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磨いた剣の限界突破  作者: くがうよじんな
1/8

プロローグ

 摩耗した武器を捨て、進む。

 未だ兵たちの士気は衰えを見せず、その力と心を、魅せる。

 地球上で行われた戦争の、神話として語られる()()戦いは、誰もが知っているわけで。

 その中にいる異質な人間は、いや普通の人間は、

 「隊長、よばれてますよ!」

 「今行く。」

 一つの隊の隊長だった。



 「お、来たか。…この国も、もう支配できる。最後だと言うのに、あっけないもんだなぁ。」

 「いや、呆気ないと言う事もない。ただ、今までが長すぎただけだろ?」

 「虚しいな…」

 この軍は、地球上で唯一の国となった。

 それは、戦続きの日々が終幕、平穏の始まり。

 「俺を呼び出す必要が?」

 「…お前宛に、皇帝直々、帰って来るよう旨がきた。理由は国家機密、なんだとさ。」

 「便利だよねー、国家機密。嫌なことぜーんぶヒ、ミ、ツ!」

 皇帝もまた、この国を唯一無二にする程の賢王であり、武勇もまた天下に轟いてる。最初の国を滅ぼすとき、敵国の騎士団長との一騎討ちは有名であり、吟遊詩人が語り継ぐ。

 「お前さんには馬車を一台くれてやるから、何名か好きな奴、自分の隊からつれてきな。」

 「お土産よろしくねー!」

 「…行ってくる。」

 「「いってらっしゃい!」」

 笑顔で友を送り出す。

 何故呼ばれたのか、全員が勘付きながらも、全員が素知らぬ顔で、全員が気遣わずに。

 男は往く。




 隊から抜き出し連れて行くのは、

 「お腹空いた〜。」

 赤髪のアーシャと、

 「我慢、とは言わないけど、もう少し頑張りましょう。後15分程でご飯にしますから。」

 メイドで銀髪のローゼンと、

 「おいおい、騒がしいなぁ、もうちょっと静かにしてくれ、眠れねえじゃねえか。」

 茶髪のレヴ。女子。口調が悪い。

 それぞれ弓兵、近衛兵、魔法兵。

 「もう少しで街につく。我慢してくれ。レブ、お前は場所取りがひどいぞ。俺の座る分ぐらい残してくれ。」

 「女子には優しくって、教わんなかったのか隊長。それと、ブ違う、ヴ!舌唇を上の歯に当てろ!」

 道中、もちろん敵はいないので、焦る必要もなく、警戒する必要も無く。

 ゆっくりと一行は移動する。

 ご飯時。

 料理が出来るのはローゼンだが、何分食料がないので、狩りに行かなければいけない。

 当然、周りには森や川や湖がある。もちろん道の横に広がる草原にだって獲物はいる。

 しかし隊長はこんな事を言う。

 「鶏肉食いてぇ。」

 「いやいやいやいや、この民家も無い場所に、鶏がいるわけ無いでしょ?」

 「じゃ、鳥を撃ち落そう。と言う訳でアーシャ頼む。」

 「…」

 無言の、パワハラに対する圧力を送りながら、ひいふっと弓を引き、一撃で鳥(種類不明)を仕留め、落ちたところに駆けつける。

 そのまま羽など毟り取り、お湯で消毒。殺菌。内臓も取り出しメイドに渡す。

 「魚も食べたいな。」

 「弓じゃむりだよぉ!」

 「ま、魔法はこんな事に使わねぇ、ぞ?」

 「…」

 さてさて、困ったものだ。

 「…じゃあ潜って取ってくるから、引き上げて。」

 そう言って服を脱ぎ(パンツはある)体にロープを結び付け、湖に飛び込む。

 しかし隊長は肝心な事を忘れていた。ロープの長さである。

 人の胴回りは1メートルも行かないほど。だが、このロープ、十メートル程しかない。

 長く見えても、隊長が泳いでいくうちにロープが伸びていき、遂にはピンッと張って隊長を締め着けた。

 「ぐぇ!」

 本気と書いてマジと読む。マジヤバイ。

 「待って、ロープ!」

 見ると、ロープは木に括り付けたわけではなかったので、レヴが引っ張っている状態。アーシャは手に怪我するわけにはいかないし、ローゼンは料理中。だが、当然レヴ一人では力不足なので、ロープは手から離れて、湖のなかに。

 十メートル程の、水を吸ったロープは重い。

 「げ、隊長死んじまう?」

 「うん、隊長死んじまう!」

 自分でもわかるくらい混乱して、自分の事を隊長と言って返事をしてしまった。

 壷だったのか、レヴは笑い転げて助けてくれない。

 (あ、まずい、本気と書いてまずい)

