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新たな世界で最高の人生記録!  作者: 勇敢なるスライム
第1章 幼少期
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四十話 地下水道調査その3

 エルトリスは左手に逆手で持った粗悪品のグラディウスと右手に持った少し高めの長剣を構え、地下水道最奥の扉の前に立っていた。


 目の前にある扉は周りの風景に似つかず綺麗な見た目をしていて見ただけで硬く、そして分厚い事は明白だった、挙句の果てに魔法陣の様な物まで書かれていた。

 地図と照らし合わせてみてもこんな所に扉はない。

 誰か魔術の使える者が意図的に設置したのだろうとなんとなく分かった。


 この先に『操作魔術』を使う何かがいる。

 それはもう憶測から確信に変わっている、変わってはいるがエルトリスは扉を開けない。

 いや、開けようとはしているが開けれないのだ。


「どうやって開けるんだろ?」

 この扉は取ってが付いていなかった。

 エルトリスは昔、ダンジョンに潜っていた時にスイッチを押すと開く扉や近ずくだけで勝手に開く扉を見たことがある。

 しかし目の前にある扉にはそれらしきものは見当たらなかった。


 隠しボタンも無ければ近づいても開くそぶりすら見せない。


 エルトリスは悩んだ、しかし目の前の扉一つ開けれない事に少々焦りと苛立ちの両方を感じていた。

 エルトリスは馬鹿というわけでは無い、一般的には頭の回転は速い方だし子供の頃に英才教育をさせられていたので軽くなら四則計算も出来る。


 ただ頭の柔軟性が少し足りないだけだ。


 エルトリスはこの扉を開ける方法を必死に考えた。

 悩んで、悩んで、悩んで一つだけ思いついた。


「そうだ、ぶった斬ればいいんだ!」


 もう一度言おう。

 エルトリスは馬鹿ではない、馬鹿ではないが少し、ほんの少しだけ脳筋気質なのだ。

 他の方法があるのは本人も理解している。

 でも結局は力任せになるのだ。

 理由は簡単、楽だからだ。


 グラディウスを一度鞘に納め長剣だけで構え直す。

 構え方は下段構え、下向きに構え左手を添える。


「さぁ~ちゃちゃっと行くよ!力神流 武人の型――」

 そう言うと目を瞑り集中し大きく深呼吸をした。


「【紫電一閃】!」


 一瞬、文字通りほんの一瞬だけ辺りに紫色の閃光が迸り、扉がバラバラに切られていた。

「やっちゃった、この剣高かったのに……」

 折れはしなかったがかなり刃こぼれし、すぐに使い物にならなくなってしまうだろう。


 最奥は思っていたよりも広かった。

 奥には玉座のような物がありそこに三~四十代ぐらいの茶髪の男性が座っていて両端に見たことがないスケルトンらしきモンスターが二匹いた。

 辺りには骨が散らばっていて、数十体ほど色々なスケルトンが徘徊していた。


 その男性は何が起こったかまだ理解できていないらしく開いた口が塞がっていない。

 エルトリスは先手必勝と言わんばかりに辺りにいた男性の隣以外のスケルトンを倒していった。


