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新たな世界で最高の人生記録!  作者: 勇敢なるスライム
第1章 幼少期
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五十七話 人はそんなに変わらない

 紅茶を一気に飲み干してから直ぐに意識が遠のいていく。

 目を閉じる前にシャルが私を呼んでいる気がした。


 なんだろうこの感じ、前にもどこかで……



【数年前の無法都市ミルウェー】

 店の扉を開けた瞬間店中に響くうるさいぐらいの鐘の音、その直後四方八方から矢に槍に剣に鉛、時間にして数秒の間攻撃が炸裂した。

 持っていた愛刀(師匠から貰った業物)で捌き斬る。

 たまに矢が皮膚を霞めるが致命傷になる攻撃は全て防いでいた。


 縦横無尽に降り注ぐ攻撃の最中、道中で地図片手に情報通りの場所と目印の店に入った途端これだ。

 全ての攻撃が止んだかと思って気を抜いた隙にさっきまで視界に無かったはずのナイフが飛んできた。

 いきなりの出来事に悔しくも一撃肩に良いのが入った。


 久しぶりに感じた体への痛みに懐かしさを覚えるも急激に体の自由が利かない。

 神経毒かッ! そう思った時にはもう遅い、足の力は抜けていき意識が遠のいていく。

「チッ! これだから腐った街はッ!」


 意識が遠のく手前に男の声が耳に響く。

「何なんだよコイツ、化け物かよ」


 次に目を覚ました時には寝心地の悪いソファーで目が覚めた。

 硬いソファーで長い間眠っていたからだろうか背中がズキズキと痛む。

 重く鈍い体を無理やり起こしてから気づく。

 体に薄いシーツの様な物が掛けられていた。

 もしかして、掛布団のつもりだろうか だとしたら一体誰が、何のために?

 シーツがはだけると自分の上半身が露になっていた事に気づき直ぐにシーツを拾い体を隠す。


 曖昧な記憶を辿って眠った経緯を思い出す。

 周りは見たことのない部屋で物が所かまわず散りばめられている。


 重く鈍い体に号令をかけて立ち上がると肩がズキンと痛む。

 そしてその痛みで全てを思い出す。


「ッ!」

 そうだ店に入るといきなり攻撃されて!

