二十五話 死闘の後の日常
チュンチュン
鳥のさえずりと共に目が覚めた。
目を開けるときれいな天井が一番最初に視界に入ってきた。
もう五年間、毎日見ている。我が家の天井だ。
あれからどうなったんだろう。
俺が生きてることを考えるとたぶんフィオラも無事だと思う。
心配だ。俺が倒れたあとは何があったんだろう……あとで村中歩き回ってフィオラを探しに行くか。
体中を見てみるが怪我もしていなければ、肺の周りも痛くない。母さんが回復魔術をかけてくれたのか。
ベッドから降りようとすると体がすごく重たくなっている事に気づいた。すごくだるい。
まぁ、仕方ないか。あんなにボコボコにされて無傷の方がおかしいか。生きている事に感謝しないとな。
まさか、死んだから時間が戻ってるとかないだろうな……
起き上がって、階段を下りる。
「あ!ライラス!やっと起きたのね!」
階段を下りている途中で母さんと会った。
「おはようございます、母さん」
対応がいつも通り過ぎて分からない……時間戻ってないだろうな。俺タイムリープとか死に戻りとか嫌だよ。俺、もうこれ以上死にたくないから。
「もう、心配したんだから。3日も寝込んでたのよ」
おお、良かった。死んだら時が戻っていて、その話をしようとしたら銀髪ハーフエルフの魔女に心臓握られたりしなくて。
ん?ちょっとまてよ、3日も寝てたのか!?どうりで体が重い訳だ。3日間も運動してないのか、絶対に体鈍ってるだろ……
「そうだったんですか、心配かけてすみません……」
「ライラスが無事ならそれでいいの。それとライラスにお客さんが来てるのよ。今はリビングに居るわ。まったく、ライラスも抜け目ないわね!」
お客さん?誰だ?フィオラ……は俺の家を知らないはずだから……誰だ?俺ほとんど家から出ないから人との交流とかほとんど無いからな。
俺が話したことある人って言ったら本屋のおじさん、母さんに乱暴した盗賊三人組、それとも森で見張りをしていたラウドの友達二人組、ネイルウルフに襲われて俺が回復魔術を掛けた被害者の村人Dぐらいか。
そんな事を考えながら階段を下りてリビングに行ってみる。
ソファーに座っていた可憐な少女は俺を見るなり飛びついて、いや……抱きついてきた。俺は勢いあまって押し倒された。
「ライラス!心配したよ!もう目を覚まさないかと思ったんだから!」
申し訳ない。さっきの説明では情報が少なすぎたようだ。
透き通った緑髪で輝いた翡翠色の目をしている、可憐で天使の様なエルフの少女……フィオラが俺に飛びついてきた。しかし、それは好きな人などにするソレとは違う。
フィオラはまだ子供だ、ただ単に心配しての事だろう。でもなぜだ、分かっているのにちょっと残念だと思っているのは……
「ご、ごめん。でも俺もフィオラを守るのに必死だったんだ。無事でよかったよフィオラ」
「僕の方こそごめんね。会ったばっかりの僕の為に……」
「なに言ってるんだよ、俺たちはもう友達だろ?」
「そ、そうだね!」
それより今の状況はまずい。フィオラに押し倒されているので見る人が見たら茶化される、特にラウド。
早くしないとラウドに見つかっ―――
「ほほ~ん、お二人さんお熱いね~おっと邪魔しちゃ悪いな。じゃあ俺はこの辺で……」
噂をすればなんとやら、もう嗅ぎつけられた。
「父さん、言い方がわざとらしいですよ。違うと分かってて言わないでください」
「子供の恋を応援するのは親として当たり前だろ」
「そんなんじゃないですよ、フィオラとは友達ですよ」
「そうなのかよ~俺はてっきり恋人かと思ってたのにな~」
一連の会話を聞いてもフィオラはきょとん、としている。なんて純粋なんだ。
「まあ、お遊びはこの辺にして。ライラス、フィオラちゃんに感謝しとけよ毎日看病に来てくれてたんだからな」
え?マジで?って顔してフィオラを見る。
「う、うん。ライラスが心配だったから」
「いい友達を持ったな、ライラス」
「ほんとうに、僕にはもったいないぐらい良い友達です」
❖
父さんからだいたいの話を聞いた。俺が倒れた少し後、ラウドが助けに来てくれた。
その時はフィオラも一緒に倒れていたらしい。
しかしフィオラが倒れていた理由は分かっていない。
父さんは魔力が枯渇しただけ、と言っていたがフィオラは魔術を使えないどころか魔術の事もほとんど知らないはずだ。
原因は分かっていないが、とりあえず無事でよかった。
ちなみに父さんは俺が倒れている間に母さんにビンタを一発食らったらしい、俺が家に運ばれてきた時に『どうして守らなかったの!ラウドはお父さんでしょ!』と言われたらしい。まぁその後にしっかりと仲直りしたらしいが……
あの優しい母さんが怒るとは、普段おとなしい人がキレるのが一番怖いからな。俺は怒られないようにしよう。
❖
一通り父さんとフィオラから話を聞いた所で母さんが来た。
「ライラスも起きたし朝ご飯にしましょうか!フィオラちゃんも一緒に朝ご飯食べていかない?」
「すみません。一度家に帰らないと、パパとママが心配するので一緒には食べれないです……」
「そうよね!ならラウド、お家まで送って上げて……」
うぉ、まじかよ。母さんが怖い。まだ全然仲直りしてないじゃないか、ちょっとラウドが可哀そうに見えてきた。
「わ、わかった。いや、わかりましたぁ!」
ラウドが少し怯えながら返事した、あのラウドがビビるとは。母さんの怖さはそうとうだな。
「大丈夫です、もう一人で帰れます」
「いいのよ、遠慮しないで。ねぇラウド?」
「あ、ああ!」
ひぃっ!何だあの冷たい笑顔は、怖すぎだろ。ちょっとこの場から離れよう。
「僕が送ります、フィオラとは友達ですからね」
「で、でも。ライラスはあまり動かないほうが……」
「お願いだ。俺、フィオラの事がもっと知りたいんだよ!もっと知って仲良くなりたいんだ!」
フィオラに目で訴えかける。頼む!ここから逃げ出す口実が欲しいんだ!
「ライラスがいいなら、ぼ、僕からもお願いします」
ありがとう!フィオラ!感謝する!ちょっと場の空気がピリピリしてて息苦しい。
ちらっとだけラウド……父さんの方を見てみる。あ、目があった。ものすごく助けてよオーラが見えてくる。
気づかなかった事にしよう。
「じゃあ、行くか。フィオラの家に」
「うん」
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