六十七話 囚われのお姫様
「俺の店。情報屋レイブンへ、ようこそ!」
胡散臭い自称情報屋のおっさんは一つの小さな家の前で止まり手を店の方に向けて紹介した。
「俺の店って事はおっさんの名前はレイブンなのか?」
「おっさんじゃなくてお兄さんな。この町では俺はレイブンで通ってる」
「この町ではって事はレイブンは偽名なんだろ? そんな奴を信用しろって無理があるだろ」
「そんな細けぇ事は気にすんな。今の俺は正真正銘レイブンだ、それ以上でもねぇしそれ以下でもねぇ」
見た目は盗賊、仕事は自称情報屋、この様子だと色々な町で幾つも偽名を名乗っている見たいだし、見た目はガリガリのおっさんで本人曰く、お兄さんと呼ばれるくらいは実年齢が若いと……
「ごめん。今の所、レイブンの事を信用できる情報ゼロなんだけど……」
「まぁまぁ、とりあえず信用はしなくてもいいから今は俺を利用しとけ。んで、どんな奴を探してるんだ?」
情報屋の実力はさて置き、戦闘の実力で言えば俺が本気で戦っても手も足も出ない。
ドラマやニュース、漫画やアニメで出てきた悪い大人が見ず知らずの子供に関わる理由を出来るだけ思い出す。
誘拐目的、殺し目的、奴隷目的、性的目的、金銭目的……etc.
誘拐や奴隷、殺し目的ならとっくに実行に移してるはずだかっら誘拐犯でも無ければ殺人鬼でも無いと。
今の俺は薬を買った時のお釣りを除けば無一文。
って事は……
「レイブン、特に意味は無いけど好きな性別は?」
「は? いきなりどうしたんだよ。 普通に女だけど」
良かった、危うく腐女子が喜ぶ展開になる所だった。
それだけは絶対にごめんだからな。
あれ? ホントにレイブンの目的って何なんだ?
それとも俺が知らないだけでもっとやばい奴なんじゃないか?
「もう一つだけ聞いておくけどさ、レイブンが俺を手助けするメリットはなんだ? 無一文で迷子のガキを助けるメリットが無いと思うんだけど」
「実はな……俺には呪いが掛けられてるんだよ。それも俺からしたら相当強い呪いがな」
呪いって、あの装備が外せなくなる奴だよな……協会行かないと駄目な奴。
魔術や剣にモンスターが来て今度は呪い……やっぱりこの世界は俺からしたら最高だ。
「どんな呪いなんだ? そう言うのって協会行ったら治ったりするもんじゃないの?」
呪いの為に俺を助けるって事はあれかな? 呪いを解く手伝いして欲しいとかかな。
例えば呪いを解くための儀式に必要なモンスターの素材が必要とか、呪いを掛けた悪い魔術師を倒すとかそういうゲームのお使いクエスト的な奴だろ。
ちょっとテンション上がってきた。
「俺にかかってる呪いはな……善行を積まないといけない呪いだ」
「なるほどなるほど。善行を積まないといけない呪いか……は?」
「『は?』ってなんだよ。だから、良い事しないと駄目な呪いなんだって」
「…………は?」
「っだっからぁ! 善行積まないと駄目な呪いなんだって! 何で説明したのにもう一回『は?』なんだよ! お前あれか、ダンジョンとかに罠が有ったら解除せずに正面から捻じ伏せるタイプだろ! いるんだよそう言う奴! 俺のダチにもそう言う脳筋な女がいるけど話の聞かなさはお前そっくりだよ!」
なんでコイツいきなり友達の話して自分でキレてんだよ、俺の反応が普通の反応だろ。
呪いって数日後に死ぬとかじゃないの? なんだよ善行積まないといけない呪いって、それ呪いじゃないじゃん。
コイツ俺ぐらいの年ならそう言うので騙されると思ってんだろ。
俺は小学生の頃にはサンタは居ないって分かってたからな。
