六十六話 謎の情報屋
緑髪のエルフの子供が誘拐された場所は武器屋の近く。
俺の嫌な予感が合っているならそのエルフの子供はフィオラで間違いない。
出来ればただの杞憂で合って欲しいが不安要素は減らしておきたい。
武器屋から薬屋まではそんなに遠くなかった。
地図とにらめっこしながら歩いて五~六分程度だったから目撃証言も直ぐに見つけれるはずだ。
薬屋の前で話を聞いて全速力で武器屋近くまで走っている。
目撃証言って言ってもいったい誰に聞けば良いんだよ。
相手がプロの人攫いなら痕跡なんて無いんじゃないか……いや、現に俺が通行人から聞けたからその線は無しだ。
と言う事は相手は素人の可能性がある。
じゃあ、フィオラを狙う目的は何だ?
可能性として有るのは人身売買や奴隷にしたりするためか?
魔族が差別の対象って言うのは父さんから聞いてたけど通行人の夫婦の言い方的にエルフとかドワーフの亜人も少なからず差別の対象なのか?
知らない事が多すぎるから犯人の目的が分からない。
武器屋のダイダロに聞けば何か分かるかも……いや、たぶんだめだ。
攫われた現場が武器屋の近くで俺とダイダロが気づかなかったって事は近くって言ってもそれなりに離れてい居たに違いない。
フィオラが何でこの街に来てるかは分からない、でも可能性としては俺の後をついて来たのが一番考えられる。
人を追いかける時は大体、隠れながら追いかけるのがセオリーだ。
路地裏に隠れていたらたまたま連れ去られた可能性は?
いや、それならさっきの夫婦見たいに目撃証言が有るはずが無い。
と言う事は連れ去られたのは普通の道で連れ去られたという事。
考えることが多すぎる……一度落ち着いてまとめてみよう。
今分かっている事は全部で四つだ。
一.攫われた子供が緑髪のエルフの子供、性別は不明。
二.犯人はフードで顔を隠していて素顔は分からないが三人組。
三.連れ去られた場所は町の入り口から武器屋の間の道。
四.犯人は素人の可能性がある。
その子がフィオラである確証は無い、犯人の目的も分からない、何処へ連れ去られたかも分からない。
でも大まかな場所を特定できたのは大きな手掛かりになる。
考えをまとめていると武器屋の近くまで来た。
出来れば協力者が欲しい……父さんと母さんが一番望ましいがクロット村に戻っている余裕はない。
この町で唯一知っている人物は武器屋のダイダロだが……頼れない理由が二つある。
一つはダイダロに手を貸すメリットが無い、そしてもう一つは信用できる保証が無い。
そこまで頼る仲でもないし、万が一犯人に金で買収されるかもしれない。
ダイダロに協力してもらうメリットとデメリットが釣り合わない以上はダメだ。
不確定要素は減らしておきたい。
協力者は得られない。
とりあえず見た人が居ないか確認してみよう。
通行人に色々な聞き方で聞いてみた。
『緑髪のエルフの子供を見なかったか?』『人攫いを見なかったか?』『怪しい三人組を見なかったか?』
主にこの三つで聞いてみた。
だが、有益な情報は得られなかった。
子供の悪戯と決めつけて話すら聞いて貰えなかったり、見ていたけど記憶が曖昧で結局分からなかった人。
そもそも数分前だから通行人が知っている可能性が低い。
ずっと同じ場所にいる人がいればいいけどそんなに都合がいい人がいる訳が……
そう思っている時に目の前で椅子に座っている果物屋の店員が目に入った。
店番している人ならずっと同じ場所にいるから見ていた可能性が高い。
町の入り口から武器屋までの通りにある店で店番や売り子をしている人に聞いてみると、とあるやばい路地裏に連れ込まれたらしい。
情報通りにそのやばい路地裏の前まで来てから進行方向を見つめる。
日本で最後に居た場所を思い出した。
通学路の途中にある暗くて狭い路地裏、周りに居たのは敵意を持った先輩達。痛くて暗い嫌な思い出だ。
急に怖くなって足が震える。
次に死んだら、またこの世界で生まれ変われるのかな。
それとも……
「何で怖気づいてるんだよ!」
自分の震える足を叩いて喝を入れる。
俺なら行ける! もう死んだりなんてしない! 強くなる為に努力だってして来たじゃないか!
父さんや母さん、妹のルシェネにフィオラ、村で仲良くなった人たちの顔を思い浮かべる。
一度目を瞑り、大きく深呼吸をする……もう足は震えていない。
路地裏に入り周りに自分いがいに気配が無い事を確認する。
日本に居た時に漫画とかアニメとかである気配を探ったり、気配を殺したりするって言う意味が分からなかったけどこっちに来てどうやるのかを父さんに教えて貰った。
要は気配や音を殺すって言うのは出来る限り音を出さずに歩く事で、気配を探るって言うのは自分以外の足音や息遣いを聞いたりするって事だった。
ってっきり超人とかが目を閉じただけで何となく分かってるものだと思ってた。
と言う事は俺でも出来るって事だ。
音をよく聞きながら、腰に差している二本の武器を手に取る。
右手は剣で左手は杖を持つ。
大人用の短剣は今の俺からしたら両手剣ぐらいに感じる。
両手に武器を持っていてはバランスが取りにくくて実戦てきでは無かった。
一度鞘に戻して杖を右手に持ち変える。
うん、やっぱり両手に武器は俺には早すぎたな。
一度杖を戻してみて両手で剣を持ってみる。
路地裏の少し広くなっている所で振ってみると少し重くは感じるがいつもと変わらず振れる事に気が付いた。
前に父さんに持たせてもらった時はかなり重たく感じてたって事はかなり成長した証かな?