 次は男性の方に向かって剣を向けて踏み込もうとした時にようやく状況が理解できたらしく怒鳴り上げた。

「な、なんだ貴様は!どうやってあの強固に作った壁を破壊したのだ!」


 男性はかなり不機嫌らしく眉間にしわが寄っている。


「え?あれ扉じゃなかったの?」

 それと対照にエルトリスは呆気に取られていた。


「貴様はふざけているのか!自分の所に来れるように扉を設置する馬鹿がどこにいる!」

 それを聞いて確かにそうだと納得して先ほどの苛立ちが少し収まった。


「ところで貴方が墓を荒らして町で女性を誘拐している人?」

 探りを入れる訳でもなく端的にそう聞いた、お互いこれだけ派手にやっているのだから今更逃れる必要もないと思ったからだ。


「だとしたらどうする!」

「貴方を捕らえてこの国の騎士に渡すつもり、ここで斬ってもいいけど小物を斬る趣味は私には無いもの」


 小物と聞いて苛立ちが頂点に来たらしく眉間にしわどころか血管が浮き出ている。

 ちょっと面白いと思ったが笑いそうになるのを我慢した。

 常日頃から冷静にいるのが弟子を持つ師匠としての生きざまなのだ。


「貴様はどれほど私を愚弄すれ気が済むのだ!私はこの国の中枢を占めるカイロウ家の一族だ!見た所冒険者風情のようだが貴様の様な馬鹿でも聞いた事ぐらいはあるだろ?」


 この国には何度も来た事あるしカイロウ家の当主とは何度か顔合わせ程度に話したことがある。

 でもこんな人見たことないな?


「私、カイロウ家の当主とは何度かお話したことあるけど貴方みたいな人は聞いた事がないわ」

「嘘ではないわ!私はカイロウ家当主の弟のカイロウ・オスカーだ!」


 その名前を微妙に聞いた事のあったエルトリスは頑張って思う出そうとする。

 確かーギルドに居た冒険者が言ってたような気がするんだけど――


「もしかして、いきなり行方不明になった町で有名の出来損ないオスカーって貴方の事?」

「き、き、貴様ぁぁぁー!」


 エルトリスは痛いぐらいの大声に両耳を塞いだ。


「貴方って貴族のわりに剣術、魔術、経済学とか全般できないんじゃなかったの?」

 優秀なカイロウ家の長男の当主と真逆で何も出来ることがないのに遊び呆けているから出来損ないと言われている。


「少しばかり薄汚い魔族と契約してね、ソイツの魔族の力が使えるようになったのさ。私はこの忌々しい力を使ってカイロウ家を、いや!この国すべてを乗っ取ってやる!」


 魔族と契約?魔族の力が使える?

 そんな事が出来るなんて今まで一度も聞いた事がない。

 それに魔族は他の種族のほとんどを敵視している、かなり昔には全面戦争だって起きたぐらいだ。


 そもそもこの王都に魔族がいるわけがない、エーデンス王国は魔族と亜人族を絶対的に差別している国だし、見つけ次第斬りかかるような輩もいるくらいだ。


 聞いた事がない話に未知の力、エルトリスの警戒度が物凄く高まった。


「私みたいな駆け出し冒険者にそんな大事な事言っていいの?ギルドに帰ったら皆に言いふらしちゃうよ?出来損ないオスカーが魔族と契約して地下水道で隠れて誘拐と墓荒らしをしてさらには国家転覆まで企んでるって。そんな事バレたら打ち首確定だよ?」


