六十三話 初めてのおつかい
《ライラス視点》
「ゴホッゴホッ、風邪引いちまうとはホントに情けねぇ」
只今、ラウドがソファーの上で寝込んでいる。
クロット村にある【銀狼の森】はネイルウルフを筆頭にモンスター達が多く生息している。
その為、村の人達が毎日モンスターが村に来ない様に二人交代制で見張りをしていて昨日の夜がラウドの担当だった。
ラウドは夕方に小雨が降っていたが「このぐらいなら大丈夫だぜ! どうせすぐに止むだろ!」とかフラグ立てて森に向かって行ってた。
その少し後ぐらいに大雨が降ってきた。
まぁ、雨具とか何も持って行かなかったから……綺麗にフラグ回収という訳だ。
「もう、体が濡れたんなら一度家に帰ってきたら良かったのに」
母さんが少し呆れながら濡れタオルを交換していた。
「そういう訳には……ゴホッゴホッ。今はルシェネも居るのにすまねぇ」
ラウドは見た目に寄らず体が弱いのかも知れない。
父さんと母さんの寝室は二階にある、にも関わらず一階のベットで寝ているのはしっかりとした理由がある。
寝室にはライラス家の天使こと俺の妹のルシェネが眠っているからだ、まだまだ産まれたばかりなのにラウドの風邪をうつすわけにはいかない。
眠っている姿は天使そのものでほっぺを指で軽く突くとプニプニとしていてとても可愛い。
俺は重度のシスコンなのかもしれない。
妹に嫌われないように心掛けよう。
「エシャさん遅いわねぇ、何かあったのかしら?」
エシャさんはクロット村唯一のお医者さんで村の皆からはエシャばあちゃんと呼ばれている。
ラウドが帰って来るタイミングで呼びに行ったら、準備してから行くから先に帰るようにと諭された。
エシャばあちゃんは結構なご老体だし前見た時は杖ついてたからもっと遅くても不思議じゃないけどな。
コンコンコンと家の扉を叩く音が聞こえた。
噂をすれば何とやら。
「待たせてすまないねぇ」
「いえいえ、来てくれてありがとうございます。 でもどうしたんですか? いつもなら杖を投げ捨てて走ってくるのに」
え? 何言ってんの母さん!? あの見た目だぞ!? 走れる訳が――
「いや、薬屋経由して走っては来たんだよ? それが肝心の薬が無くてねぇ困ったものだよ」
「確かに、前に見た時も在庫少なかったですね。風邪薬に使う薬草も今はあまり採れないですし困りましたね」
あのばあさんホントに走ってきたの!?
しかも結構遠い薬屋経由して!?
このばあさん何者なんだよ!?
とか内心驚きつつも一度冷静になる。
まぁ、この世界の人皆おかしいからこれが当たり前なんだろう、きっとそうだ。
ラウドなんか剣降っただけで紫色の雷出てたし。
「昔は翼竜より速く走れたのに……はぁ、老いを感じるよ」
うん。多分だけどおかしいのはエシャばあちゃんの方だ。
諦めて本題に戻ろう。
「近くの町や村には風邪薬置いて無いんですか?」
「あるにはあるんだけど、道中はモンスターも出るからねぇ。行ける人がいないんだよ」
隣町が森の反対側にあってもモンスター出てくるのか。
エシャばあちゃんはご老体だし、村の人で戦える人は少ないし、母さんはつい先日までは妊婦さんだったし、こういう時の戦闘要員のラウドは風邪でダウンしている、八方ふさがりだな。
ん? ちょっと待てよ?
つまりだ、隣町まで薬を取りに行けるのは戦闘が出来て、隣町まで行ける体力が有って、今から動ける暇人だけと言う事……それって俺じゃねえか。
「母さん、モンスターと戦えて今から動ける人がいればいいんでしょうか?」
この世界にきてからまだこの村の事しか知らないから他の町が見れるなら見てみたい!
この村を見ればそれなりの文明が分かるがやっぱり町が見ていたい!
「そんなに都合がいい人はいないわよ、しかたないけど私が行くわ」
「ダメだエレカ! 今は体を休めるべきだ!」
父さんが必死に母さんが行くのを止めた。
「私が戦えるのはラウドが一番知ってるでしょ?」
「それでも今は本調子じゃないだろう! エレカが行くなら代わりに俺が行く!」
いよいよ本末転倒になって来た、ここで息子の成長具合を見してやろう。
「薬を取りに行くのは僕が行きます! 僕ならモンスターとの戦闘も少しなら出来ますし、そこそこ体力もあります! 地図さえあれば今日中には取って戻って来れます!」
「さっきも言ったけどモンスターも出るの! ライラスはまだ五歳、もしモンスターにでも遭遇しちゃったら危険よ」
「最近、力神流が初級になりました! 魔術は教本に乗っている基本属性と治癒魔術は中級まで一通り使えます! それに体力にも自信があります、お願いします! 行かせてください!」
「でも……ラウドはどう思う?」
「ライラス、俺の事をそんなに思ってくれていたのか! ゴホッ!ゴホッ! 母さん、ライラスなら大丈夫だ! 俺が保証する」
ラウドの為でもあるがどちらかと言えば他の町に行ける方が楽しみだ!
九対一ぐらいの割合だ。
え? どっちが九でどっちが一かだって?
そんな野暮な事は聞いちゃだめだ。
「まぁ、ライラスなら多少のモンスターくらいなら倒せるかも知れないけど……」
ダメだ、あと一押しで許してくれるのに。あと一押しが足りない!
必殺のキラキラ上目遣いでアピールして見る。
「んー……それじゃあお願いしようかしら。でも一つ約束してね。危なくなったら直ぐに帰ってくる事。分かった?」
「はい‼」
俺が隣町に行く事が決まってから自室に戻って準備を始めた。
準備と言っていつも通りにこしに杖をさして、お母さんから薬代のお金お貰ってお終いだ。
「今から言う事はしっかり守ってね! モンスターに会ったら逃げる事、財布は随時確認すること、寄り道はしない事! 路地裏には入らない事! 怪しい人にはついていかない事! それから――」
「母さん! もう五歳です! 買い物ぐらいはできます!」
「まだ五歳なのよ! ホントだったら行かないで欲しいんだから」
「しっかり言いつけは守ります! だから安心して待っててください!」
母さんはかなりの心配性だ。
流石におつかいの一つが出来ないわけがない。
いや待て、これフラグってやつだ。
まぁ『これ終わったら結婚するんだ!』とか言ってないし大丈夫か。
「では、行ってきます」
「いってらっしゃい、本当に気を付けてね」
母さんに自分の子供が出来る子だって所を見して上げよう。
親孝行は子供の内からしていても足りないからな。
扉を開けると村に続く道から見知った顔の少女が歩いて来た。
こちらに気づくと手を振りながら笑顔で走ってきた。
「おはようライラス! あれ? どこかに行くの?」
「あぁ、今日は隣町まで薬を取りに行くんだ。だから一緒には――」
「それなら僕も一緒に行くよ‼」
うーん。
どうやって断ろうかな。
読んで頂きありがとうございます!
投稿少し遅れました!
すみません!
次話の投稿、楽しみにしていてください!!!




