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磨いた剣の限界突破  作者: くがうよじんな
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第一話

 開けた土地。

 転生前の記憶が、経験が、能力が、齢18の身体に呼び覚まされる。

 現代社会にて、まず前世の記憶を思い出したなんて。それで元の能力も取り戻しただなんて。信じてもらえるのはわかってる。


 「能力が2つになったなんて、いえん…」

 

 二十一世紀後半。何処かの偉大らしい天才とやらが、江戸時代以前より存在していた魑魅魍魎や悪鬼羅刹、妖怪や精霊、そんな類の存在を見えるようにしてしまった。

 時に、地球上全体で、同時に思想や文明の発達が見られる事がある。物質の状態が変化するように、あっという間にその変化は起こった。

 その天才が、存在を見えるようにできると、発表したその時、世界各国で異能を開眼した者が続出した。

 もちろん全体的に圧倒的マイノリティではあるものの、世界各国同時に、ということで、国際レベルでの対応が必要となり、その当時のパニックは計り知れなかった。

 


 異能にはそれぞれランクと種類がつけられていった。

 種類は大きく分けて超能力、法術、スキル。

 ランクは下からC、B、A、S。

 

 日本国では天皇制が復活していたが、民衆の権利が脅かされる事が無いよう政治のシステムが変わっている。

 

 

 異能を持つ者たちが、その異能を使用したくなるのも、また民衆が見たくなるのも当然。

 その結果、ランキング制度が世界基準で発生。それぞれの種類とランク別で作成、随時更新されている。

 


 隊長は、今現在は18の少年美宮(みみや) 銀杏(いちょう)に、転生していた。友人も多々いるし、異能持ちの高校3年生。来年には大学だっていくつもりだ。

 なぜ、何でもない休日の昼下がりに、こんな急に記憶やらが戻ってきたのか。


 「なんか、壊滅してんじゃんうちの国…」


 十年かけて広げた領土。全て無くなったことくらい、歴史を見ればわかる。

 「…」

 そして、アーシャ、ローゼン、レヴ。あと皇帝。皆が何処にいったのかも知りたい。

 「…なんとかして、探してみるか。」

 別に探して何かする訳でもない。ただ、見つかればいいな、そう思い、目をつぶる。




 翌日。月曜日。学校にて。

 朝のSHRも終わり、いつもの通り友人が絡んでくる。

 「なぁ、あの新しいゲームめっさおもろいぜ!」

 「受験生のくせして新ゲームか。」

 「え、お前もだろ?」

 「大はなんでそんなにゲームやってるのに、成績いいんだよ…」

 「お前が言う事でもないと思うけどな。」

 大は異能は持ってない。でも、異能と呼んでも良いくらいの頭脳がある。

 俺と大は中学からの付き合いで、毎回テストの度に、格の違いを見せつけられる。顔も良いし運動もできはするが、あまりリーダー型ではない。

 「おい、何か食いもんないか?」

 涼はすらっとした長身。モテる。羨ましい。

 いつも誰かから何かを貰ってる。

 「あ、おにぎりあるよ。ほら。」

 「ありがとう。」

 


 いつもの通り授業は終わる。いつも通りに帰ろうとしたら、


 「あ、銀杏くんはちょっと手伝って。」

 

と、先生に言われて引き留められる。学級委員とかにやらせれば良いモノを、最前席だからと手伝いを強要しないで欲しい。

 「んじゃ、がんばれよ〜。」

 「おう。」

 大も涼も、手伝ってくれたっていいじゃないか。


 体育館のモップが壊れているので、ガムテープと木工ボンドで直して欲しい、とのこと。普通室内スポーツの部活にやらせない?

