七十話 戦闘狂、再び
大柄な男をフィオラと一緒に倒してすぐの事。
「怖い思いさせてごめんな」
「最初はちょっと怖かったけど、ライラスが来てからは怖くなかったよ!」
ほとんどの間気絶していたのは良かったのかもしれない。
もし起きていたらかなり怖かっただろう。
痛い所はないかと聞くと自分の体をキョロキョロ見てから頭を傾げている。
よかった、痛い所は無いみたいだ。
アイツが起きる前に早くここから出よう
「僕、ライラスに内緒で隠れて来たのにどうしてここに居るって分かったの?」
「ここに来る前に助けてくれた人が――グッ⁉」
階段を上りながら話しているとズキリと頭に鈍い痛みが走る。
魔力をいきなり使いすぎたせいか頭が痛い。
思わず会話を止めて右手で頭を強く抑える。
「ライラス大丈夫⁉」
フィオラが頭に手を添えてくれる。
初級の回復魔術 【ヒール】を使ってくれた。
暖かい光と共に痛みが引いていく。
「あぁ、ありがとうフィオラ。おかげでもう大丈夫そうだ」
「僕のせいで迷惑かけてごめんね、来ちゃダメだって言われてたのに……」
「フィオラは何も悪くないよ、だから気にしなくて良いよ」
「でも……」
「フィオラよく聞いてくれ。俺は友達が困ってたら迷わず助ける、迷惑だなんて思わないしその人の力になりたいんだ。人はごめんねより、ありがとうが聞きたいんだ。フィオラはさっき俺にヒールを掛けてくれただろ?」
「うん!」
「迷惑って思ったか?」
「ううん、思わなかった!」
「俺も同じだ、だから今度からはごめんねじゃなくありがとうだ」
「うん……分かった! 僕を助けてくれてありがとう! ライラス!」
俺達は話し合いを終わらせて直ぐに出口へ向かった。
長く古い通路を抜けると出口はもう直ぐそこだ。
「おい! どこ行く気だクソガキィ‼」
後ろからついさっきまで聞いていた嫌な声が聞こえる。
振り向く前に腹に耐えがたい激痛が走る。
思考が追い付く前に壁に弾き飛ばされる。
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
けど、ここで俺が倒れたらフィオラが……‼
「ぐはッ‼ がはッ!がはッ! はぁ、はぁ」
口から今まで見たことない程の量の血が零れてくる。
それでも戦わないと……
壁に体重を掛けながら無理やり立ち上がろうとする。
しかし足に力が入らない、もう立ち上がれない。
「はっははは‼ ざまぁねぇーぜ! まともに立てやしねぇ! さぁどうする? さんざん俺をコケにしてくれたんだ! 簡単には殺させなぇーぞ‼」
やばい、魔力はもう無い、どうする? 短剣で戦うか? 純粋な実力で言えば負けてる、それに力では勝てない。 どうする? このままだと二人ともやばい。
半ば絶望しながらもフィオラだけでも逃がす算段を立てる。
ダメだ蹴られた腹が痛すぎて頭が回らない。
「ら、ライラスから離れろ!」
フィオラが大柄な男に両掌を向けている、つまり魔術で攻撃するつもりだ。
「んだと? メスガキ! 俺と殺ろうってのかぁ? あぁ?」
「ダメだ!フィオr……がはっ‼ がはっ‼」
まだ声がしっかりと出せない。
コイツは俺でも勝てなかった、元々勝てる相手じゃない。
さっき魔術が当たったのは完全な不意打ちだったから当たっただけだ。
今フィオラから攻撃したらマズイ!
「どうしたメスガキ、武器も持ってなければ拳も握っていない。 戦えもしない雑魚が俺の殺しを邪魔するな、よっ!」
大柄な男は腕を振り上げた、その先には今にも魔術を放とうとしているフィオラが居る。
ん? ちょっと待てよ。フィオラが戦えもしない? 普通、俺より威力の高い魔術を撃ったフィオラを一番に警戒するだろ。
何で戦えもしななんて言ったんだ?
