六十話 フィオラは強い子
妹のルシェネが生まれてから一週間がたった。
最近は父さんが慌ただしくオムツを変えようとして転んだり、母さんがミルクを上げすぎたか心配ばかりして父さんと俺のご飯の量まで少なくなったりする、なんてことは無くなった。
俺の時もそうだったけど二人目なのに子育ては全然慣れないみたいだ。
そういうもんかな? と疑問に持ちつつもオムツの交換や家事の手伝いをいつも以上に頑張っている。
フィオラもよく手伝ってくれるようになって母さんもだいぶ楽が出来ている。
フィオラは家でも家事の手伝いをよくしているらしくて俺よりも手伝いが上手いし早い。
流石に、一人で洗濯籠に背丈と同じ高さまで積みあがった洗濯物を運んでいた時は慌てて助けに行ったりした、頑張り屋さんだけどたまに無茶をするのはいただけない。
ちょっとぐらい俺を頼ってもいいのにな。
まぁ、そんな感じで子育ては家族揃ってするのが一番いいと思う。
日本に居た頃は結婚が人生の墓場だとか子育がてつらいとか耳にしていたけどそれは間違いだなと父さんと母さんを見ていれば分かる。
いや、確かに墓場って本気で思ってる人はいるのかも知れないけど、今一度自分の本当に大切な物を見直してみて欲しいと思う。
この一週間の間に色々あった。
《六日前 騒動が起こった次の日》
騒動があった次の日、つまり今日カルロスがお母さんと揃って家に来た。
その時、フィオラも家に居てカルロスを見た途端に肩をビクッと震わせていた。
俺の背中にフィオラを隠して、カルロスを睨みつけた。
謝るべきか、謝らないでいようか考えた。
間違っているのはお互い様だ。
お互い暴力を振るった、俺はカルロス達にカルロスはフィオラの体と心に。
その短い思考の間も常に震えた手で俺の袖を力強く握ってい居るフィオラの事を考える。
気持ち的には謝りたくない、でも謝るのが大人の対応なのかな、と色々考えているとカルロスのお母さんがカルロスの頭を小突いた。
「何黙ってるんだい! さっさと謝りな!」
「いてぇよ母ちゃん! 分かってるって!」
あれ、思っていた感じと違ってずっと良心的なお母さんだ。
もっと、『家のカルロスに何してんのさ!』みたいな感じで来るのかと思ってびっくりした。
いじめっ子はお母さんに弱い者なんだなと国民的アニメが教えてくれた。
「ほ、本当に悪かった、すまん」
「俺じゃなくて謝るならフィオラに――」
「――それが人に謝る態度なのかい! それに謝る相手も間違えてるんじゃないか!」
またカルロスがお母さんに小突かれた。
「だから、痛いって!」
なんか、ほんとにジャイ〇ンの家みたいだなと思って毒気を抜かれてしまった。
カルロスがフィオラの方を見て謝ろうとするが肝心のフィオラは俺の後ろから前に出ようとはしない、いや怖くて出てこれないんだ。
カルロスのお母さんが俺の前まで歩いてくる。
少し屈んで話し始めた。
「フィオラちゃん、家のカルロスのせいで嫌な思いさせてすまなかったよ、こうなったのは全部私の責任だ。許して上げて欲しいとわ言わない、ただフィオラちゃんにした事に謝罪だけは聞いて貰っていいかな?」
ずっと下を向いてたフィオラはカルロスのお母さんの目を見てコクリとだけ首を縦に振るった。
「ありがとう、フィオラちゃんは強い子だね。 カルロス!」
名前を呼ばれてカルロスのお母さんの隣まで歩いていく。
「本当に、本当にすまなかった! もう関わらない様に皆にも伝えるし、近くも歩かない! だから――」
「――もういいよ」
カルロスの謝罪を遮る様にフィオラが言葉を発した。
カルロスは謝罪をさせて貰えなかったと思って辛い顔をした。
悪い事をして罰が受けれないのは罪悪感で押しつぶされそうになる。
カルロスのお母さんも息子が謝れなくて少し辛そうな顔をした。
でも、俺はフィオラが強い子だとしみじみ思った。
