四十四話 カイロウ家の闇
貴族達が開くパーティーは少数の貴族だけで行われ、小規模な物で手短に契約や取引する時、又は知り合いの貴族との親睦を深めるために開催される。
しかし王族の人間が開くパーティーではその規模も理由も大きくなる。
初めて会う他の貴族と中を深めたり、逆に中の悪い貴族の情報を得たりする為に、そして王族との関係性をきずくため。
これはエルトリスが幼きながらに教えられた英才教育の一つ。
基本的にエルトリスは貴族や王族が嫌いだ。
世界に名を連ねるエルトリスも表の顔がありカイロウ家の様な上級貴族達や王族とも面識があり何度も茶会やパーティーに招待もされている。
エルトリスは他人の嘘が直感だが分かる事が出来る。
笑っている貴族を見ても内面でお金儲けができるか、味方か敵か、利用できるか否か、そんな嘘と真実が飛び交う人たちを子供の頃散々見てきているからこそ、その笑顔が偽りか真実かが分かる。
貴族や王族が嫌いなのも、人の嘘が見破れるのも全ては子供の頃、王家で味わった家庭環境の影響だ。
エルトリスは第一王女としての人生があった。
期待と裏切りに満溢れていた人生だ。
そして第一王女に課せられた圧倒的期待に答えられず両親に見放され捨てられる前にその国を、立場を捨て剣術の道を歩んだ。
それが二つ目の、今のエルトリスの人生だ。
幸い剣豪のエルトリスと元第一王女のエルトリスを同一視するものは現れず、存在事態を子供の頃に消されている王女エルトリスの存在を知るものは両親と一部の剣客を含めて知るものは居ない。
そしてエルトリスが生まれ育った国と自分を捨てた両親から私の事を知っている剣客達を陰ながら証拠隠滅しているに違いない。
もうあんな国に行くことは無いので清々はするが残してきた私と十歳近く離れている妹の事が少し心配だった。
あの子なら問題なく過ごしていると思う、もしかしたら回りから持て囃されて私が思っている以上に快適に過ごしているかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると大きくて広い橋が視界に入ってきた。
少しの不安と緊張が押し寄せる中、エルトリスとシャルリアは王城に続く橋の前にある検問所で手紙と一緒に渡された招待状を渡し中に入る。
一応私は普通の冒険者として呼ばれてはいるが王族が開いたパーティーに私の事を知っている人がたくさんいるに違いない。
少なくとも今回問題になっているカイロウ家の党首、この国の王様とは幾度か面識がある。
私の名前を聞いて剣豪のエルトリスと冒険者のエルトリスが同一人物だと気付いているかもしれない。
普通、何もない冒険者が少し事件に関わったからといって王様主催のパーティーに招待したりはしない。
一応、剣豪エルトリスとしての立ち振舞いをしておこうと準備をしていた。
それと対照的に期待とドキドキでいっぱいいっぱいのシャルは違う意味で緊張していた。
子供の頃に憧れたお姫様や貴族達の優雅なパーティーに自分が居る事に違和感すら感じているとさっき言っていた。
パーティー会場に行く前に先に個室で待機するように言われたのでその個室で待機している。
待機している時にシャルが凄くソワソワしている。
「さっきも言ったけどシャルだって十二分に可愛いし問題ないよ」
シャルは少し臆病だし自分に自信が無いから心配ばかりしている、さっきから場違いじゃないですか?なんて言葉を立て続けに聞いてくるぐらいだ。
「そ、そう言っていただくのはうれしいですけど……やっぱり不安です」
もう少しでパーティーが始まるのに全然緊張が収まらないな。
「シャルは私の事信用してくれる?」
「それは当たり前です!師匠は私の全てです!優しくしてくれます、私が知らない事も色々教えてくれます、何より身寄りのなかった私を引き取ってくれてしかも弟子入りまでしてくれて私を強くしてくれました!」
「わ、分かったから。いったん落ち着いて!」
まさかここまで熱が入って言われると思わなかった。
