八十九話 第1回魔術勉強会 中編
「始まりました第1回魔術勉強会!」
勉強会の最初にシャルにも魔術の基礎知識を教えた。
フィオせラにもちゃんと教えた事は無かったから一緒に聞いて貰った。
「えっと魔力を魔術に変えるところまでは分かったんだけどその先が分からないです」
「僕はさっぱり分かんないや……こう、ばーってやったら出来るのは分かるんだけど」
フィオラは使い方だけ教えて後は感覚で使えるほどには天才だけど五歳の子に話すにはちょっと難しかったみたいだ。
「シャルは模擬戦であれだけ早く動いてたし魔力を使って身体強化出来るだろ? 試しにやってみてくれ」
魔力の使い方はいくつかあるが俺の知ってる限りで基本的には2種類あって魔力を直接使って身体強化する方法と魔力を魔術に変えて使う方法だ。
「はい、こうやって……出来ました」
見た目では判断しにくいがたぶん今のシャルは成人男性ぐらいの身体能力はありそうだ。
「シャル凄い! 僕それ試したんだけど全然できなかったんだ」
フィオラがぴょんぴょん跳ねながら自分の事の様に喜んでいた。
フィオラは魔術は得意だけど魔力を直接使う身体強化は苦手みたいで何度か試したけど失敗した。
「シャル、もっと身体強化出来そうか?」
「もっとですか? 試した事ないですけど……やってみますね」
シャルが目を瞑って深呼吸をした。
傍から見るとただ瞑想してるだけだがきっと何か方法があるんだろう。
「もう少しで出来そうなんですけど……!?」
シャルの体の周りに金色の魔力が渦巻いた。
フィオラが魔力をコントロールする為に集中した時に出る奴と同じオーラだ。
フィオラは翡翠色でシャルは金色だった。
「これフィオラがさっき魔術を使っていた時と同じですか? 私にも出来たんですね」
「シャル、それたまに戦闘中なってるよね」
「ほんとですか師匠?」
眩くて綺麗な金色のオーラを見て現れたのはシャルの師匠のエルトリスさんだ、家のテラスで見学していたエルトリスさんが近付いて来た。
「エーデンス王国でシャミルとかと戦った時があったでしょ? その時もたまに今みたいにバァーって光ってたよ」
「そうだったんですか……今まで気付きませんでした」
「もしかしたら感情が高まったりテンションが上がると無意識になるのかもしれないね」
戦闘中になっていたと言う事は無意識に集中していたからかアドレナリンが出てたからとか火事場の馬鹿力とか色々考えれるからまだ断定は出来ないな。
「今の身体能力ってどのくらい上がってるんだ? 試しに走ってみてくれないか? 俺も身体強化はそこまで得意じゃないからお手本が見たいんだ」
俺の身体強化が出来るのは精一杯やっても少し疲れにくくなって少し力が上がる程度だ、生前の自分よりはそれでも力で勝てないけど同い年の子には負けないだろう。
「分かりました」
シャルは了承すると立ったまま前傾姿勢を構える。
俺の知ってるスタート方法とは違うからたぶん剣術を使う方法はこの姿勢なのかも知れない。
シャルはグッと力を入れた次の瞬間、凄いスピードで走った……いや、吹き飛んだ。
「え?」
俺は何が起こったか理解するのに少し時間がかかった。
力いっぱい踏み込んだ瞬間にシャルが吹き飛んだ、それは分かるのだが何でそうなったかは分からなかった。
いや、もしかしたら分かっても脳が追いついてないのかもしれない。
「あれ? シャルとエルトリスさんは?」
フィオラは吹き飛んだことすら気づかずに2人が消えたと思っている。
2人?