俺の袖を震えながら握っていた少女はもういない。
「確かにいじめられてた時は凄く辛かったよ。 でも僕にはライラスが居てくれた。それにカルロス君が嫌いになり切れなかった、だからさ関わらないなんて言わないでよ。もう謝らなくてもいいし、村で会ったら挨拶してさ……これからは普通に友達になれないかな?」
「え……」
カルロスは勿論、カルロスのお母さんも呆気に取られていた。
俺はフィオラの成長が何故か自分の事の様に嬉しくなった。 どうだ、驚いたろ! これが俺の親友だ。
「だめ……かな?」
「え、えっと。その……」
いきなりモジモジし始めたカルロスをお母さんが嬉しそうに背中を叩いた。
「あんた、男ならシャキッとしな! あんなに女の子がカッコいい事言ったんだよ!」
カルロスは意を決したようにフィオラの方を見る。
「わかった! 今日から友達だ! よろしくフィオラちゃん!」
「うん! よろしくね、カルロス君!」
これにて一件落着だな。
子供の喧嘩は悪い事したら謝って仲直りするのが一番だな、としみじみ思った。
「それじゃあ、今日は帰るよ。本当に悪かったよ」
「も、もう謝らなくていいですよ!」
カルロスのお母さんはハハハと笑いながら帰ろうとした時だ。
「すみません、カルロスのお母さん!」
「カルロスあんたは先に帰りな。 君はライラス君だね、その年でカルロスに喧嘩で勝てるなんて凄いね、家の子の悪さを止めてくれてほんとにありがとう。 それでどうしたんだい?」
俺は最初に思った疑問を聞いみる。
「どうして、俺を責めないんですか?」
「カルロス達が年下の子としかも多対一で喧嘩したって聞いて直ぐに駆けつけたんだ。 相手に怪我なんてさせたら大変だからね、でも聞いてみると負けたって聞くじゃないかそれも手も足も出なかったらしいいし。それなのにカルロス達の怪我が最小限に抑えられていて血が出てた所の怪我も治っていた、君がライラス君が直してくれたんだろう?」
「僕の母さんかも知れないじゃないですか」
「君のお母さんには何度も怪我を治し貰ってるから分かるよ。 エレカなら完治してくれる、でも数か所は継承で済んでたけど完治はしてなかったからね、それでピンと来たんだよ」
「まだまだ、未熟って事ですね」
「それに、手加減してくれたんだろう? エレカから聞いた話だとかなり強いって聞いていたからね。フィオラちゃんもだけど君も強いね、心が、家の子にも見習って欲しい物だよ」
「ありがとう……ございます」
「今後とも家のカルロスをよろしくね! 悪さをしてたら特に、ね」
「はい、確かに任されました!」
その後は頭をワシャワシャされてお母さんも帰って言った。
ふぅ、と一息ついてフィオラの手を取って庭に戻った。
《六日後 現在》
なんて少し前なのに昔の様に思いだしているとフィオラに声を掛けられた。
「ぼーっとしてどうしたの?」
「なんかさぁ、フィオラに友達が増えたのは本当に嬉しいけど、フィオラの唯一の友達じゃなくなったのはなんか寂しいなぁ、と思ってさ」
なんて、軽口をたたいていると。
「もぅ、何言ってるのさ。 ライラスは僕の唯一の親友だよ!」
「フィオラ……」
「な、なんで何も言わないでじっと見つめてくるのさ! 結構今の恥ずかしかったんだから‼」
「いやぁ、しみじみと俺って良い親友を持ったなと思ってさ」
「もぅ、今日のライラスは何か変だよ! はやく魔術の勉強しよう!」
「あぁ、そうだな」
そうして魔術教本を開く。
変わらない日常。
いや、大きく成長を遂げたフィオラと一緒に過ごす日常は最高に楽しい。
読んで頂きありがとうございます!
これにてフィオラのイジメ問題も華やかに解決されました!
今後、ライラスとフィオラの展開はどうなるのでしょうか!
乞うご期待!!!
次話の投稿、楽しみにしていてください!




