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新たな世界で最高の人生記録!  作者: 勇敢なるスライム
第1章 幼少期
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九十五話 お泊まり会でのお話

「えっとねー!えっとねー! 僕、シャルのお話が聞きたいな!」

「あ!俺も聞きたい! 特に冒険の話!」

 俺とフィオラが興味深々でシャルに詰め寄る。

「私の話ですか……あまり楽しく無いですよ?」

「僕はシャルの事もっと知りたい!」

 フィオラは目を輝かせながらシャルの手をぶんぶん振っていた。


「うぅ……」

 シャルはあまり自分の話がしたくないのか少し渋っていた。

 あまり話たくない理由でもあるのかな、エルトリスさんも言ってたけど親元離れて旅をしているんだし複雑な事情があるのかも知れない。

「フィオラ、シャルが困ってるから」

「シャル……だめ?」

 フィオラがシャルの手を握りながら目をうるうるさせて上目遣いでお願いしていた。

「わ、分かりました。話しますから恥ずかしいので少し離れてーー」

「ありがとー!シャル!」

 恥ずかしがっているシャルとは裏腹にフィオラがシャルに飛びついた。

「あの、ちょっと……もう仕方ないですね」

 何この可愛い生き物達、これはずっと見ていられる気がする。


 ーーーー

「ふぅ、やっと解放されました」

「ごめん、嬉しくてつい……シャルは嫌だった?」

「嫌ではないですけど、少し恥ずかしいだけです、あまり人とくっつく事がないので」

 フィオラは基本的にスキンシップは多めだがシャルとは特に多い。

 同性で同年代の友達が居なかったからだろうな。


「じゃあ、何から聞きたいですか?」

「はい! 好きな食べ物は何ですか!」

 シャルの正面に俺とフィオラが座って質問タイムが始まった。

 俺は足を組んで座っていて、シャルは両脚を右側に置いて座っていて、フィオラはぺたんと女の子座りをしていた。


「好きな食べ物ですか……良く食べるのはクリームシチューですね。体が温まりますし優しい味が好きです」

「一緒だー!僕もクリームシチュー大好き!」

 ーーーー

「それでそれで!?」

 フィオラが食い気味にシャルの話を聞いている。

 シャルも反応が良いからかとても楽しそうで雄弁に語っていてその姿は吟遊詩人の様だ。


「それからゴブリンを追いかけて洞窟に入ると、そこにはモンスターの大群がいたんです」

「すごーくピンチだよ?」

「どこを見てもモンスターに囲まれていてね、倒しても倒してもキリが無くて半日は戦ってましたね」

「半日も!? それからシャルはどうしたの?」


「師匠が前にいたモンスターを一瞬で倒してくれてその隙に私は一人でゴブリンの親玉の所に走っていきました。ゴブリンの親玉はこーんなに大きかったんです」

 シャルが両手をめいいっぱい広げてゴブリンのボスの大きさを表現していた。

 少し大袈裟にも聞こえるけどこの世界の生き物はどれも規格外で安全な日本で育った俺の想像を遥かに超えてくる。

 俺も【銀狼の森】でジャイアント•トロールを見た後だからシャルが言っているゴブリンのボスが異常にでかいのも納得できる。見る前だったら話を盛ってると思ったかも知れない。


「シャルはその凄く大きなゴブリン?に勝てたの?」

「その時は今みたいに魔力を上手く扱えなかったからかなり大変だったけどギリギリ勝てました」


「すごいすごい! シャルすごいよ! 僕達と体の大きさも年齢もあまり変わらないのに強くて可愛くてかっこいいから僕も友達として凄く嬉しいよ!」

「そ、そんな事ないです! 可愛さならフィオラの方が断然可愛いですよ」

 そう言いながらシャルがフィオラを抱き寄せて頭を撫でていた。

 撫でられているフィオラは猫みたいでされるがまま撫でられていて嬉しそうだ。


 ついさっきまでスキンシップを恥ずかしがっていたシャルが自分からフィオラを撫でていると言うことはフィオラに慣れてきているのかも知れない。


「ライラス手出してー」

「手出してって……こうか?」

 俺は言われるがまま右手を突き出すとフィオラが俺の手を取って自分の頭に置いてきた。

「えへへ、シャルとライラスに撫でられて僕今すっごく幸せだよ」

 うん、可愛い。たぶんシャルも同じ事考えているだろう。可愛い、一生撫でておこう。



「二人になら話しても良いかも知れませんね」

「親元を離れて旅をしている理由か?」

「ええ、そうです。フィオラにはちょっと怖い話かも知れませんけど……聞いてくれますか?」

「うん……怖いのは苦手だけどシャルの事なら聞くよ! もっとシャルの事知りたいもん!」

「そうですか……ありがとうございます」

 少し考えて深呼吸をしてから話し始めた。

 ぞの姿はどこか大人びていて、少し寂しそうだった。


「私が師匠と初めて会ったのは2年前、私が今の二人と同じ5歳だった時……私の住む村はとても小さかったの。村のみんなは家族みたいなもので毎日友達と遊んで家の手伝いをして過ごしていて、裕福ではなかったけどとても平和でした」


「ある日、夜中に私が寝ていると家の外から悲鳴や家が燃えている音が聞こえてました。賊だったんです、小さな村を襲って人を殺して私もすぐに捕まって檻に入れられました」


「檻から一人一人選ばれてみんなの前で殺されていって、昨日まで笑っていた友人も、優しくしてくれるお母さんとお父さんも……泣いても叫んでも賊はやめてくれませんでした」


