰め。遂にあの方がターゲットになるようですな。


「諸君。この扉で最後でございますよ。はい、最後のターゲットはこちら」


勢いよくフリップを差出すハクト。


「わがままボディの極み、ミステリアスエロスの遊び人。もっちゃん先輩」


「最後はかなり予測不能だな。でもやり遂げてこそのドッキリだ」

「なら最後の仕掛人はお前な、アキト。僕はもうしない」

「俺?別に構わないぜ」

「ちょっと待って。その役目、私がやるわ」


颯爽と手を挙げ、仕掛人をかって出るみあ。どうやら彼女は、どうしても先輩にドッキリを仕掛けたいようで。その理由がこちら。


「日頃の恨みをここで発散するのよ」

「恨みって。大げさやけど、確かに先輩には色々と振り回されとるしな」

「んじゃ、やってくれるか?みあ」

「ええ。任せといてよ」


マスターキーを差し込み、部屋に入って行く彼女。ここからは……もう説明は無用ですな。


・・・

・・


さーて、パイセンの部屋はどうなってるのかしら?って、何もないわね。それにしては、いい匂いが部屋に漂ってる。でも、アロマ的な物もないのよね。どう言う事?は。これはもしや……パイセンの体臭?大人のフェロモンってヤツなの?ったく。寝ててもパイセンの色気は健在ってわけ?ほんと、どれだけエロいのよ?って。そんな事はどうでもいいのよ。とにかく部屋に何もないのなら、ベットに向かって、豪快に起こして、パイセンが普段見せない姿を拝んであげましょ。


私は足早に、でも音は立てずに、パイセンの寝床に向かったわ。

パイセンの姿を目視した所で足を止めて、起きていない事を確認し、彼女の顔が見える所まで、私は歩いて行ったわけ。その間に服装をチェック。以外にも私みたいに下着の格好では寝てなくて、しっかり上下ともパジャマ姿だったわ。私の脳内では全裸だと思ってたのだけどね。ま、そうだったら、男性陣は速攻で退場もんよ。


ふふふ。さて、どうやって起こそうか?やっぱ最後だからバズーカ?持ってないけども。あー楽しい。あと少しで、パイセンが誰にも見せない姿を……って想像するだけで私……笑いが出そう。あ。でもその前に寝顔を拝見しなきゃよね?


私は口元を押さえながら、パイセンの顔を静かに覗き込んだ時、頬に一粒の雫が流れたわ。

その姿を魅せられた私は、さっきまでのテンションがウソのようになってしまって、彼女をじっと見つめてしまってたの。

そして、かすれた声で、聞き覚えのない言葉を耳にした。


「クリ…エ」


「どうしたみあ?もう起こしていいんだぞ?」


遠くからハクトの声が聞こえた時、私の硬直も解ける。

無意識に彼の方に顔を向け、再び彼女に視線を戻す。おそらく彼女は夢を見ていて、寝言を言っていたようだけれど。あまりいい夢ではなさそうね……さっきの言葉の意味も気になるし………みんなには悪いけど。



私は、彼女の頬の雫をそっと拭い、そのままベットを後にする。

そう。ドッキリは見事に失敗ね。

でも、普段見せない姿を見る事には成功したわ。……泣き顔だったけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