もしかしてコイツ‼
フィオラが魔術使える事分っていないんじゃないか。
確かにフィオラは完全な不意打ちから一撃で吹き飛ばした、その後直ぐに気絶してた。
フィオラじゃなくて俺が撃ったと思ってるのか、そうだとしたら。
「ちょっと待てよおっさん‼ また俺に吹き飛ばされたくなかったら大人しく引いといた方が身のためだぜ!」
俺の声を聞くと男がフィオラに拳を振りかざす前に止まった。
これでもし俺が吹き飛ばしたと勘違いしていたままだったら勝機はある。
「へっ! ハッタリだな。 お前はもうこれ以上魔術を使えない、現に顔色が悪……いや少し良くなってやがる」
そう、さっきフィオラに回復魔術をかけて貰ったから魔力は相変わらず無いが見た目は普段のそれと同じ。
魔力がある様に見える、大柄な男の脳裏には魔力が回復したか、少しは残ってたと勘違いするかもしれない。
「いいじゃねーか‼ 撃てても一発が限界だろ? 俺は二度も同じ手を食うほど馬鹿じゃーねぇ。 いつでもいいぜ?」
来た! これでコイツはフィオラに無警戒のまま俺を警戒する。
今の立ち位置はフィオラと大柄な男が扉の前、そして俺が壁にもたれ掛かってる。
もう少し俺に近づいてくれたら完全にフィオラを死角に配置できる。
「ようは俺の魔術とそれをアンタが避けるかの一騎打ちだろ? 俺は戦闘の実力で負けてる、少しハンデをくれないか?」
「へっ‼ 俺とお前の力の差をわかってるじゃねーか‼ いいぜどんなハンデでも勝ってやるよ」
「俺は今、立ち上がれないし腕に力が入らないんだ。もう少し近くに来てくれないか? 」
どうだ、このまま乗ってくれたらフィオラの魔術でもう一度一発逆転出来る。
「いいぜ! いいぜ! 俺はもう負けねぇぜ!」
大柄な男は意気揚々と俺の正面まで歩いて来た。
相変わらず左腕は俺の土塊のせいでダランと力が抜けている。
大柄な男にバレないように両手を構えているフィオラにアイコンタクトを取る。
分かってくれフィオラ、俺の合図で魔術を使ってくれ、頼む。
俺の願いが分かってくれたのか頭を縦に振って頷いた。
「いつ撃ってくるんだ、クソガキ‼」
「あぁ、今にもデカいの食らわしてやるぜ‼ フィオラ‼」
「何だ? 何もこねぇじゃn――グゥッ‼」
作戦成功だ! ヒュンと言う音と共に大柄な男がまとも壁に吹き飛んだ。
まて、いつもと音が違う⁉
フィオラが得意とする魔術は風属性。
風属性は基本威力を上げると轟音が鳴り響く。
つまり今回みたいな音は風属性は鳴らない。
俺が答えを出す前に部屋中にキラキラと光る綺麗な何かが飛んだいる。
砕けた氷の微粒子だ。
そう、フィオラは今回使ったのはもう一つの得意魔術。
水属性の中級魔術 【氷塊】
水属性の中級の中で最も難易度の高い魔術だ。
水魔術の中には氷を出現させる魔術があるが水魔術の基礎的な事を理解していないと使えない。
フィオラに氷塊を見せたのは一度だけ、後は詠唱を一度させただけ、なのに実戦で使えるとは。
友達の成長が早すぎてちょっと悔しい気持ちと嬉しい気持ちが半々だ。
「騙したなクソガキィ! 俺はぁ‼ まだァ‼ 終わってねぇーぞ‼ まずはお前から殺してやるぞぉ! メスガキィー‼」
コイツ! どれだけ頑丈なんだよ!
大柄な男は一直線にフィオラの所へ走って行った。
「逃げろフィオラ‼ 外へ出るんだ‼」
行ける! 男とフィオラの距離はかなりある、それに男はかなり負傷しているはずだ。
このままフィオラだけでなら逃げ切れる。
そう思った瞬間扉が開く音が聞こえた、まだフィオラは扉まで行ってない‼
つまり外側から開けられようとしている。
「へへっ! 残念だったなぁ! 俺の手下が帰って来た! もう遊びは終わりだぁ!」
もうダメだ、仲間が帰って来たんじゃ扉から逃げれない。
二人ともコイツに殺されるのか……
「お前ら二人とも、俺様がぶち殺してやr――」
扉が開き切ると同時に大柄な男が地面に崩れ落ちた。
「え? なん……で⁉」
「あんたはホント良く善行ポイント貯めさせてくれるな。ライラス」
扉の前には一人の男が立っていた。
少し汚れた毛皮のベストを羽織ったひょうきん者の様な男だ。
「レイ……ブン……」
「なんだ? ようやく俺を信用してくれたのか? いいぜ! いいぜ! これからは敬意を込めてレイブン兄貴とでも呼んでくれも」
「ちょっと……遅す……ぎ」
「はぁ~⁉ 少しは感謝をだなぁ、って大丈夫かよおい!」
「大丈夫⁉ ライラス‼ ライラス‼」
レイブンが来たおかげで極度の緊張が解け、プツンと糸が切れた人形の様に力が抜けて倒れた。
「ったく、ライラスは世話が焼けるぜ。どっかの女剣士みたいだな」
レイブンはそう言って意識のないライラスを背負ってフィオラの案内の元、クロット村に帰って行った。
読んで頂きありがとうございます!!!
ゲームでもボスは倒したと思ったら生きてたパターンありますよね!
絶望+やる気アップ!?
今回の敵キャラはそんな風に書きました。
次話の投稿楽しみにしていてください!!!




