八十四話 剣豪との稽古
「あ、ライラスー!」
家に帰る道中、村と俺の家を繋ぐ長い道を歩いていると聞き馴染んだ声が聞こえて来た。
家の方からフィオラが出を振りながら走ってきている。
「もう、遅いよ! みんな待ってるんだよ?」
「ごめんごめん、ペコを探してたら遅くなったんだ」
「こら、ペコ! 一人でどっか行っちゃダメでしょ!」
フィオラが腰に手を当ててペコに説教をしている。
ペコはフィオラに怒られてしょんぼりしている、何故かペコはフィオラの言う事は聞くんだよな。
俺が同じこと言っても噛み付くか知らんぷりされるだろう。
「早く行こう、ライラス!」
そう言うとフィオラは俺の手を引っ張って走り始める、それに合わせて俺も転ばないように走り始める。
俺以外はすでに集まっていてみんな料理の乗っている机を囲んでいる。
パーティーは俺の家の庭に机を並べてビュッフェ形式で行われる。
人数が多くて俺の家だと狭いとの判断だ。
みんながコップを手に持ってから父さんが話し始める。
「皆、今日は集まってくれてありがとう! 今回のパーティーはフツーウ、ガリバー、ポチャの三人がこの村に移住してきたのと三人の新居完成祝いと俺の師匠のエルトリスと俺の妹弟子のシャルリアちゃんの二人の歓迎パーティーだ! 乾杯の前に俺と母さんの馴れ初め話でも――」
「えー、と言う事でみんな乾杯!!!」
母さんが父さんの長話になりそうなのを遮って乾杯の合図を叫んだ。
会場は俺の家の庭に長机が三つにお皿がたくさん置かれていて肉、魚、野菜、パンとたんまりある。
なので俺は肉八割、魚二割、野菜……取り合えず肉食うか肉。
フツーウ、エルトリスさんが肉をがっつく、それを見たシャルリアちゃんもエルトリスさんを真似て肉を口いっぱいに頬張っている。
ポチャとガリバーは野菜を多めに食べている。
ポチャって体形的に全く野菜を食べないタイプかと思っていたら結構皿に野菜を盛っている。
父さんはガジェットさんと二人で話している、何やら楽しそうでガジェットさんが笑っているのは珍しい。
ペンタ君とカルロス君は仲良くパンを食べて賑やかに話している。
俺はそれを眺めながらジュースを飲んでいる。
俺が今の時間に浸っているとフィオラがお皿にバランスよく盛っている皿を二つ持ってきてくれた。
「はい、どうぞ。ライラスはパーティー楽しい?」
「ありがとう。めちゃくちゃ楽しいよ! フィオラのおかげだ、ありがとう!」
「えへへ、そう言われると嬉しいよ」
フィオラは顔の前で手の指先を合わせて笑った。
パーティーは大成功だ。
ーーーー
パーティー翌日の朝
「ライラス君、私と模擬戦しようよ! 剣術だけの模擬戦」
「え、良いですけど……」
「えー!何かちょっと嫌そうなんだけど! 私との模擬戦は嫌なの!?」
強い人との模擬戦は俺も嬉しいんだけど。
「俺、魔術は少し自信あるんですけど、剣術だけってなると凄く弱いんですよ。 才能も実力も無いんですよ」
「はい! 弱気にならない、強く無いから練習して強くなるんだよ。一応シャルに勝ったんだから自信持ちなさい!」
流されるままに渡された木剣はいつも俺が使っている体に合ったサイズの木剣。
対してエルトリスさんが持っているのは俺のより少し小さい木剣だ。
俺が構えるのは様々な体制に移れる中段構え。
自分の正面で剣を構える型でその後に足の横に剣を構える下段構え、頭の横に剣を構える上段構えの二つに移行できる。
しかし対戦相手のエルトリスさんは俺が父さんから教えて貰った構えと別の構えを取っていた。
エルトリスさんは自分の正面に木剣を逆手に持っていた。
アニメとかではアサシンや暗殺者がナイフを使う時の持ち方だ。
「行くよ」
俺はゴクリと生唾を飲み込む。
構える腕に力を入れる。
シャルリアと戦った時は開幕で全身を魔力で強化していて高速で突撃して来た。
あれは身構えていないと反応できない速度だった。
シャルリアの師匠ならもっと早いはずだ。
エルトリスさんが前傾姿勢になって力ずよく踏み込み、走ってきた。
良かった魔力で強化されると反応できない可能性があった。
走ってくるエルトリスさん目掛けて俺も走り出す。
先手必勝、全身を魔力で強化して素早く三連撃を放つ。
三連撃とも当たったと思ったが寸の所で避けられる。
突きをすれば後ろに軽く下がり横薙ぎに振るえば小太刀で弾かれる。
全てを完璧に避けられて隙が一切無い。
普通に振るだけじゃ絶対に当てれない。
俺は小柄さを利用してさらに速度を上げて踏み込む。
力神流 武人の型
「【二連撃】!」
下から大きく振り上げる、体を反らして避けられる。
ギリギリで避けるなら直ぐにもう一撃すればいい。
