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新たな世界で最高の人生記録!  作者: 勇敢なるスライム
第1章 幼少期
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九十七話 西門と東門

 《エルトリス視点》

 調査を始めて半日が経った。

 この街では今のところ六魔帝に関する情報は手に入っていない。

 今まで調査してきて奴らの目撃情報はほとんど無い。

 現在も魔王の目撃情報情報を聞く為に酒場に来ては見たけど……


「そうそう、それでワシがな!魔王をこう、この剣で……ちょちょいっと倒したんじゃよ!」

「ガハハハ! おっさん前は蹴りで倒したって言ってたぜ!」

 机には大柄な男衆が3人と老人が1人の計4人で酒を浴びる様に飲んでいた。


「あれ?そうじゃったっけ?きっと蹴りでも倒したんじゃな」

「キャハハ! 蹴りでも倒したのかよ! じいさん最高だぜ。悪りぃが諦めな姉ちゃん、このじいさんいつもこんな感じだからよ」

 1人の大柄な男性がお腹を抱えて涙目になりながら親切に教えてくれた。

 つまりは酔っ払いのホラ話に騙されたのだ。


「はぁー。分かった、親切にどうも」

「それでそれで、じいさん今度は何で魔王を倒したんだ?」

「頭突ーー」

「「「ぎゃっははははは!!!」」」


 唯一、魔王に関する情報が手に入ったから淡い期待でも、と酒場に来てみたらこれだ。

 酔っ払いの戯言を聞くために動き回っているんじゃ無いのに。


 私は渋々諦め、居酒屋を出た後に一度宿屋に戻って少し早い晩御飯を兼ねて自分の持っている情報を整理しにいく。


「おじさん、お昼ご飯」

 昨日、高値を吹っ掛けられた宿屋のテーブルにどっしりと勢いよく腰掛けた。

 座って待っているとおじさんが肉と野菜がたっぷり入ったシチューと焼きたてのパンを持ってきてくれた。


「うそぉ、高い金だけ取ってどうせ不味い飯が出てくると思ってたのに凄く美味しそう」

「失礼だなお嬢ちゃん、金は取れるだけ取るけどサービスはしっかりするって決めてんだよ、無駄口叩いてねぇで温かい内に食べな」

「いただきます。美味しい……私、感想とか言うの下手だから普通の事しか言えないけどこれ美味しいよ」

「ったりめーだろ、俺が作ったんだからな。昔はでかいレストランで働いてたんだけどよ、実はーーって聞けよ!」

 店主の話を軽く聞き流しながらスプーンで勢い良くシチューを平らげてお皿を差し出す。

「おじさんおかわり! ん!」

「おかわりは追加で金を……いや、金はもういいや。腹一杯食わしてやるよ」

 お金を払おうとしたら勝手におかわりを持ってきてくれた。

 どうしてか理由は分からなかったけど、まぁ食べれるなら何でもいいやいいや。


「ホントに美味そうに食いやがるな。また食いたくなったら言いな」


 それだけ言うと店主は厨房にトレイを置いてからまたカウンターに戻っていった。

 私も食べ進めながら持っている情報を整理した。


 六魔帝で現在行動しているのは三人、特徴を聞いた限りだけど闇魔帝、風魔帝、炎魔帝の三人であっているはずだ。

 闇魔帝はエーデンス王国と無法都市ミルウェーで私達が目撃したのが最後でそれ以外の一切の情報が無かった。


 風魔帝はかなり前に一度だけ目撃情報があった、盗賊の本拠地を単独で制圧した事があるらしい。

 その時の一人だけ生き残りがいて酒場で話しているのを聞いた。

 その盗賊の話している時の剣幕と聞いた特徴からたぶん本当の事だと思う。

 いきなり暴風と共に現れてはアジトを滅茶苦茶に吹き飛ばして、ボスの首を取って帰って行ったとか。


 炎魔帝は過去に三度、目撃情報があった。

 私の浅い情報網で三度だからきっと炎魔帝だけは各地で頻繁に活動しているのだと思う。

 一つ目はA級モンスターのジャイアントトロールの群れと戦う姿が冒険者集団によって目撃されている。


 二つ目は”S級“の覇灼竜エクセ•シャリアと一騎討ちする所が目撃された。

 発見したのは三大国家の一つ【ザンタルリア帝国】の精鋭騎士率いる覇灼竜エクセ•シャリア討伐隊。

 炎魔帝は長期戦の末に単独で勝利、その後エクセ•シャリアの首だけ置いて他は引きずって持ち帰ったらしい。

 首を置いて行った理由は今でも分かっていない。

 首を取ると言う事は完全に殺す事を意味し、首を持ち帰ると言う事は倒した事を証明する事になるからだ。


 三つ目は毒性のある動植物が大量に蔓延っている山を丸ごと焼き尽くしたんだとか。

 そのおかげで近隣の村の人はかなり助かったらしいが人助けの為にしたとは考えにくい。


 炎魔帝だけは話を聞いても目的は良くわからなかったけど私も噂でしか聞いた事が無い天災レベルの覇灼竜エクセ•シャリアを単騎で討伐したのを聞くと常識では考えられないぐらい強い筈だ。