 黙々と直していく。なかなか難しく、それにボンドが底を尽きてしまった。仕方がないので、わざわざ職員室まで取りにいき、また戻って黙々と作業を続ける。

 下校時刻ギリギリになって、作業が終了する。きちんと使える強度まで補強したので、しばらくは大丈夫であろう。

 「ふー、帰るか。」

 

 交差点。目の前の女子たちはおそらく部活終わりなのだろう、練習着のままだ。

 「あの新しいコーチ、美人だよね〜。」

 「なんか、親しみやすい雰囲気あるよね。」

 「ですね。」

 へえ。

 「名前、なんて言ったっけ。」

 「高峰です。」

 「ほんとあの胸、高峰。」

 それは是が非でも見てみたい。

 「…あれ、大丈夫かな…。」

 会話の雰囲気がシリアスになるもの。交差点では、車が挙げられる。

 暴走車ではなく、居眠り運転。

 「え、こっち、来た…!」

 時間の流れが遅くなる。瞬きも許されないそれは、天罰か、はたまた悪魔のいたずらか。

 どちらであろうと、俺が止める。

 

 「…修理代、俺負担しなくていいよな?」


 独りごちて、車の中の運転手を、ドアを開けて引きずり出した。

 「おいあんた、死ぬ所だった。」

 「す、すまんかった…?」

 「なぜ車が、地面に突っ込んで壊れてるかは後で、だ。まずはこの人たちに謝れ。」

 「あ、す、すみませんでし、た。」

 「よし。」

 面倒くさいから、帰るか。


 死傷者0名のその事故は、学校で瞬く間に広がった。




 翌日、朝、教室。

 学校に着くと、まず先生に止められて、次に職員室に連行されて、んで、警察(しりあい)と昨日の女子たちがいた。

 曰く、俺が事故現場から帰ってしまったために、事情聴取も出来なかった。夜遅く、女子も家に帰りたいであろうから、翌日になったと。

 「とりあえず、自己紹介していい?俺、昨日以外この人らと面識ないんで。」

 「あ、いいよ。」

 知り合いなだけ気楽でいい。

 「俺は3ー1の美宮 銀杏。よろしく。」

 「に、2ー2の鈴原 夏帆です。」

 「霧が崎 結です。」

 「あ、相澤 明美です。」

 「「「昨日はありがとうございました!」」」

 「うんうん。お礼を言う事はいい事だ。私は警視庁からきた、毛利 はじめといいます。」

 彼女は、高校生になる前からの知己であり、俺に能力がある事も知っている。だからこそ、彼女がわざわざ来たのだろう。


 「んー、まず、被害者加害者共に全員無傷であるため、損害賠償は少なくなります。それでも、やはり命の危険に晒されているので、かなりの金額はもらえますが、どうします?」

 「あ、えーと…」

 女子たちは戸惑っている。

 「ど、どれくらいになるんですか?」

 少し考える素振りを見せて。

 「今回は、相手側、つまり加害者側の過失でしかないため、大体…一人20万くらいが最低限度。でも、今回は刑事事件じゃなくて、事故としても処理できるレアケースなんだ。だから、面倒くさいとか思ってる誰かさんは、一人で家に帰ったみたいだけどね。」

 嫌味ったらしく言ってくれる。別に、お金に困ってないことくらい知っているだろうが。

 


 結局、この事故は負傷者ゼロの奇跡の事故として(?)処理された。

 


 教室、の前に廊下。事情聴取後。

 彼女たちが、いろんな事を聞いてきた。どうやって止めたのか、電話番号やらラインやら交換したい、今度遊びに行くから一緒に来ないか、etc。流れとは逆らえないもので、押しに押されて連絡先を交換してしまった。

 女子に囲まれる事は別段悪くない。が、美少女3人は、少し息苦しい気分にもなった。涼なら慣れてるんだろうな…

 教室に入ると、大が、血相変えて詰め寄ってきた。

 「おい、転校生来るってよ。」

 「それがどうしたよ…」

 涼がだるそうに返事をする。

 「なんでも、めっさ可愛いんだと。これは委員長の高木が証言してくれた。信憑性は…高い!」

 『俺、ちょっとトイレ。』

 わー、クラス男子諸君、ワックス持ってトイレ行くな。あ、そこ、櫛はセコい。

 