「つまりレイブンは良い事しないと駄目な呪いが掛かっていて、それの為に俺の人探しに協力すると? そんな胡散臭い話を俺に信じろって無理があるだろ?」
「信じる必要はねぇよ。お前はギリギリまで俺を利用すればいいだけだ」
胡散臭さは凄いけど利用するだけなら一応は納得できる。
利用するのはアリ……か。
「はぁー。じゃあ、お言葉に甘えてギリギリまで利用させてもらうよ。裏切ったら容赦せずに攻撃するからな。力量差はあっても重い一撃ぐらいなら当てれる自身はあるからな」
フィオラと庭で遊んでる時に気づいた技の一つをやってみる。
父さん曰く。
魔力を使う時、普通の人は少しだけ魔力が零れて空気中に流れ霧散してしまう。
ゲームとかにあるMPを使って例えると分かりやすい。
MPを5消費する魔術を使うと実際に消費されたMPは7、つまり無駄に使ったその2MPは空気中に流れ出る。
魔力操作が繊細な人ほどこの無駄に消費する量を減らせたり、一つの魔力の威力やサイズを上手く変えれたりする。
そこで俺が発案した技の出番だ。
霧散する魔力をあえて大きくする、するとアニメとか見たいにブワーっと風が起こったみたいになる。
一番わかりやすいのド〇ゴンボールの超サ〇ヤ人みたいな感じだ。
その技をレイブンの目を睨みつけながら実行してみる。
室内でいきなり突風が起こったように机や椅子がガタガタと揺れる。
髪が少し上に上がる。
動物の威嚇とか喧嘩する前に腕をポキポキならす奴とかと同じ感じだ。
自分の力を分かりやすく相手に伝える為もあるがどっちかと言えば完全に俺の趣味だな。
こういうのカッコいいと思ってる。
「へぇー、さっきと違ってハッタリじゃないんだな。分かった裏切らないと聖女様に誓っとくよ」
「なっ! 会った時に使った魔術ハッタリって分かってたのか!? 知ってて暗器まで使ったのかよ! 大人気ねぇーな!」
やばい、滅茶苦茶恥ずかしい。
魔術を同時に使うの実戦で使えないのバレてたのかよ。
ハッタリがバレるのは思ってた以上に恥ずかしかった。
「まぁ、いいじゃねーか。ガキの頃の背伸びくらい誰にでもあんだよ。早いとこ本題に入るぞ」
「……はぁ、もういいや。俺が探してるのは今日人攫いに合った緑髪のエルフの女の子だ、確証はないがたぶん俺の親友なんだ。どうか助けてほしい」
俺は深々と頭を下げてお願いする。
「おいおい、さっきまでの生意気っぷりはどうした? 急に礼儀正しくなりやがって」
「正直な所、情報が少なすぎて切羽詰まってた所だった。一応協力関係にあって助けてくれる人には当然の対応だと思ってる」
今回、隣町に薬を取りに行く簡単なおつかいですら道中に居たウサギのモンスターにビビり、親友すらも一人で助けられない。
どれだけ魔術を覚えてもどれだけ体を鍛えても根本的には何も成長していないと実感する。
「そういうの嫌いじゃないぜ。些細なことでもいい、もう少し情報が欲しい」
それから俺が知りうる情報全てをレイブンに伝えた。
「三人組の誘拐犯に堂々とした犯行ねぇ……」
レイブンは全てを聞いてから顎に手を当てて考え始めた。
「一つ重大な事が分かったぞ!」
俺程度の素人が調べた数少ない断片的な情報を聞いただけでも重大な事が分かるなんて、流石は自称情報屋あながち情報屋って言うのは嘘でも無いのかも知れない。
「重大な事って何だ? 犯人の名前とか潜伏場所とか分かったのか!?」
「いや、重要なのは俺が全く分からんって事だ」
「……は?」
うん、コイツただの愉快犯かなんかじゃないか?
