三十九話 地下水道調査その2
ナイトスケルトンを倒してすぐの事。
エルトリスはスケルトンが地下居た理由を考えていた。
スケルトンなどのモンスターは自然と現れるわけでは無いからだ。
モンスターの定義は動物などが周囲の魔力に侵蝕されると一般的にモンスターと呼ばれるようになる。
その事を魔力に侵蝕される事から『魔蝕化』と呼ばれている。
一言に『魔蝕化』と言ってもその過程は二種類存在する。
一つは、魔力濃度が高い場所に長く居続ける事。
ダンジョンは魔力の量と濃度がとても多いのでモンスターが多い。
そして二つ目は人が故意に魔力を流し込む場合。
魔術の種類は大きく分けて四つあると言われている。
攻撃魔術、補助魔術、結界魔術、そして特殊魔術。
攻撃魔術には明確に四つの属性があるが特殊魔術には明確に区分されていない。
ほとんどの人は特殊魔術が使えないからわかる人がいないのだ。
警護の仕事や傭兵として各地を回り、若いころは武者修行の為に冒険して、幾度となく修羅場を乗り越えてきたエルトリスでさえ特殊魔術を見たのは数回しかないのだ。
そのエルトリスがみた数回の特殊魔術の中にモンスターなどの眷属を操る魔術が存在していた。
その時に聞いた魔術の名前は『操作魔術』。
文字通り何かを操り、それを自分の眷属とし、使役する。
そんな卑怯な魔術だ。
死体を操る『死霊術士』や土人形などを操る『傀儡使い』などと呼ばれる者たちの事だ。
ここの地下水道は魔力濃度が少ないから自然発生したとは考えにくい。
つまり『死霊術士』の可能性を疑っていた。
まだ確証を得た訳では無いから何とも言えないが、ここに来る前に冒険者たちが妙な事を話していた。
地下水道の方からカラカラと言う音を聞いた事。
これはスケルトンが居たことで解決だ。
だがその後に話したことの方が気になっていた。
最近、女性のみが行方不明になる事、そして墓場が荒らされる事が多くて夜中に墓場の護衛をさせられるのが怖い、と愚痴っていた。
墓を見張り、守る墓守の人も街の治安を守る騎士たちも頭を抱えているとかも話していた気もする。
その話を思い出しているとずっと気になっていたことの答えが見つかった。
女性、そう落ちていた人の骨とさっき倒したスケルトンも皆女性の骨だったのだ。
頭蓋骨、胸骨、股関節、どの骨も女性の骨だった。
エルトリスは幾多の戦場に行き骨以外が焼け焦げた焼死体、ダンジョンで死んでいた人の骨、スケルトン達と戦った事で骨を見れば男性か女性かだいたいなら分かる様になっていた。
王都で起こっている女性のみが行方不明になる事、地下水道に落ちていた女性の骨、そして女性の骨のスケルトン。
そしてエルトリスが過去に見た特殊魔術に分類される『操作魔術』を使う人物の記憶。
これを結びつければ大まかだが辻褄があう。
何者かが墓を荒らして骨を略奪し町の女性も誘拐して人の出入りがほとんどない地下水道で魔術を使いスケルトンにして使役している。
エルトリスの予想はだいたいこんな感じだ。
だがなぜそんな事をするのかが分からなかった。
しかし特殊魔術を使える程の魔術士がいる可能性が出てきた。
エルトリスに剣術では渡り合える者はそうそういないが魔力がなく魔術も使えないエルトリスにとって
魔術を使われるのは非常に厄介だ。
それに魔力がほとんどないので身体能力もそこまで高くない。
あくまでエルトリスは技術が高いのであって魔力による身体能力強化が出来ない分力押しが出来ない。
得意なのは一対一の戦闘であって多対一になると分が悪い、集団戦闘は苦手なのだ。
まだ憶測の域を超えないが最大限警戒しよう。
結構最深部に近づいてきた。
道中は大量のスケルトンであふれていた。
アーチャー、ソルジャー、ナイトにウィザード、ガーディアンって言ってたらきりがないな。
その辺の雑魚は置いといて指揮官スケルトンが居たのがかなり手こずった。