 教室。SHR。

 「男子、聞いてんだろ?美人転校生、しかもハーフだ。」

 「高木。毎度毎度、お前女子の情報よく掴めるなぁ。」

 高木は女子の情報を死ぬ程持ってる。公共の福祉に反しなければいいんだがな。

 ガラッ。先生が入ってくるその足音が3度とならない内に、席に着く。これはいつもの事。

 「はい、えー、ま、知ってるよね。入ってどうぞ!」

 入って来たのは綺麗な銀髪を短く揃え、どこか大人びた雰囲気を纏いつつもあどけなさが残るその美貌。

 

 「ローゼン・ナフガニンです。3年生という忙しい期間、突然の来訪者ですが、よろしくお願いします。」

 

 クラスの中で時が停まった。絶対停まった。時すらローゼンの美貌を眺めんと、()()()()。その慎みのある挨拶と歌のように聞こえる声は、何物とも比べてはいけない。クラス中の注目を集めている事が恥ずかしいのか、少し頬が赤くなっていて…

 「…」

 息すらつかない。永遠に思えたその一瞬。すぐに静寂は破られる。

 歓声、雄叫び、悲鳴、もはや超音波とも言えるような、様々な音でクラスが埋まる。爆弾でも仕掛けられていたのか。

 「はい、質問!どこ出身ですか?」

 「オーストリアです。」

 「なんで日本に?」

 「母の仕事で。」

 「彼氏いますか?」

 おい。

 「いません。」←頬が赤くなる。

 素直。

 あと男子。雄叫びがうるせぇ。

 


 SHRは終わってない。先生が注意喚起した後、一通り連絡をして、その後だった。

 ―――事件は、起きた。

  「席、何処にする?」

 

 男子も女子も、ローゼンを取り合う。もちろん女子だって、ヨーロッパから来た美人さんと仲良くしたいし、男子だって本能が、いや煩悩が働きまくってる。先生がクジにしたら?と提案しなければ暴力沙汰にもなりそうな雰囲気だった。

 俺の席の隣が、ちょうど空白になっていて、必然的にそこがローゼンの席となった。



 放課後。講座は取っていないので帰ろうとすると。

 「美宮さん、ちょっといいですか?」

 「どうした?」

 「学校の案内、頼まれてはくれませんか?できれば、で良いので。」

 「いいよ。ちょっと待っててね。」

 二つ返事で了解し、大涼ペアにその旨を伝えて今日は遊べない事を報告。

 「さて、行こうか。」

 「はい!」


 図書館。人は多く、意外とガヤガヤしている。この学校は中高一貫校であり、中学生より前から優れた才能を発揮する人材は、この学校に入る。理由の一つとして図書館が挙げられる。

 「うちの図書館は、品揃えが良くて、なんでも揃ってると言っても過言じゃない。国外の書籍は難しいけど、国内なら全種類ある可能性がある。」

 「お、大っきいですね。」

 この学校にある図書館は、普通の高校が一つ程の大きさを誇る。どれ程のお金を掛けて作られたのか、装飾も綺麗な快適空間。

 

 

 保健室。そこまで広くはないが、もしもの時の為に教えておく。

 「おや、転校生さん?」

 「あ、はい。ローゼン・ナフガニンと言います。」

 「そうかそうか、よろしくね。」

 養護教諭の田中さん。少し男勝りな、新任の先生。何度かお世話になっているので知っているがお節介焼き。

 「美宮くん、君はまた怪我をしたのか?」

 「あ、いえ。案内をしてるんです、ローゼンの。」

 まったく、頭が上がらない。



 売店。人はそこそこ。

 「ここの売店は、カフェテリアみたいに使えるし、ご飯も安く美味しく多い。」

 「それは素敵です。」

 さっきから気付いていたんだが、ローゼンは話に相槌をうつのが上手だ。

 「ちょうどお腹も空いたし、何か食べていこうか。」

 

 

 

 


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