九十三話 ライゼンさんと真面目な話
体を洗って浴槽に浸かる。
温度は少し熱いぐらいで背中が少し痒くなる。
この世界でもお風呂という文化はあるらしく、俺の家もフィオラの家にも浴槽がある。
今の所、俺が知っているこの世界の風呂は俺とフィオラんお家の2つだけで浴槽はどちらも木製だ。
日本みたいにインフラは整っていないから水を溜めてそれを火で温めて人が入れる温度になったら入る感じだ。
温度の細かな調整が出来ないからたまに滅茶苦茶熱い時があるが、その時は水属性の魔術で温度を調節している。
子供の体だからか浴槽かなり大きく感じる、それとも普通に風呂が大きめなのだろうか。
大きな浴槽でのんびり寛いでいると水位が急に上がった、ライゼンさんが入ったからだ。
「ライラス君、ウチの風呂もかなり広いだろ、ガシェットさんにお願いして広めに作ってもらったんだ。母さんはお風呂が好きだらかな」
フィオラの家は大人が二人は入れるであろう大きさの浴槽だ。
日本人の家の風呂よりは確実に広い……恐るべし異世界。
「はい、とても居心地良いです。毎日これに入れて羨ましいですよ」
旅行先の風呂は特別気持ちよく感じる。
修学旅行に来てるみたいだ。
「ライラス君が良ければまた来ると良い、きっとフィオラもマリーネも喜ぶよ」
「はい! 必ずまた遊びに来ます」
ライゼンさんは嬉しそうに笑いながらそう言った。
きっと本心で言ってくれてるんだろう。
もしも、俺に自分の娘が出来て男友達が家に泊まりに来たら俺なら子供が小さくても歓迎できないと思う。
ライゼンさんが優しいのかそれともあまり気にしていないのか。
「ライラス君はマリーネと会うのは初めてかい?」
「いえ、この前に一度だけ会いました、その時はフィオラのお母さんだって分かりませんでしたけど」
よく思い出して見るとわざと正体を隠していたような気がする。
「マリーネとフィオラはよく似ているだろう? 緑の髪色と耳はエルフの俺によく似ているが優しい目と性格は母親のマリーネとよく似ている」
ありがとうライゼンさん、貴方のお陰で俺は見たかったエルフの少女を見ることができました。
「ならフィオラは将来美人さんになりますね」
「おぉ! 分かってくれるかライラス君! 今は天使みたいで可愛いけど将来は可愛さを残しつつマリーネに似て必ず美人になるぞ!」
ライゼンさんは満面の笑みで俺の肩をバシバシと叩いていた。
ちょっと痛いけど、まぁ俺もフィオラが誉められていて嬉しいから良しとしよう。
「マリーネは少し天然な所があるがきっとライラス君の事は気に入ってくれるはずだ」
「えっと……もしかしたら僕嫌われるてるかも知れないです」
「マリーネがライラス君を? どうしてだ?」
ライゼンさんはキョトンと首を傾げていた。
「実はマリーネさんにはフィオラに魔術を教えた事に少し釘を刺されてしまいました」
魔術は危険だ、初級や中級の魔術でも当たれば怪我になるだろうし、当たりどころが悪ければ最悪死ぬ。
剣術と違って体格差があっても魔術の威力には関係が無い、子供が使うには危険すぎる。
今でこそ魔術の危険性が分かっている、フィオラが誘拐された時もフィオラの一撃で大男が吹き飛んだし、上級魔術の火柱ではあれだけ強かったネイルウルフが丸焦げになるほどの威力だった。
今でもシャルリアに焦っていたとはいえ咄嗟に使った事を思い出すと怖くなってくる。
「よく聞きなさいライラス君」
ライゼンさんは真剣な面持ちで俺の目を真っ直ぐ見て話した。
さっきまでの印象とは少し違う。
「わかりました」
俺はコクリと頷くと浴槽の中で正座してライゼンさんの目を見た。
「確かに魔術は危険だ。使い方を間違えると命に関わる。ライラス君は5歳にして考え方が大人びている、善悪の判断や難しい魔術も覚えている。君が力を悪い方向には使わない人だということも十分理解している」
ライゼンさんの言い分も理解できる、大人びている所は実は5歳じゃないとは言えないから目を瞑っておこう。
「ここでマリーネが言いたいのはフィオラの事だ。あの子はまだ考え方が年相応で善悪の判断も難しいだろう」
「その通りです、僕はフィオラが魔術を覚えた先の事をあまり考えていませんでした」
フィオラが魔術の危険性えお理解しないまま育つといつかフィオラの手で人を殺してしまうかも知れない。
「今のフィオラは善悪の判断も難しい、魔術が危ないと言う事も完全には理解出来ているとも思えない」
「……」
俺は返す言葉が見つからなかった。
これは怒られて仕方がない。
「フィオラが分からないなら親しい人が教えて上げれば良い、親である俺とマリーネは勿論、だが親が教えても子供は素直に聞かない事も多い、だから君がこれからも教えてあげてくれないかな?」
「僕に務まるでしょうか?」
俺もまだまだ子供だという事を生まれ変わって初めて気付いた、勝手に大人だと思っていただけだった。
前世の時、多少強かったからと言って天狗になっていたが当時も今も上には上がいて、自分が想像しているよりも自分が小さくて弱い事を教えられた。
「君は何度もフィオラを助けてくれたじゃないか、君になら任せられる。これからも迷惑を掛けるかも知れないがフィオラの事を頼んでもいいかな?」
「はい!!! 僕はフィオラの親友です!任せてください!」
「ありがとうライラス君、マリーネには俺から伝えておくとよ」
軽い相談のつもりだったが俺まで励まされた。
これからはもっといま第二の人生につい深く考えよう。
ゲームや遊び感覚でいるといつか大切な人を失う、その前に真剣に向き合うんだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
次話の投稿、楽しみにしていてください!!!