情報屋って言うのはやっぱり嘘だったのか。
「いや、自分で言うのも何だが俺が情報屋を置いてる町で知らない事なんてほぼないんだよ。だからお前のダチを攫った犯人はこの町以外にいるよそ者って事になる」
「それの何が重要なんだ?」
「裏の奴らは結構仲間意識高いやつが多くてな、よそ者を嫌うやつが多い。簡単に探せるんだよ」
嫌いな奴の情報なら簡単に教えてくれるって事か。
「ついてこい、俺に考えがある」
そうしてまたもレイブンに連れられて幾つか怪しい所に連れていかれた。
最初は小さな家に連れられた。
中に無断で入ると白髪の老人が窓際にある椅子に眠たそうに座っていた。
白髪の老人を見るなりレイブンがいきなり懐にしまっていたナイフを投げだした。
その時に『あ、コイツやったな』とか思ってたら白髪の老人がナイフを指で挟んで受け止めた。
ナイフを吟味したら満足そうに頷いてその後に情報を教えてくれた。
白髪の老人からは三人組の男達が少し前からこの町の裏側で見かけるようになったという情報と三人組がよく向かう方向を教えて貰った。
次は白髪の老人から貰った情報の方に歩いているとレイブンが酒場に入っていった。
一人で座って酒を飲んでいる見るからにやばいオーラを醸し出してる屈強な大男の正面にレイブンがいきなり座りだした。
レイブンが懐から何かの紙を手渡して屈強な大男がそれを見ると直ぐに情報をくれた。
その後すぐに屈強な大男は会計を済ませると走って出て行った。
屈強な大男からは少し前から裏側にある空き家に誰かが数人で潜伏している情報とフードを被った三人組が麻袋を担いでいた情報を貰った。
最後は屈強な大男から聞いた空き家の近くまで歩いている時だった。
道端でお腹を抱えて寝転んでいた俺より少し年上の男の子にレイブンが近寄ってまたも懐から大きめのコッペパンと布製の水筒を手渡した。
食べ終えると例の空き家に麻袋を抱えた三人組が出入りするのを見たらしい。
出た時は麻袋には何も入っていなかったのに帰って来た時は麻袋に何か入っていたとも教えてくれた。
そうして数々の重要な情報を得た事でようやく犯人の潜伏場所が掴めた。
確実に空き家に三人組の誘拐犯がいると分かった。
たぶん担いでいた麻袋にはフィオラが入れられているはずだ。
「こんなに早く見つかるって事はレイブン本当に情報屋だったんだな。絶対嘘だと思ってた」
「お前はホントに失礼な奴だな」
「いやレイブンは怪しい事だらけだからしかたな――んん!? んん!!」
話しているといきなりレイブンが口を塞いで『ちょっと静かにしてろ』と小声で言いながら空き家の正面の路地裏まで連れてこられた。
「いきなり何すんだよ!」
「ばっか! もう少し小声で喋れ! ほら、空き家を見て見ろ」
そう言われてレイブンが空き家を指さしてくるから空き家の方を見る。
少しすると中からフードを被った三人組の怪しい奴が出てきた。
「レイブンすげぇな、俺は全然分かんなかったぞ!」
「だろだろ凄いだろ。本当に凄いと思うんなら敬意を込めてレイブンさんとかレイブン兄貴って呼んでもいいんだぜ」
「おいレイブン、アイツらもう何処か行くぞ! どうするんだ?」
とりあえずフィオラを助けて安全なクロット村まで連れて行かないと。
あの三人組は正直捕まえなくてもとりあえずフィオラの命が先だ。
「俺はあいつ等を追いかけるおまはダチを助けに行ってやれ!」
「分かった、墓だけはしっかり立ててやるからな」
「勝手に殺すなよ! ダチ助けたら俺に構わずさっさと家に帰れよ!」
それだけ言ってレイブンは軽い身のこなしで壁やら窓やらを蹴って一瞬の内に屋根上がってそのまま三人組が向かった方に駆けて行った。
「ホントにこの世界は普通の人間がいないな。まぁ、俺ももう普通じゃないんだけどな」
空き家の前まで行って扉に手を掛ける。
さぁ、囚われのお姫様を助けに行くか!
読んで頂きありがとうございます!
更新遅くなって申し訳ありません!
次話の投稿、楽しみにしていてください!