「ふん、貴様もとことん馬鹿だな。ここまで話して帰すわけがないだろ?貴様を殺せば私の夢の実現が早くなる!さぁ!私の傀儡になれ!」


 そう言うとオスカーの隣にいた二匹のスケルトンがいきなり動きだした。


「こいつらは私のお気に入りの子たちだ。可愛いだろう?」

 不気味な笑みをしてスケルトンを撫で始めた。


「私を裏切るのはいつも女だ!黙って私の言う事を聞いて居ればいいものを!」

 次はさっきまで撫でていたスケルトンを殴り始めた。


「スケルトンになれば口も利かないし私の言う事にも聞く。この力は最高だ!」


「貴方性格まで問題あったのね。当主も貴方みたいな落ちこぼれでクズな弟を持って大変だね同情するよ」


 エルトリスがここまで煽っているのも訳がある。

 戦闘及び喧嘩においては先に感情的になった方が負ける。

 感情的になれば動きが端的になり読みやすい。


「貴様ぁぁぁー!楽に死ねると思うなよぉ!」

 両端にいたスケルトンがこちらに向かって歩いてくる。

 両方見たことがないスケルトンだ。


 一体は腕が四本もありそのすべてに剣を持っている。

 もう一方は下半身がサソリで上半身が人と物凄く不気味な体系をしていて鎌の様な腕をしていた。


「へぇ、魔族の死体を使ってるんだね。道理で見たことないはずだよ」


 魔族は人に似ているが少しだけ何かが違う。

 他の生き物と混じってたり、体のどこかが異常発達してたり。


「こいつらは実力で言えば個々がB級、二体同時でA級並みの強さだ!さぁ私の物になれ!」


 まず先にサソリ型が私の前に来て両方の鎌で引き裂こうと連続で攻撃してきた。


 後方に下がりつつ右手の長剣で防ぎつつ左手のグラディウスで軽く切りつけていく。

「ッ!何で骨なのにこんなに硬いのさ!」


「さっき自分で言っていたではないか!そいつは魔族の死体を使っている!並み大抵の力では太刀打ちできんわ!」


 ここにきて初めてエルトリスの顔が歪む。

 魔力で身体強化できないエルトリスにとって普通の人間の力で敵わない敵には不利だ。


 足に力を入れ後ろに勢いよく跳ぶ、サソリ型はそれを追いかけるようにこちらに走ってくる。

 しかしエルトリスは逃げるために跳んだわけじゃなかった。


 サソリ型の方に走り込む、それに合わせてサソリ型は大きく鎌を振るった。

 それを読んでいたかの様にエルトリスは笑った。


「力神流 鬼人の型――」

 そう言ってグラディウスで横なぎの鎌を流しつつスライディングしながら死角に潜り込みんだ。


「【跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)】!」


 エルトリスはサソリ型を軸に縦横無尽に飛び跳ねながら剣を振るった。

 狙う先は関節部位。

 関節は生き物が円滑に動くために必要でありなおかつ柔らかくなっている。


 関節を斬りつけ、死角に跳び跳ね、また関節を斬りつける。


 その短い攻撃が終わるころにはサソリ型のスケルトンはバラバラになっていた。


 魔力で強化された硬い壁を切断して硬いスケルトンをバラバラになるまで酷使した長剣は壊れてしまった。


 心の中で少しの間だけ共にした長剣に感謝しつつ目の前まで迫ってきた四つ腕のスケルトンと対峙する。


 四つの腕に四つの剣を持ったスケルトンは巧みに扱いながら連続で斬りかかってくる。


 それをグラディウス一本で流してはいるのだがいくら剣術の達人ですら四つ同時に攻撃してくるのを剣一本では捌ききれない。

 至るところにかすり傷ができる。


 エルトリスは長期戦が苦手なので少し荒っぽい方法に出る。

 ブーツの踵に仕込んであるナイフを起動してグラディウスを四つ腕スケルトンのあばら骨の隙間目掛けて投擲する。


 そのまま躊躇することなく四つ腕スケルトンの攻撃を左右にステップして避け、刺さっているグラディウス目掛けて跳んだ、そしてそれを踏み台にしてもう一度高く跳んだ。


 空中で数回回転して遠心力、体重、重力の力を付け頭蓋骨目掛けて力一杯にかかと落としを繰り出した。


 地下水道に骨が砕ける音が響きながらそのまま貫いた。


 着地してすぐに足に物凄い衝撃を受けて余りの痛さに泣きそうになるのをぐっと堪えながらオスカーの方を見た。


「ひぃ。き、貴様は何者だ!」

 エルトリスの透き通った目に痛みを堪えながら見たせいで睨まれたと勘違いしていオスカーは腰を抜かしている。


「さっき自分でも言っていたじゃない。駆け出し冒険者よ」

「う、嘘を付くな!駆け出しがB級二体を同時に倒せるわけがないだろう!」


 心の中で一対一を二回繰り返しただけなのになぁ、と思いながらも面倒なので口に出さない。


「あなた一応貴族らしいから私の事知ってると思ったんだけど知らないならいいわ」


 そう言いながら一応逃げれない様に服に隠している小さなナイフをオスカーの足に目掛けて投擲する。


「いぐっ。た、頼む!許してくれ!ほんの出来心だったんだ!命だけは!命だけは見逃してかれ!」


 別に殺すつもりは無いんだけどなぁ。まぁ、便利だから利用しよう。


「さっき言ってた魔族の話を包み隠さず教えてくれるなら命だけは助けて上げてもいいかな」


「わ、わかった!話す!全部話すから!命だけは――」

 命だけは。そこまで言うと突如オスカーの首かズルリと落ちていく。


「え?」


 エルトリスは余りの急な出来事に少し呆気にとられる。


 さっきまでこの部屋にはエルトリスとオスカー、そしてスケルトンだけだったはずなのにオスカーが座っていた玉座の後ろから禍々しいオーラを漂わせ全身を黒くて分厚い鎧にマントを着けた成人男性位の大きな何かが現れた。


