四十一話 ギルドの優しい人たち
《エルトリス目線》
エルトリスは倒れた後シャルリアの助けによってギルドの客間まで運ばれていた。
幸い怪我はなく暗い所に長時間居たのと魔力で高度が強化された壁を集中力をかなり使う【紫電一閃】で切断した後に魔族の骨で作ったスケルトンの二連戦、そして〝六魔帝〟と名乗る魔王軍の幹部と思われるシャミルとの戦闘。
これだけ色々あれば流石に疲れる。
辺りを見回して見る、多分ギルドの個室に運ばれたと思う。
「シャルには迷惑ばっかりかけてる……後でお礼言わなくちゃ」
思う所はあるけどとりあえずシャルには迷惑かけたし早めに探そうと決意を胸に外されている装飾品やら武器やらを付けなおそうと思った時に気づいた。
「あれ!?武器が無い!」
少し慌てて辺りを見回した後に思い出す。
たしか戦闘で両方壊されたんだった。
エルトリスは常に武器が取れる位置に無いと落ち着けない。
これは弱肉強食の世界で生きるための自衛であって冒険者などいつ危険が迫るか分からない職業の人では当たり前になってきている。
まぁブーツに隠しているナイフがあるのでそこまで重症ではないが少しだけ落ち着かない。
装飾品類を付けてさっきまで寝ていた部屋を後にする。
扉を開けると少し長めの廊下があり扉がいくつも並んでいた。
とりあえず扉には触れずに廊下の奥に進んでいく。
部屋を出る前に窓を見ていたのでここがギルドの二階だという事を確信していた。
廊下の奥にある途中で曲がっている緩やかな階段を下りて行くとエーデンス王国の王都に来てからほぼ毎日見ている景色が広がっていた。
今まで話したことのない奴も多くいるがだいたいの奴とは気軽に話す程の中にはなっている。
シャルはたぶんカンナの所だろうと思いおもむろにカンナのいるカウンターの方に歩き始める。
階段を降りると最初に厳つい顔の男と目があった。
「もう起きたのかエルトリス、倒れて運ばれてきた時はあせったぜ」
今は話しかけてきたのは見た目が完全にごろつきなのにぬいぐるみ集めが趣味のジェイソン。
ジェイソンは良く見た目で勘違いされやすいけど根は良い奴、最初私とシャルの二人でギルドに来た時心配して話しかけてきた。
最初完全に不審者だと思ったのは未だに話していない。
ジェイソンに軽く挨拶しつつもう少し進んでいると無駄にイケメンな奴と目が会った。
「大丈夫だったかいレディー?」
今話してきたのは無駄にイケメンで無駄にキザな事ばっかり言うナルシストのハンソン。
最初は貴族のボンボンが遊び気分で冒険者やってるのかと思ってたけど本当はかなり腕が立つらしい。
悪い奴じゃないけどちょっとめんどくさい人だ。
声をかけられたエルトリスは苦笑いしながら適当にあしらった。
軽く人込みをかき分け進んだ先に杖をついているおばあちゃんと目があった。
「大丈夫だったかい?心配したんだよ」
今話しかけてきたのは百歳超えてそうな見た目で杖をついてるおばあちゃんのヤッカムさん。
同性という事もありすぐに仲良くなった人だ。
いつも孫が二人増えたと言って私とシャルの事を可愛がってくれている。
お酒と世話を焼くのが好きでお酒はいつも飲んでるし私たちが困っていたらいつも気にかけてくれる。
因みに聞いた話ヤッカムさんはすんごく強いらしい。
「ありがとうヤッカムさん。もう大丈夫だよ」と言うと「ホホ」っと笑ってくれた。
ギルドのカウンターが見え始めるとそこにカンナの隣でおとなしく、そして心配そうな顔で座っている金髪の少女が視界に入ってきた。
私の三番目の弟子にして二人の弟子より才能がある、シャルリアと言う女の子だ。
これからどんどん強くなるであろう可愛い弟子をみつけ笑みが零れる。
今まで二人の弟子と同じ様にきっとまた私は追い抜かされるんだろうなぁ、と思って少し心が痛くなる。
二人の弟子は抜かされるのが怖くなり途中で投げ出したがこの子は母代わりに剣術以外の事も教えて行こうとも思っている。
手を振って名前を呼ぶと心配そうにしていた顔が一変して笑顔に変わる。
そしてカウンターを飛び越えて私の所に走ってくる。
カウンターを飛び越えたのを見てカンナが「こら!シャルちゃん!お行儀が悪いわよ!」と少々お怒りなのは今は触れないでおこう。
シャルは止まることなく私の所まで走ってきてそのままジャンプして飛んできた。
「ちょ、シャル!ちょっと待って――」
いきなり飛んでくるとも思っていなかったので受け止めきれなくて……
勢いよく後ろに倒れた。
「し、師匠!大丈夫ですか!?」
「……うぅーなんとか大丈夫」
その後シャルに何回も謝られたけど可愛い弟子の悪ふざけに怒りなど出なかった。
その事に自分も変わったなぁ、と思い少し昔の事を思い出していた。