しかもストレートに言って来るから少し恥ずかしいし。
「私はね、短い間だったけど色々な所を旅してきたんだよ、その中でたくさん美人な人にも可愛い人にもあってきた。それを見てきた私が行ってるんだからさ、自信持っていいんだよ!」
今言ったのは嘘偽りのない真実だ。
それぐらいシャルは可愛いし大きくなれば美人になる。
そ、それに胸だって私より……
エルトリスは他人に自慢できる程胸が無い。
そんなエルトリスも全く無い訳じゃない、しかし少し、ほんの少し、いや! かなり気にしている。
子供の頃に剣術には不要だと思って言い聞かせてきた、それに大人になれば自分だって大きくなるはずと希望を抱いていた。
最近、自分が子供の時と今のシャルを比べた時に自分が劣っている事に気づいてきたのだ。
道で通りすがっただけで男女問わず目で追われるくらいにはプロポーションはいいエルトリスだが胸にだけ自身が無い。サイズで言えば普通ぐらいなのだがエルトリスの師匠もまた女性なのだが大きさが桁違いだったからこそコンプレックスを抱いている。
シャルと今の自分を見比べて見て少し残念がっていた時にパーティー開始時間より少し早めに部屋の扉に三回ノックが聞こえてきた。
エルトリスが扉を開けると突如、フードを被った何者かにナイフで刺されそうになる。
「シャル!敵襲!」
少し同様はしたが咄嗟にシャルに報告しつつナイフを持っている手首を掴み内側に捩じりナイフを離させる。
その後すぐに足払いし地面に叩きつける。
犯行出来ないように右腕の関節を外すしてフードを剥がす。
悲鳴が聞こえてきて痩せ焦げた男の顔が露になる。
敵襲と聞いたシャルは一瞬慌ててから机に置いてあった自分の剣を取り出し常人では考えれれない速度で移動し逃げられないように男の足に剣を突き立てた。
そしてまた男の悲鳴が聞こえる。
敵襲から捉え動けなくするまでの間は刹那だった。
見た感じだとこの男は暗殺者だ。
一体だれが差し向けてきたか分からない。
王様が証拠隠滅で差し向けたと考えてもいいがたぶんまず無い。
王様とは面識がありそれなりに仲もいいと思っている。
この国に来た時には諸事情で正体を隠していたが、流石にこの前の地下水道の一件で王様や一部の貴族にはばれていると思っているからだ。
私の正体を知っている者ならこんな素人の暗殺者を送り込んだりはしない。
もしかして無差別に襲っているんじゃないかと思う。
そしたら王様が危ない。
いや、王様の周りは王国随一の騎士が何人も守っている生半可な戦力じゃまず勝ち目が無い。
なら他の護衛の少ない貴族が危ない。
一応コイツに尋問してみる。
暗殺者なら絶対に何を聞いても言わないがコイツは素人だから言うかもしれない。
それにさっきから痛みでうめき声を上げている。
「さぁ、何で私達を襲ったのかな?言わなきゃ……分かるでしょ?」
ドレスに隠していたナイフを首元でチラつかせながら脅しを掛ける。
「ひぃっ!分かった、分かったから、全部話すから殺さないでくれ!」
「話が早くて助かるよ。で、誰の命令?仲間は?あと目的は?」
この男は暗殺者だと思っていたけど違った。
ただ雇われただけの子悪党だ。
それだと楽で非常に助かる、ただの子悪党は自分の命が最優先だし死に対して恐怖の感情が強い。
脅しただけでペラペラと色々話してくれた。
そして話を聞いて驚愕した。
にわかには信じられないが嘘をついているようにも見えない。
コイツの雇い主はこの国の中枢を担う大貴族、カイロウ家の当主だ。
そう、この前の地下水道で魔王軍幹部の一人、闇魔帝のシャミルと結託しスケルトンを大量に作りクーデターを起こし、国を乗っ取ろうとした主犯格カイロウ・オスカーの実の兄カイロウ・ダウアスだ。
これは話がややこしくなってきちゃったよ……。
読んで頂きありがとうございます!!!
あと数話で一旦シャルリアパート終わりにしてライラスたちの話に戻す予定です!
次話の投稿楽しみにしていてください!!!