「なぜ人間はこうも口が軽いのだ。せっかくクズに私の力を貸してやったのにすぐこれだ、結局人間は使えん」


 さっきから震えが止まらない。

 エルトリスは体が震えていることに驚いた。

 今までどんな相手とも対峙してきたが震えたことなど一度もなかった。


 見たところ実力で言えば一方的に負けることもないだろう。

 だが違う何かが体を震わせていた。


 そう。圧倒的な威圧感だ。

 下唇を噛みしめ体の震えを止める。


「貴方は何者かしら?その人が言っていた魔族の人?」


「おっと、自己紹介がまだだったな。私は魔王ヴェルグレイア様に使える【六魔帝】が一人。闇魔帝 漆黒と洗脳のシャミル、以後お見知りおきを」



 魔王、この世界で生きていれば誰しも一度は聞いたことはある。


 未だに人類が支配出来ていない土地、魔大陸を支配していて魔族を納めている。


 聞いた話だが魔王は一人じゃなく何人もいるらしい。

 その点は人間とあまり変わらない。


「折角、このクズに力を貸してやって秘密裏に戦力を増やしていき、いずれクーデターを起こしてやろうと思っていたのに君様のせいで台無しだ」


「へぇ、それって魔王直々の命令か何かかな?」

「そんなわけないだろう?魔王様は多忙なのだ。国とりなど興味を持たない、これは私のただの趣味さ」


 ただの魔族って聞いてたのになんでそれの親玉の魔王の部下がいるのさ!

 戦っても万全な状態にいつもの装備ならたぶん負けはしないよ?

 でもさ!でもさ!今結構しんどいし、武器ないしさ、結構まずよいこれ!


「なら貴方はその魔王の顔に泥塗るんだ」

「なんだと?」


 軽い煽りに反応したのをラッキーと思いつつもう少し情報を聞き取る。


「だってそうでしょ?折角の作戦が失敗したんだよ?みんなに広めないとなぁ~みんなが怯えてる魔大陸の魔王の部下は国一つ取ることすらできないんだもん」


「ふっ、抜かせ人間風情が」

 玉座から私のいるところまで結構距離があったのに一瞬で大剣で斬り込んで来た。


「ぐっ、重い!」

「ほう、今のを防ぐか」


 圧倒的力量の差でグラディウスも砕けて後ろに吹っ飛ばされる。

 空中で体制を立て直して着地する。


「人間にもここまでの実力者がまだいるのか。面白い!」

「魔王の部下に言って貰えると光栄だね」

 対等に会話しているようには見えるけど結構やばいね。

 武器ないし、もう体力が持たない。


「ここで殺すのは惜しいな。次は万全の状態で会おう!さらばだ!」


「あっ、待て!」


 話を聞かずにシャミルが地面を殴ると黒い霧が辺りを包み、霧が晴れる頃には辺りには誰もいなかった。


「う、力が……」

 頭がフラッとして倒れそうになる。

「師匠!師匠!」


 入り口の方を見るとシャルが走ってきた。

 言うこと聞かずに来ちゃったのか悪い子だな……。


 ただ安心して眠れそうだ。

【紫電一閃】を使った後に連戦続きに【六魔帝】と名乗った魔王の部下の攻撃を真っ正面から受けた。


 今日はついてないなと思いながらもそのまま意識が遠退いた。

最後まで読んでくれてありがとう!


結構期間空いちゃったので少し長めに書きました!


評価やコメントお待ちしてます!

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