「そして……みんなが殺されて私が最後の一人になりました。死ぬ事よりも置いていかれる恐怖の方が強かった……生きる事を諦めていた時、師匠が助けに来てくれて、賊をみんな倒して村のみんなの仇を打ってくれました。それが師匠と初めて出会った日です」


「本来なら私は隣村に引き取られる予定だったんですけど、私は大切な人を守れる力が欲しかったから師匠に頼み込んで弟子にして貰いました。これが私が師匠と旅をしている理由です」


 話し終えたシャルは儚げで寂しそうだった。

 話を聞いて今までどうしてシャルが寂しそうでどこか遠くを見つめているのかが分かった気がした。

 でも、俺はシャルになんて声をかけて良いかが分からなかった。


「うぅ……うぅ……」

 俺の隣を見ると涙ポロポロと流しているフィオラの姿があった。


「どうしてフィオラが泣いているんですか」

 シャルがフィオラの涙を拭きながら諭していた。


「だって……だって……シャルが泣いてるから」

「私のために泣いてくれてありがとうございます……私はもう大丈夫ですから泣き止んでください。フィオラが泣いていると私も悲しくなってきます」


「うん……分かった、もう泣かないよ」

 フィオラは両手で目を擦って涙を拭った。泣き止んだ後、両目の端は赤く腫れていた。


「フィオラもライラスも最後まで話を聞いてくれてありがとう……私も誰かに話せて気持ちが軽くなったよ」

「シャルも話してくれてありがとう……」


 それから色々な事を話した。

 俺とシャルが初めてあった時の話、エルトリスさんの話、シャルの冒険の話、それからペコの話もした。

「えぇ!? あの子モンスターだったんですか!? あ、危なく無いんですか?」

「フィオラとフィオラのお母さんには良く懐いてるぞ、俺には全然懐いてくれないけど」

「そう……だよ……ペコはすごーく……良い子……だよ」


 フィオラがそろそろ限界みたいでうとうとと眠たそうに首を振っている。

 聞こえる声はとてもフニャフニャとしていて眠たいのがよく分かる。


「そろそろ寝ましょうか」

「もうちょっと……おはなし……したいよ」

 もしかしたらフィオラは口には出していないだけでシャルがもうすぐ旅立つのが分かっているのかも知れない。

 シャルとエルトリスさんがこの村に来た目的は俺とシャルを戦わせる事だったからそれが終わった今、シャル達がこの村に止まる理由はもう無い。

 せっかくフィオラが心を許せる友達が出来たのに数日以内にお別れしないといけないのは心が痛い。


 シャルがほとんど寝かけているフィオラの手を引いてベッドに連れて行っていた。

 その姿はまるで姉妹みたいだ。


「」

「じゃあ俺は床で寝るよ、二人はベッドを使ってくれ」

「いや……ライラスも……いっしょ」

 逃げるようにベットから離れて床で寝ようとするとフィオラに袖をクイっと掴まれた。

「しゃ、シャルは一緒のベッドで寝るのは嫌だよな」

 俺とて一緒に寝るのが嫌では無いがやっぱり同じベットで寝ると何処からともなく現れる罪悪感に襲われる。


「私は全然良いですよ。それに寝るならしっかりベッドで寝ますよ。床で寝ると次の朝、体が凄く痛いので」

 なんだか異常に説得力がある、冒険をしていると床で寝る事も良くあるのだろう。

 そして体を痛めるのは嫌だな。


「分かった、一緒に寝させてもらうよ」

 ベットで寝る順番は二人でフィオラを挟んで寝る形になった。

 ベットに入って寝転ぶとフィオラはすぐに夢の中に入っていった。


「フィオラはもう寝たんですか」

「そうみたいだな、たくさん泣いて疲れたんだろう」

 フィオラがあそこまで泣くのはあまり見たことが無かった。


「フィオラは良い子だね、私の為に泣いてくれた人は師匠とフィオラぐらいだよ」

「ならフィオラにもその話し方で接して上げたらどうだ? フィオラも喜ぶと思うぞ」


 シャルは基本的には誰とでも敬語で話す。

 シャルと初めてあった時は俺にも敬語……いや、初対面の時はエルトリスさんがシャルを煽ったせいで嫌われていたから敬語すら無かった気がするな。

 そう考えるとあんまり変わっていないのか?


「それは……自然には出来ないよ。昔の私は二年前にもう死んでいるから」

「シャルは強いな、凄くかっこいい。でも、俺達はまだ子供だから甘えたっていいんだぞ」

 シャルは強い、戦闘面だけで無く心も強い。でも、それは七歳の女の子が抱えて良い強さじゃ無い。

 俺と二歳しか変わらないのに境遇がまるで違う……神様はどの世界も不平等で残酷だ。


「フィオラもライラスも優しすぎるよ。私の信念が変わったらどうするのさ……」

「その時はまた三人でこうしてお泊まり会をしよう。暖かいお風呂に入って、美味しいご飯を食べて、みんなで色々な話をして、安全でふかふかのベッドで寝てさ、また一緒に笑おう」

 シャルが豪を背負う必要は無い。


「ありがとう、その言葉があれば私もまた頑張れるよ」

「そうか……もうそろそろ寝ようか、明日起きれなくなる」

「そうだね、おやすみライラス、フィオラ」

「おやすみシャル、フィオラ」


 シャルの信念は変わらない、きっとこれからもシャルは茨の道を進んでいき、その度に傷ついていくんだろう。

 シャルが傷ついた時、側にいるかは分からないけどその時は支えてあげよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

次話の投稿、楽しみにしていてください!!!

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