 すぐさま警戒態勢に移り腰にあるはずの剣を掴もうとして失敗する。

 剣が無い事に焦りはしたが生憎周りには人がいない。


 部屋を歩いて物色していると又も肩がズキリと痛む。

 無理もない神経毒付きのナイフが深々と刺さったんだからな。

 と思い、肩に手を触れると皮膚を触った実感が無かった。

 シーツを軽く捲り肩を見てみるとナイフが刺さった所には包帯が巻かれていた。

 それに包帯が少し濡れている事にも気づく。


 包帯からはキツイ匂が鼻を襲う。

 この鼻を襲う独特のキツイ匂は確か毒の治療に使われる一級品のイーミル草だったはず。

 またもや「何故?」と疑問が浮かぶ。


 部屋の端に地下に続いているであろう階段の方から金属音が少しした。

 何故かは分からないがエルトリスは警戒心を解いて階段をゆっくり下りて行く。

 階段の先には一つの部屋があって扉が付いていた。


 扉が少し開いていたので中を覗いてみると音の正体が分かった。

 音の正体は剣を研ぐ音だった。

 一人の男性が熱心に剣を研いでいた、研いでいた剣は私が師匠か譲り受けた業物だった。


 扉を押すとキィーと軋む音を立てながら扉が開いた。

 すると剣を研いでいた男がこちらに気づきつつそのまま作業を続けた。


「ようやくお目覚めか、もうちょっとで終わるからそこらで待っときな」

 無警戒でそう言われて警戒していた自分が少し馬鹿らしくなり男の近くに合った椅子に座った。


「どうしてだ」

「ん? 何が?」

 男はとぼける訳でもなく研磨しながらも淡々とそれが当たり前と言わんばかりに聞いてきた。


「どうして私を助けた、お前が私を助ける理由が無い」

「俺もこんな腐りきった街に長いくいるが人助けをした事なんてこれが初めてだよ。理由は俺が聞きたいぐらいだね」

「おかしな奴だ、色々聞きたいことがある。後で聞かせて貰うぞ」

「あぁ。分かったからこれが終わるまでは大人しくしとけ」

 そういいながらもまた淡々と私の愛刀を磨く。


 それから少しして男が「よし」と言って剣を投げてきた。

 それを片手で受け止めてから斬ってみろと言われてすぐに小さな丸太が飛んできた。

 ワンテンポ遅れてから言われた意味に気づきすぐさま剣を振るう。


 いつもなら自分の技術と力量で無理やり斬っていたが神経毒が完全に抜けきっていない状態では無理かと思ったが前よりも軽々と丸太を切り伏せた。


「どうだ、凄いだろ」

 男は嬉しそうに笑顔で聞いてきた。

「あぁ、良い腕だ」

 この時のキツイ性格だった私も珍しく少し素直になった瞬間だった。


 これが私とカルガーが初めて会った日の事。

 武者修行していた時代に訪れた店の名前は【情報屋カルガー】

 この街の情報屋の中でもトップクラスの情報屋だ。

 表向きはただの小さな家で表札を置いている訳でもない。


 知る人ぞ知る優秀な情報屋なだけあって知ってるだけで死罪になるような情報だって蓄えている噂もあり、暗号を知らない奴が入れば必ず死ぬ。

 はずだった……エルトリスが来るまでは。


 ーーーー

【現在の無法都市ミルウェー】


 背中の痛みで目が覚める、体制が悪かったせいだろう。

 体に掛けられている薄っぺらいシーツも変わってないなと思いつつソファーに置いて辺りを見回す。

 大量の荷物が雑に置かれていて部屋が狭く感じる。


 入り口の方の部屋に顔を出すが誰もいない、という事は二人そろって地下の工房に居るに違いないと思って階段を下りる。


 昔に聞きなれた剣を研いでいる音と共に何やら賑やかな話声が聞こえてきた。

「えぇ⁉ あの師匠がそんな事を⁉」等と扉の奥から聞こえてきた。


 今回は隙間から除かずに扉を押す。すると昔と変わらずキィーと軋む音が工房に広がり中で談笑していた一人の少女と一人の男性がこちらを向く。


 金髪の少女が目を輝かせながらこちらに駆け寄ってきた。

「師匠! おはようございます! お体の具合はどうですか?」

「あぁ。特に問題は無いよ」

 そう言って弟子の頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めて「んへへ」と笑顔になった。


「エルトリス、本当にやばかったんだからなぁ。その娘、お前がぶっ倒れてすぐに俺に真剣で襲い掛かってきて弁明しながら攻撃防ぐの大変だったんだぞ」

 と言いながらも笑っているカルガーを見て私も頬を緩める。


「そ、その節はホントにすみませんでした‼ 紅茶飲んで直ぐに倒れたのでつい!」

 カルガーの方を向いて深々と頭を下げるシャルとカルガーを交互に見て、笑う。

 カルガーはやれやれと言わんばかりに首を左右に振っていた。


「それで調子は戻ったのかよ、エルトリス」

「うん、おかげで本調子だよ。やっぱりカルガーにはバレてたのかー……」

「あったりまえだろ、流石に長い間お前といれば分かるよ」


 会話内容がいまいち理解できてなかったシャルが間髪入れずに聞いてきた。

「どういうことですか?」


 すかさずカルガーが答えようとするのを手で止めようとしたんだけどそれを無視して答えた。

「お前さんの師匠はな、ここに来るまでの間たぶんほとんど寝てなかったんだよ」

「え? そんなはずは……確かに師匠は眠っていました」


「コイツはなお前が起きる数分前に寝てたんだよ、それまでずっと起きてたんだよ。この周りは治安が恐ろしく悪いし騎士達もいないから寝てる間に襲われたらお終いだからな」

 軽く絶句しているシャルリアをよそにそのまま話を続ける。


「だから俺がハーブティーと一緒に軽い睡眠導入剤を入れたんだ。結果はシャルリアちゃんが見た通りだ、一瞬で寝るくらいには疲れが溜まってたんだよ。だからあんまり師匠に気を遣わせるんじゃねぇよ」


 それだけ聞くとシャルリアは走って階段を上って行った。

「安心しな、外には出ないはずだ」


「だから言わなくても良いって止めたのに」

「お前、ダンジョンでの出来事忘れたとは言わせねーぞ。 あん時は運が良かったから生きてたけどなぁ、寝ずに見張りずっとしててモンスターの前でぶっ倒れられたらたまんねぇぜ」

「それは……分かってるよ」

「ちっとばかし弟子を信じてあげろ。分かったな?」


 エルトリスはバツが悪そうに無言で首を縦に振った。

 その後にシャルリアを追って階段を上がった。

 カルガーはエルトリスの背中を見ながら小さな声で「ほんとに成長しねぇな」と呟いいてまた愛刀(軍霊刀ホムラ)を研いだ。


読んで頂きありがとうございます!


一日一話掛けたらいいなぁ、と思っています!

次話の投稿、楽しみにしていてください!!!

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[一言] この物語は読んでいて、楽しい。
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