五十二話 魔力の制御は難しい
透き通る緑髪に輝く翡翠色の眼を持つエルフの少女はとある事情により友達の家でお風呂に入る事になった。
二人が風呂から上がった後に俺、フィオラ、ペコの二人と一匹で庭に出て魔術の練習をしていた。
練習したのは主に二種類、フィオラの得意魔術の水と風だ。
フィオラは飲み込むのが早いから新しい魔術も案外あっさり使えるようになる。
俺が手こずっていた土魔術も難なく使えるようになっていた。
そこで今からは新しい魔術を覚えるのを一度ストップして魔力の制御の練習だ。
「フィオラ、魔術は簡単に人を殺めれる大変危険な代物だ」
(魔術教本参照)
普通なら中級魔術程度なら最悪のケースでも軽いけがで済む。
上級は使い方次第で普通に殺せる。
フィオラは水と風においてはその普通から外れる。
このまま中級魔術をほいほい教えていてはフィオラが使い方を間違えてしまう可能性が大いにある。
今は被害者が俺だけだがもし普通の人とかに打ってでもすれば……その先は考えたくない。
「そこで今日からはいつもと違うトレーニングをする、魔力の制御が出来るようになる練習だ!」
「う、うん! 魔力の制御ってどうするの?」
「たぶん見た方が分かりやすいかな、ちょっと見ていてくれ」
そう言って俺は手を開いて久方ぶりに詠唱を唱えて拳サイズの水の球体を出した。
「このウォータボールは魔術教本に乗っている普通に詠唱した場合の標準サイズだ」
「魔術は詠唱することで使う魔術の威力や大きさを自動で操作してくれる。俺とフィオラはほぼ無詠唱で唱えているから魔術のサイズや威力は自分で操作しないといけない分詠唱するよりも魔力を大きく消費しちゃうんだ、その分威力やサイズを上げるのは慣れてくると自由自在に出来るようになる」
まぁ、雄弁に語っているがこれは父さんから聞いた話だ。
「俺は最近少しずつ出来るようになってきたが……こんな感じにそれなりに操れる」
そういって手のひらでプカプカ浮遊している水の球体に魔力を込める。
そうすると水の球体が大きくなったり小さくなったりしている。
「す、すごい!」
「フィオラ、試しに中級魔術のウォーターボールを唱えてみてくれ」
「い、いきなり言われても僕使えないよ」
大丈夫だ、と言い聞かせて魔術教本の中級編が乗っている所のウォーターボールの項目の所を指さす。
フィオラが魔術教本を見ながら決意を込めてゆっくりと詠唱を始める。
詠唱を終えると右手に拳ぐらいの標準サイズの水玉が現れた。
「できたよ! ライラス!」
フィオラなら出来るかも、ぐらいで提案したのにまさか一発で成功するとは思ってなかった。
俺はフィオラに魔術を教えている合間に少しずつ練習してようやく出来るようになったのに。
やっぱりフィオラの才能は凄いな。
フィオラに円滑に教えてあげるためにも俺がしっかりしておかないと。
「それじゃあ次は無詠唱で唱えてくれ」
「わかったよ!」
最近では一度唱えるともうすでに無詠唱が出来るようになってきた。
最初こそ無詠唱のコツを掴むのに手こずったが詠唱に慣れる前に無詠唱に慣れたからか楽に詠唱を飛ばせるようになってきた。
まぁ、無詠唱は便利だけど魔力消費量が凄くてコスパは悪いけど
意気揚々と右手に魔力をこめフィオラの手からかなり大きめの水の球体が出てきた。
やっぱり最近魔力が多くなってきたしフィオラは水と風が得意属性、調整が出来ないのは仕方がないと思う。
フィオラの手には俺の顔くらいのサイズはありそうだ。
「えぇ⁉ どうしてこんなに大きくなってるの⁉」
「それの大きさを自由に変えれるように練習すれば自然に出来るようになるよ」
腕がぷるぷる震えるぐらい力を入れていたしフィオラは無意識に魔力を込めすぎているのかも知れない。
