第七話
スキル『学問』は厄介者だ。パッシヴじゃなく、アクティブなのだから。知らず知らずのうちにスキルが発動して、手加減がしにくくて仕方がない。身体に影響を及ぼす者を軽々と発動させずにいてくれはしないだろうか?
おかげで、二球目はそれはもうすごい勢いで天井へ突き抜けるところだった。実際には、投げる直前ギリギリでセーブをかけて、ゆっくりと外野にパスをするだけで済んだ。
「や、危なかったな。さっきのナイスだぜ。」
「まあな、今日のナフガニンは、どこか変だよな。」
「俺にはわかるぜ、あいつ、自分の好きな人のこと考えてる。」
「は?」
ローゼンを見ている涼のまなざしは、にこにことしていた。
結局、男子の試合は七組の負け。まあ、当然のことではあった。
女子は確か勝っていた気がする。高橋、じゃなかった高峰という新任の先生の胸が、こう、形容し難いふつくしさがあったから、ではない。
世界異能ランキング査定管理協会、通称WARCC
こいつらが学校にまで訪ねてきたらしく、俺は校長室に来るようにと呼び出しを食らった。高峰の高い峰を目で追っているときに。
別段授業に対してやりがいをそこまで感じていない俺からすれば構わない。一つ惜しむとすれば、やっぱり高峰の胸は高峰だったことをもう少し確認したかった。
巨乳好きではないと思う。思いたい。
この学校の不思議な部分は、携帯の使用禁止がない、ということが挙げられる。勿の論で授業中に使うのは禁止されているが、授業の合間に使えるので授業中に使う必要がない。俺の知る限りではスマホ関連での説教を食らっている人はいない。
しかし一方で、結果主義なところがある。日頃の授業態度よりも、宿題の提出率よりも成績の割合として最も高いのがテストの結果であり、約90%。
ああ、なぜこんな話になったかって、わからないよな。
「はい。」
要するに、俺としては、授業の単位とかは気にしないでいいから、試合の日程はいつでも可能だということだ。
「わかりました。では、こちらが試合の詳細となっております。
まず、対戦相手がルージュ・ナフガニンではなく、門松匠になりました。」
「理由は?」
WARCCはこんな雑な連絡などしないはずだ。できないはずだ。俺が相手だし。
となると、この変更には何か裏がある。
誰でもわかることだけどな。
ルールは簡単。武器使用可能。一対一の勝負。相手を殺害することは禁止。場外は特になし。それがこの異能トーナメント。
だが、何かしらの理由によって対戦相手が変わるのはほとんどない。
「理由は、門松氏の強い要望によるためです。」
へえ、強い要望。
「また、ルージュ氏の承認も得ております。」
まあ、別に関係はないさ。
「続けます。会場に変更はございません。しかし日程は二日早まります。」
「了解した。」
まあ、そんなに差異はないな。
「ありがとうございました。」
あいよ。
ところで、俺が呼び出された後にはすでに体育は終わっていたが、呼び出しをいいことにその後の授業をサボりまくったのは秘密だ。
昼が過ぎ、放課後になって。
ヤハウェとともに近くの森に向かう。
もう少ししたら試合だからな、ちょっと腕慣らしをしたい。
「先日行ったではありませんか。」
あれは、あんまり強くなかったからな。
もっと強い奴がいい。
「でしたら、もう少し先に昨日よりは強い物の怪がおります。」
じゃあそれにしよう。