上から大きく振り下ろす。
木剣どうしが当たるタイミングで小太刀を少し捻って往なされる。
そのまま小太刀を俺の首に当てられる。
「ま、参りました」
「うん、今ので大体わかったよ」
「何がですか?」
「ライラス君の強くなるために必要な要素は大きく三つ。一つは年齢、たぶん同い年でライラス君に勝てる人はそうは居ないと思うけどもっと強くなるなら今のシャルと同じ七歳だね、魔力で強化できるとは言え体格差は大きく関係してるからね。」
「俺はあと二年鍛えるとどこまで強くなれますか?」
「流石にシャル程は行かないけど近ずくくらいは行けるはずだよ。あの子は才能と努力が普通の人とは違うから……」
エルトリスさんは少し考えるように呟いた。
師匠なりの考えがあるみたいだ。
「えーっと一つ目はそんな感じかな? 二つ目は変な癖かな? ライラス君は力神流と技神流の二つを教えて貰ってるんだよね? それ以外は何か流派は教えて貰ってる?」
「……いえ、その二つだけです」
「ん-そっか。まぁこれはいいか、変な癖もこのまま行くとたぶん消えるだろうし。 それじゃあ最後の三つ目、これは単純に努力する事だね。ライラス君は残念ながら私と同じで才能が無いね」
グサッ! 俺の心にナイフが刺さった。
日本に居た頃から何度も言われたセリフだ。
「そ、そんなにですか……」
「限りなくゼロに近いね、私もだからシンパシー感じたくらいだよ」
ザクッ! グリグリ! 俺の心に新しいナイフが刺さってグリグリされた。
「君のお父さんは才能が凄いって私に手紙を送って来たんだけど勘違いだね。理由はアイツが親バカだったのが一つ」
「もう一つは?」
「二つ目でも言った変な癖のせいだね。変な事言うけどシャルと戦った時見てたのとさっきの模擬戦しても思ったけど他の流派を何年もやっていたような感覚なんだ」
まずい、剣道を長年やっていた癖を見抜かれてる。
流石にバレたりはしないと思うけど、そもそも転生したのってバレたらどうなるんだろうか。
「まぁ、その二つの事もあって才能があるって言ってたんだと思う」
そうか、父さんから見れば俺が五歳だと思ってるけど剣術じゃないけど剣道を長年していたから実質剣道をしていた年齢+五歳だから勘違いしていたのか。
「その三つをクリアするとかなり強くなると思うよ」
「どうして弟子でも無い俺に教えてくれるんですか?」
「理由は幾つかあるけど一つは弟子の子供だからって言う親切心、こっちは理由の少しかな」
「それじゃあ理由の大きな部分は何ですか? シャルリアちゃんのライバルになって欲しいとかですか?」
俺的には怒っていた相手にまぐれで一度勝ったけどもう二度と勝てる未来が見えない。
それだと希望に答えることが出来ない気がする。
「あ!そうそう、それもお願いしたい! 出来ればまたシャルが増長した時に負かしてくれるストッパーが欲しいんだ」
あ、言わなきゃ良かった。
これあれだもっと強くなったシャルリアちゃんと戦わされる奴だ。
「話が逸れたね、君に稽古をつけた理由の大きな要素はね、君ラウドに勝ちたいんでしょ」
「え、何で分かっ……はい、勝ちたいです」
「私もねラウドに一泡吹かせてやりたいんだよね、あの才能マンが本気で悔しんでるところ見てみたいからね」
「エルトリスさんは父さんの師匠なんですよね、父さんはいつも師匠には勝てないって言ってますよそれでもですか?」
「師匠でもね、弟子に嫉妬したりするんだよ本人達には言えないんだけどね、私実は魔力が無いんだよ。だからみんなが当たり前にしている魔力を使った身体強化が出来ないんだ」
「え? 魔力が無いんですか……」
そうか、だから模擬戦の時もシャルリアちゃんみたいに身体強化して突っ込んでくるんじゃなくて走ってきたのか。
「魔力が無いから持ってる人にはちょっと…いや、かなり嫉妬しちゃうんだ」
「そう、だったんですか」
「試合じゃなくて本気の殺し合いなら私はラウドや他の弟子達に負けちゃうと思うんだ、ちょっと試したい気がするけど出来ないよね。ちょっと話さなくていい事も話しちゃったね、今の気にしないで」
「分かりました、僕はいつか父さんとシャルリアちゃんの両方に勝てる男になります」
「そうそう、男の子はそのぐらいの心持で居よう! 期待してるよ少年!」
「はい!」
エルトリスさんの意思を次いで俺は父さんとシャルリアちゃんより強くなろう。
せっかく凄い人が稽古してくれたんだ。
俺は必ず強くなる。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
次話の投稿、楽しみにしていてください!!!