 意識は暗くなっていく。



 なんとかレヴが魔法で引き上げ、蘇生。

 魚は食卓に並ばなかったが、料理は美味しかったので可。

 また一行は帝都を目指す。

 


 「東部戦線担当、第一旅団第一隊隊長とその隊員だ。通してくれ。」

 「だ、第一隊…ど、どうぞ!」

 最前線で戦ううち、番号が若い程古参で、その分強い。旅団の番号も同じ。

 よって、この隊長はこの国において暫定的最強。しかし、皇帝とその側近とは戦ったことがないので、わからないが。

 とにかく、その隊が来るとは何事かと、杞憂する門兵をおいて、彼らはズカズカ入っていく。


 長旅の汚れを落とし、着いた翌日に皇帝と会うのが慣例となっており、緊急時以外この慣例を破る事は許されない。

 城の近くに宿を取り、温泉で旅の疲れを癒やす。

 「ふ〜、落ち着くわ〜。」

 「おやおや、これはこれは、軍人様がなぜここに?」

 お爺さんが話しかけてくる。

 「何やら知らんが、皇帝陛下に呼ばれてね。今、ちょうど東部戦線から帰ってきたところさ。」

 「最前線から!まだずいぶんお若いのに、大したものだ。」

 「ま、この国の進行速度が異常なのでね。」

 「そうなのですか?」

 「…10年間で、この進行は過去に一度たりとてない。そう考えると、俺たちってすげぇ皇帝に仕えてるんだぜ。」

 「そうなのですか。」

 自慢にもならない自慢をして、のぼせる前に湯船から出る。幸いにも、ここローマは湯船に浸かる習慣があるので、体の疲れを取るには最適である。

 そんなこんなで、平穏は過ぎてゆく。


 

 「さて、貴殿を呼び出したのは、ここ最近見つかった現象について、だ。」

 「と、いいますと?」

 「最近、この城の中庭に、奇妙な魔法陣が出来てな。その魔法陣、調べてみると、悪魔を呼び出す物と酷似しているそうな。悪魔を倒さねば魔法陣は消えぬし、しかし中庭に放置しておくわけにも…」

 「わかりました、倒しましょう。」

 「…すまんな。その魔法陣は、下手すると七つの大罪の悪魔が出てくる可能性もある。気を付けておくれ。」

 「わかりました。」

 この人は本当に、皇帝なのだろうか。そう思わせる程に優しく、そして()()

 三十代前半だろう。自分も、大戦が始まった最初の戦からずっと居るが、それでも自分と4つも変わらない。

 いや意味わからん。なんでこんな若い癖して歴史にない大きさの国を作れるんだ。

 まじまじとその顔を見ていると、

 「…あ、あまりジロジロみるでないわ。照れくさい。」

 ほんっと意味わからん。


 装備も整え、全員で挑むことにした。

 「皇帝陛下も、さ、参戦なされるので?」

 カッチカチのアーシャが尋ねる。その質問、俺も思っていた。

 「なに、久しく強敵と戦っておらんのでな。足は引っ張らんよ。」

 なーにが足は引っ張らんよ、だ。下手すると俺より強いだろあんた。

 「…だから、その舐めつけるような目線はやめんか。歯がゆい。」

 「あ、すみません。」

 「…始まるぜ、っ!魔法陣が!」

 急に、周り始めた。

 「なんだ?これは報告に無かったぞ?」

 「なに?!ってことは!」

 「ああ、この魔法陣、召喚型だが、召喚されんのは俺達だ!」

 「え、ええ?」

 「つまり、」

 魔法陣は悪魔を召喚するのではなく、俺たちを何処かに召喚する。

 これは不味い、不味すぎる!

 「くそっ!図られた!この魔法陣、あんたを抹殺するための罠だったんだ!」

 「くぅ!出られん、この魔法陣、結界まで作っておる。」

 「ふぇぇええ!」

 「落ち着いてください。何処に転送されようと、皆一緒です。なんとかなりますよ。」

 「すまね、この魔法陣、ここから解読するのは不可能だ。」

 「「「…しょうがない。ちょっと散歩に行きますか。」」」

 「ふぇええぇぇぶっ!」

 「お、落ち着いてください、結界がありますから…」

 その後、俺たちの姿を見たものは居ない。


 コメントよろしくお願い申し上げます!

 今日の一言

〜なんで点Pって動くの?〜

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