コマンダーは一体ならE級のただのスケルトンぐらいの雑魚なのだがソイツが群れに一体いるだけで倒す難易度が大幅に上がる。
前衛、中衛、後衛とモンスターのくせに連携が取れていた。
魔術とか使えたら楽だっただろうな。
まぁ、そいいう時の為に投げナイフを持ってきているがどれだけ早く精密に投げてもコマンダーの指揮の下では意味をなさない。
「はぁぁー」
大きめのため息をはきながら軽くストレッチをした。
絶対今からが一番しんどいんだろうな。
内心シャルが居たらどれほど楽だろうなと思いながらストレッチを終えた。
今まではグラディウスのみで戦ってたが地図を見る限り地下水道の最奥は広くなってた。
手に持っていた松明を足元に捨てる。
クエストに行く前にカンナから貰った魔光石を手に取りそれを片手で握りつぶす。
魔光石は魔侵化した光る石の事で基本どのダンジョンにも落ちている代物で色々な雑貨屋で売っている冒険者の必須アイテムの一つ。
ダンジョン等の暗いはずの洞窟でも冒険者が簡単に潜り込める入れる理由が魔光石だ。
因みにどこのダンジョンにでもあるが一度加工しなければ只光っているだけの石で価値はほとんどなくダンジョンの様に常に魔力を込め続けなければすぐに光が消えてしまう。
しかし加工すればそれを砕いた者の回りは少しの間明るく照らされる。
因みに加工したあとは需要が高くなるので高値で取引される。
ちゃっかり私とシャルの事を優遇してくれるカンナに感謝しなければいけないな。
魔光石を砕くとその周囲に破片や粉末が散らばら昼間の様に明るくなる。
これで両手が塞がっても問題ない。
右手に持っているグラディウスを左手に投げ渡し半回転させ逆手に持ち変え、左腰に差している長剣を右手で引き抜いた。
我神流 左方逆手双剣術
これはエルトリスが編み出した戦闘スタイルの一つ。
普通、二刀流を使う時は両利きの方が戦いやすい。
しかしエルトリスは右利きで左手じゃ文字すら書けない。
そこで考えたのが左方逆手術。
左方逆手の場合、力こそ右手ほど入らないが取り回しが良い上に横薙ぎで攻撃したあとすぐに刺突に移れるから右手に負担が少なく素早く攻撃をすることができる。
そして右手は普段通りに動かせるので余った左手が無駄にならない。
しかしどの剣術の流派でも二刀流の片方を逆手持ちにする利点がないから使わない。
普通の剣士なら魔力で身体能力を強化するので逆手に持つ必要がなく一刀流で素早く攻撃した方が効率がいいからだ。
これは魔力が無いエルトリスが他の剣士に負けない為に編み出された戦術だ。
二刀流になってから道中のスケルトン達がどんなに連携を取ろうが軽く薙ぎ倒して行き、最奥に続いている通路にやって来た。
ここに来て魔光石の明かりが切れそうで困っていると最奥に続く壁にだけ松明が置かれている事に気づいた。
「やっぱり。誰かいるね」
最奥には人がいる。
あれだけのスケルトンを操れるって事は相当な手練れだろう。
やっぱりF級が受けていいクエストじゃない。
普通にA級レベルのクエストだろう。
雑魚でも群がれば相当強くなる。
しかも連携が取れているから尚更だ。
これが終わって帰ったら今回のクエスト代でシャルに少し高めのお店に連れていって上げようかな。
たまには贅沢させてあげたいしね!
最奥に続く道にはスケルトンは居なかった。
驚くほど静かな時間が数秒ほど出来た。
エルトリスの足音が周りの壁に反響してコツンコツンとだけ音をならす。
最奥に入る前に扉があった。
ゆっくり近づき、扉の正面に立って両方の剣をしっかりと握りしめ、もう一度しっかり深呼吸をする。
さぁ!今回のFランククエストの裏に潜んでいる何かを突き詰めてやろう!
今回も読んでくれてありがとう!
評価ボタンやコメント等々してくれると作者の励みになります!!!
次話の投稿楽しみにしていて下さい!