そう思いながら剣を鞘から引き抜いて見る。
店で売っていた鉄製や鋼製の剣と違て光沢が全然違う。
『結構珍しい素材を使っているから――』
確かダイダロがそんな事言ってたな。
これは俺の成長じゃなくて武器が良いって事か……宝の持ち腐れだな。
それにこの剣を持った時は魔力の制御がしやすかった。
この一見が無事終わったらお礼の一言でも言いに行くか。
路地裏に入ってから数分が立った。
別の通りに出たと思ったら町の景色が一変していた。
「なんだ此処は?」
貧民街と言われても納得が出来るくらいは景色が違がう。
地図にはこんな場所書かれていなかったぞ。
少し唖然としながら辺りを見回してみる。
この町の裏側にはこんな闇が合ったんだな。
このやばい路地裏の情報は雑貨屋のおばさんから聞いた。
町の人の中ではこの場所は触れてはいけないタブーなのだろうか。
とりあえず三人組の誘拐犯を探さないと。
そう思っていた時に声を掛けられた。
「おい、そこのガキんちょ。いったいココに何の用だ?」
「人探しです。用が終わったらすぐに帰ります」
話しかけてきた男はひょうきん者っぽい見た目で痩せている、おまけに盗賊ですとも言わんばかりに毛皮のベストを着ていた。
こう言う奴はカモを見つけたらすぐに寄ってくるタイプだ。
出来るだけ話さずに逃げるに限る。
「へぇー人探しか……その人探し俺が手伝ってやるよ」
「いや、結構です。 あと、一応先に言っときますけど俺金なら持ってないですし、たぶん奴隷になっても金にならないですよ」
自分でもビックリなくらい早口で言った。
はやく諦めてくれないかな。
「お前、その年で卑屈過ぎんだろ。 俺、最近七歳の女の子と話したけどもっと純粋無垢だったからな」
「いや、聞いて無いですよ。 用が無いならもう行って良いですか? 急いでるんですけど」
「おい、待て待て! 別に悪い話じゃないだろ? ガキが裏側で一人で人探しなんてしても怪しい人に攫われて奴隷にされるだけだぞ。悪い事は言わねぇーから俺の優しさに頼っときなって! 俺これでも情報屋やってるんだぜ」
「一応その怪しい人が目の前に居るんですけど……」
コイツ、一度見つけたカモは手離さないタイプだな。
出来る限り話は聞かない様にしよう。
「もう一つ先に言っておきますが俺、一人でも十分戦えます」
右手で杖を取り出して、左手の平を上に向けて二つの初級魔術を同時に発動する。
無詠唱で同時に使ったので傍から見ればいきなり現れた様に見えるだろう。
まぁ、同時に発動できるのは杖を持ってからしか出来なかったし、しかも初級しかできないから今はネタ技だけど。
確か母さんは上級魔術でも出来るって言ってたな。
父さんは出来なかったらしいけど。
一人でも十分戦える……これはだいぶ大きなはったりだと自分でも分かってる。
だってウサギ二匹にビビってたし、路地裏入るのだって躊躇してたぐらいだし。
このまま相手がビビって引き下がってくれればいいんだけど。好戦的な奴だったらどうしよう。
「……ははは! 最近のガキはスゲェ奴ばっかだな。でもなガキんちょ――」
「そんなんじゃ直ぐに殺されるぜ……」
「え?」
途中から声が後ろから聞こえて振り返ろうとした瞬間に気づく。
自分の首筋にチクリと何かが当たっている感覚がある。
「ほれ、これで実力の差も痛感して貰った事だし! 俺の話も聞いてくれる気になっただろ?」
「……分かりました。話だけは聞きますよ」
「へぇーそれなりに我慢してるようだけどビビってるのバレバレだからな?」
おいおい、今の首筋に当たってた奴って暗器って奴だろ!?
それにどうやって会話中に俺の背後に回ったんだ?
感覚で分かるけど敵対しちゃダメな奴だ、今は大人しくしておこう。
「とりあえず付いて来な、とりあえず人探しに協力するだけだから安心しな」
盗賊っぽい男は俺の首筋に当てていた針を懐にしまってから歩き出す。
厄介なのに目を付けられちゃったな。
早くフィオラを――
「探さないとマズイか?」
「あんた心の声でも聞こえてるのかよ」
「そう言いたそうな顔してたぜ? 結構大事な人探してるんだろ? 俺の地元に急ぎたければ地図を見ろって先人の知恵が合ってだな――」
何処にでも似た様な考えの人がいたもんだな。
日本にある急がば回れと同じ意味だろう。
「急ぎたいなら落ち着け見たいなやつだろ?」
「そうそう、賢く行こうぜ」
コイツの目的が分からない以上出来るだけ情報は漏らさない様にしないと。
隙をついて逃げるか、情報を貰うだけ貰って離れるのも有りだな。
とりあえず、どれだけ強くて親切な奴だと思っても最後まで信じない方向にしよう。
「それで、俺をどう利用するかは決まったか?」
「おっさん、そこまで行ったら気持ち悪いぞ……」
その後、連れられるまま、とある店に運ばれた。
「ここが俺の店。レイブンの情報屋へ、ようこそ」
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