 シャミルだけでも勝てるか分からないのにそれと並ぶ化け物が他に五人もいて、しかもその上には魔王もいる。

 魔王の幹部だとは分かっては居たけど厄介な奴らと敵対しちゃったな。


 この街ではもう一通り情報を集めたけど未だにまともな情報が無かった。

 ここにはもう情報を持っている人は居ないかも知れない。

 お皿を片付けて宿を出ようとする時、店主のおじさんに呼び止められる。


「そうだお嬢ちゃん。さっきあんた宛に凄い豪華な手紙を渡されたんだよ、あんたもしかして有名人なのか?」

「私にこんな手紙を送ってくる人なんて知らないけどな……」


 店主はカウンターの下を覗き込んで少し探してから赤い蝋で封をした手紙を差し出してきた。

 高級感と清潔感漂う手紙は剣客と宿屋の店主しか居ないこの場にはとても似合わない代物だった。


「ありがと。誰からだろう?」

 手紙を受け取ってから裏を確認する。


「この紋章は【サンセリティア神聖教国】の奴だ。私、この国とは殆ど関わりなんて無いんだけどな」

「よく紋章見ただけで分かったな。三大国家の一つに手紙を貰うってお嬢ちゃん、何者なんだ?」

「私はしがない剣客だよ。おじさん、商売するならあんまり詮索しない方がいいよー」

「わ、悪りぃ。ちょっと気になってな」


【サンセリティア神聖教国】は世界で最も人口の多い大宗教【サンセリティア教】を国教としている。

 この国では王や政治家等は居なくて聖女様が事実上の最高権力を持っている国だ。


「私、宗教とか苦手だからあんまり関わりたく無いんだよね」

「そんな露骨に嫌な顔せずにとりあえず中を見てみようぜ」


 そう言われて2人で手紙を覗き込む。

「何か文がお堅いなぁ、読み終わったら教えてくれよ」

 手紙を見てすぐにお手上げだと言わんばかりに手をヒラヒラと振ってカウンターに戻って行った。

 お国が出したりする手紙は余計な文とかが多くて読みにくいから子供の頃から読み慣れてないと難しい。


「えーっと ……書いてる内容は私宛の依頼だね、でも内容は話せないって怪しすぎるんだけど」

「これ俺が見ても大丈夫なやつだよな? やばい事情知ったからとかーー」

「大丈夫だって、この国では悪評は聞かないからそんな物騒な事はしない筈だよ! たぶん……」

「たぶんってそりゃねーよ、お嬢ちゃん」


 内容は普通の依頼みたいだけどどうしてこんな豪華な手紙で送ってきたんだろう。

「送り主は、えーっとーー聖女様!?」

「おいおい、一番すげぇ人から直々の手紙っていよいよ大事だぞ」


 聖女様が私にどんな依頼なんだろう。

 各地を転々と旅を開いてた時も子供の時も殆ど関わって居ないし、それにどうして私がこの街に来ているのを知っていたんだろう。


 私がラウドのいるクロット村方向に行く事はエーデンス王国の冒険者ギルドのメンバーと受付嬢のカンナ、カルガーの数人だけ。

 ギルドのメンバーが話した可能性もあるけどそれにしても手紙が来るのがちょっと早い。

 私がエーデンス王国を出た後に入れ違いになった場合、幾つもの街を経由してる。

 最短距離で来るなら別だけど街に付いてから私達を探して後から追ってくるには相当時間が掛かる。


 ここまで仕事が出来るのはアイツぐらいだけどアイツはもう……


「おじさん、この手紙持って来た人はどんな人だったか覚えてる?」

「ん? あぁ、よく覚えているぞ。こんな豪華な手紙なのに持って来た奴は男で言い方悪いけど盗賊みたいな奴だったからーー」

「それってどんな顔!? 名前は!? いつ来たの!?」

「おぉ、何だよいきなり……顔はフード被ってたから見てねぇな。名前は確かレイブンだったかな? 来たのはあんたがさっき来る少し前だな、10分ぐらい前か?ーーおい!どこ行くんだよ!」



 気付いたら宿屋を飛び出していた。

 飛び出してから辺りを見渡してまた走り出す。

 たぶん考えすぎだ、そんな都合の良い事ある訳ない。

 ダンジョンにいた時も仲間は沢山死んだし、淡い期待も直ぐに砕かれる。


 名前も違う、風貌も少し違う、アイツはフードはあまり着ていなかった、それでも少しの希望を残して走る。

 正体を隠していて目立つ行動も控えていた、なのに私のいる場所を見つけれる情報力がある人間。

 私は1人しか知らない。


「はぁ……はぁ……」

 この街の出口まで走っても見つからなかった。

 西()()の前で膝に手をついて荒い呼吸を整える。


「はぁー何やってんだろう。私、こんなに女々しかったっけ」

 1人になってちょっとナイーブになってたかも。

 宿に戻ろう、都合よく考えすぎてた。

 アイツと【サンセリティア神聖教国】は何の縁も無いしアイツは私以上に宗教が嫌いだ。


 自分らしく無かった行動を内心で馬鹿にしながら宿に向かって行く。


 ーーーー


 同時刻 クロット村の隣町 ()()


「良かったのですか? 会ってあげなくて?」

「あぁ、お互いやる事があるからな」


 全身に仕組む武器を隠すように黒いフードを被った男性と白基調の服を隠すように黒いフードを着た女性の二人組は歩いて東門を後にした。


「貴方が良いならそれで良いですけど……」

「それに今はあんたを手伝うので精一杯なんだよ、()()()

「こ、こら! 誰かに聞かれたらどうするんですか! お仕事出来なくなりますよ!」


 その男性は聖女を揶揄いケタケタと笑いながら足を進めた。

 隣にいる聖女様は口をプクッと膨らませて抗議している。

 先程まで居た街が見えなくなる前に後ろを振り返る。


「感動の再会はまた今度だ、エルトリス」

「やっぱり会いたかったんじゃないですか……」

「うるせぇ。口より先に足を動かしてください」

「はいはい、分かりましたよ」


 そうして2人は次の目的地に向けて足を動かした。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

次話の投稿、楽しみにしていて下さい!!!

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