「ほんとだエルトリスさんも居ない……って大丈夫かシャル!」
俺はシャルが吹き飛んで行った方に走って行った、エルトリスさんも居ないのはまさかな、と思いつつもシャルの方に走っていった。
吹き飛んだ先は地面が抉れていて土が露出していた。
その先には行くとシャルを抱き抱えていたエルトリスさんが立っていた。
「やぁ、ライラス君。 シャルがちょっと擦りむいちゃってるから回復魔術をお願いするよ。あ、私は足捻っただけだから後で良いからさ」
「え? あ、はい!」
俺はかなり呆気に取られていたが直ぐにシャルに回復魔術を使った、それに続いてフィオラはエルトリスさんに同じ魔術を使った。
「すみません……いや、ありがとう師匠、それに2人とも」
「いや、どうって事ないよ、それより何があったんだ?」
俺も少し時間が立って状況はおおよそ理解して何があったか考えたがやっぱり本人に聞くのが1番だ。
「私もよく分かんないんだけど、走ろうとして1歩踏み出したらこんな感じになっちゃった」
「身体強化のしすぎで自分が思ってる以上に力が上がってるみたいだね」
エルトリスさんの考えが1番理解出来る。
身体強化してたからちょっと思ってたけどやっぱりそうなるのか。
例えば1歩で1m歩く人が50mを歩くと50歩でゴールできる。
じゃあ魔力で身体能力を50倍にするとどうなる……答えは1歩で50m進むって事だ。
実際何倍になったかは分からないが自分の予想以上に身体強化したから1歩であれだけ吹き飛んだんだ。
「え? 待ってください、シャルが吹き飛んだのは分かりました。けどエルトリスさんは何で一緒に吹き飛んでたんですか?」
エルトリスさんはシャルと距離があったしぶつかって飛んで行ったのはたぶん無いから……つまり
「シャルが吹き飛びそうになったから庇って受け止めたんだよ」
当たり前に言っているけど良く考えればおかしい。
何故なら魔力で強化して凄くスピードが出てたし常人では何が起きたか何て全く分からない。
挙句吹き飛ぶなんて予想出来なかったはずだ。
それを受け止めたなんて……やっぱり凄い人だ。
「取り合えず大怪我にならなくて良かったよ、じゃあ続きをやろうか」
みんなで元居た場所に戻ってエルトリスさんも混じって魔術の勉強会を再開した。
「魔術は詠唱をする方法と詠唱をしない方法に分かれてるんだ。ちょっと見ていてくれ」
俺はそう言うと右手を前に突き出して手のひらを上に向けた。
「火の女神よこの地に灯を ファイア」
俺の手のひらに拳サイズの小さな火が現れた。
「凄い、魔術の詠唱してる所初めて見た……」
「シャルは魔術士と戦った事無いのか?」
色々な人と戦ってると思ってたからてっきり戦った事があると思っていた。
「あー、シャルは確かに魔術士と戦った事あるんだけど……使う前に相手が気絶するから見た事無いんだよ。魔術士全員が無詠唱で使える訳じゃ無いしね。詠唱を短く使う短文詠唱の方が人口は多いはずだよ」
あ、使う前にボコボコにしてるって事か……怖すぎる!!!
それもそうだ、いくら無詠唱や短文詠唱でも使う前にあの高速で突っ込まれると対処できないからな。
「そしてこれが無詠唱で使う同じ魔術【火】」
今回使ったファイアは魔力を倍近く使ったからさっきより格段に大きくなった火が燃えていた。
「凄い、さっきより大きくなってる!」
シャルが目を輝かせながら火に近づこうとするので手を遠ざけてから火を消した。
魔術は危険だから容易に触れると大怪我に発展してしまう。
「それじゃあ、シャルも試しに魔術を使ってみよう!」
「私も魔術が使えるのかな?」
「大丈夫だよシャル! 僕だって使えたんだからきっとできるよ!」
少し心配そうにしているシャルをフィオラが手を握って励ましている。
とても微笑ましい。
「シャル、俺に続けて唱えて見てくれ」
「はい!」
俺が手を伸ばすとそれを真似してシャルも手を伸ばした。
「「水の女神よ今ここに水の恵みを ウォーター」」
俺とシャルの手から少量の水が勢いよく流れた。
「私でも魔術が使えたんだ……」
「凄いよシャル! 僕、最初は失敗ばっかだったから一回目で出来るなんて!」
フィオラは褒め上手なのかシャルと一緒に喜んでいる。
あぁ、微笑ましい。
「使えたけど魔力が一気に減った感じがします……初級の魔術でこんなに消費するんですか?」
「魔術自体はそんなに魔力を使わないはずなんだけど、どうしてだろう? 使った事が無かったから普通より多く使ったのかな?」
確かに言われてみると少し疲れているようにも見える。
「エルトリスさんどうしてか分かりますか?」
こういう時は経験豊富な人に聞く方が良さそうだ。
エルトリスさんは首を傾げながら少し考えてから答えてくれた。
「こういうのは体質的な事もあるからもしかしたら魔術が苦手なのかも」
「そ、そうなんですか……」
「まぁ、慣れて行けばもっと楽に使えるはずだよ」
俺も最初は魔力の使い過ぎで気絶してたから最初はみんなそうなんだろうか、また今度父さんか母さんに聞いてみよう。
「次は無詠唱が出来るか試してみようか、無詠唱だと使う魔力の量が変えれるからもしかしたらたくさん魔術が使えるかもしれないぞ!」
「はい!」
最後まで読んで頂きありがとうございました!!!
次話の投稿、楽しみにしていて下さい!