魔術の威力やサイズ、速度何かを変えるのは大きくするのも小さくするのも魔力を大きく消費する。
最初に魔術を作った人は頭がおかしいくらい頭が良かったんだと思う。
最初、詠唱は時間がかかるだけで無駄だと思ってた。
無詠唱で使ってみてから分かったけど一番コスパが良くなるように設計されていた。
詠唱は一見無駄だと思うけど威力やサイズを最大限活用できるように詠唱をすることで調整しているんだと思う。
詠唱を少し短くするだけでかなり魔力を喰われるからな。
初めて魔術を使っていた頃に魔力を一瞬で消費していたのは詠唱をしていなかったからだったのかと最近になって分かった、魔術は新しい発見が多くて楽しい。
学校行ったり家庭教師とかいたらもっと楽に知れるかも知れないが今は謎解きしてるみたいで楽しいから当分の間は我流で行こう。
フィオラ、試しにしそれを小さくしてみてくれ」
そう言いながら俺がさっきと同様に実演して見せる。
それを見たフィオラが胸元で両拳を握って『よし! 頑張るぞ!』 と気合を入れていた。
右手に浮いている水の塊を凝視しながら魔力を込める。
少しするとみうの塊がプルプルと震えだして……パァンと音を立てて破裂した。
「うわぁ!」
フィオラがいきなりなった音に驚いて尻もちをついた。
少しの間目をパチパチと瞬きをした後に少し口を尖らせる。
「むぅーライラスは簡単に出来てたのにー!」
「俺だってかなり時間かかったからな。とりあえず! フィオラはこれが出来るまで中級魔術の練習はストップだ!」
「じゃあさ! じゃあさ! 出来るようになったら!?」
「じゃんじゃん新しい魔術を勉強していこう!」
「うん! 約束だからね!」
ーーーー
あれから約一~二時間が経過した。
天気は相変わらずの快晴、周りの芝生は水が滴っていて気持ちよさそうに風になびいている。
え?なんでずっと快晴なのに芝生が濡れているかだって?
それは……
「っん!」
目の前にいる少女が息を荒くし、ヘトヘトになりながらも懸命に力を込める。
「えーい!」
少し込める……特に変化は無い。
「やぁー!」
もう少し込める……するとサイズは変わらず変わりに水の塊がプルプルと震えだす。
それを何度も見ていてこの後どうなるかを理解している少年は何故か耳に手を当てようとする。
「とぉりゃー!!!」
その掛け声の直後、少年の予想は的中した。
しかし耳に手を当てる前に大きな破裂音が鼓膜に響いた。
「も、もうだめぇー」
少女は足に力が入らないのかその場にへたり込んでしまった。
少年は家から持ってきたコップを『お疲れ様』と言って手渡す。
コップの中に入っていた水をゴクゴクと飲み『ぷぅはぁー』と飲み干してコップを持った手を膝の上に置いた。
「えへへ、ありがとう」
「疲れただろ、今日はもうお終いにしよう」
「うん、そうするよ。かなり疲れ――」
その言葉を言う前にフラフラと揺れて少年にもたれかかる。
「おい! 大丈夫か! フィオラ!」
慌ててフィオラの型を揺さぶる。
息をしているか確認すると『すぅーすぅー』と可愛らしい呼吸音が聞こえてきた。
顔を見る限り苦しそうでも無い、単に疲れて寝ているだけの様だ。
肩にもたれ掛かっているフィオラの顔を膝の上にゆっくり丁寧に運ぶ。分かりやすく言うと膝枕だ。
すると何か寝言を言っているので耳を傾ける。
「んぅー……ライラスぅー……むにゃむにゃ」
何だこの可愛い生き物は!?
フィオラの前髪を掻き分けて頭を優しく撫でる。
フィオラが起きるまではこうしておこう。
それを見ていたラウドとエレカは二人の微笑ましい光景を見て二人で笑いあった。
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