十八話 目標は遥か遠く
「とりあえず今から稽古だ!ライラス!」
どこか嬉しそうに、楽しそうにそう言った。
今日こそは一発当ててやる!特に顔面だ!日頃の仕返しをしてやる!
ラウドと少し距離を取る。
「さあどっからでもかかってこい!」
ラウドは剣術の稽古の時は顔から優しさが消える。いつも優しい父さんが稽古の時だけは真剣だ。
俺の好きな構え方中段構え、自分の正面で強く木剣を握る。
目を閉じて集中する、どう攻撃するかを考える。
大きく息を吸う‥‥‥そして
「ハァァァ!!!」
息を吐くと同時に踏み込む。
ラウドも同じく中段で構えている、中段はどこからの攻撃でも防げるのでバカ丸出しで攻撃をしたらすぐに弾かれる。
攻撃する直前に中段からの上段に変更して首を狙って剣を斜めにして攻撃。ラウドが木剣の攻撃を受け流してきてそのまま顔を狙ってくる、このままじゃいつもと同じになってしまう!
受け流された勢いで木剣をあえて落とす、左足を軸にして足払いをする。
しかしバックステップして避けられたので足払いの途中で木剣を拾う、そして右足に力を込めて踏み込む。今のラウドの体制なら俺の木剣を弾けないはずだ!そのまま腕を伸ばして突く
「当たれぇ!」
ラウドも後ろに飛んですぐには防げないはずだ!
っと思っているのもつかの間、
ラウドの剣が俺の剣の根元を弾いてくる『カン』と言う甲高い音が聞こえてくる、どの体制でも防げるのかよ!
流石は力神、技神ともに超級の剣士、はっきり言ってチートだ。
しかしここで諦める訳にはいかない!
ラウドが横切りをしてくる、俺はその攻撃が来る前にバックステップ、ラウドが追撃しに踏み込んで来る!
俺はチャンスとばかりに肩と腕に力を入れ、そして木剣を投げる
さすがのラウドも投げるとは思わず、目を見開いている。勝った。
そう思った瞬間だった、さっきまで目の前にいたラウドがいない!確かに俺の前にいたはずなのに。
俺の投げた木剣だけが俺の視界にあった。
左右を見回すが何処にもいない!
「上かぁ!!!‥‥‥あ、違った」
なら最後は!
「後ろだライラス!」
後ろを振り向くと顔面スレスレで木剣を振り下ろされた、ビックリしてその場でしりもちをついた。
「残念!今回も一発も当てれなかったな!」
さっきまでとは打って変わってニコニコしながらそう言った。
今回も俺の負けだ。
「良い所まではいけてたんだがなー、俺を舐めすぎだな、俺はライラスが思っているより3倍は強いぞ!」
いつもの様に笑いながら冗談を言う、もしかしたら冗談じゃないかもだけど。
まあ、いつもの父さんだ。
「最後のどうやって後ろに回ったんですか?」
今日の最大の疑問だ。踏み込んできた人に対して木剣を投げた、普通に考えれば直撃して俺の勝ち‥‥‥だったはずなんだが
「ライラスが瞬きした時にジャンプして後ろに回っただけだぞ」
回っただけって‥‥‥人一人飛び越えるとか普通の人じゃ無理だろ、しかも瞬きした極わずかな隙に‥‥‥ラウドって本当に人なのか?
「父さんみたいに身体能力が"ぶっ壊れている人"って他にもいるんですか?」
「ぶっ壊れてるってひどいな!まあ、たくさんいるだろ‥‥‥今の俺は本気出してないだけで本気出したらもっと早いぞ、それも視認できないぐらいにな!」
あーやっぱ普通の人じゃなかった、今思えばこの人は異世界人だったわ。しかも視認できないぐらいって既に見えなかったんですけど。
ーーーー
井戸の水で汗を洗い流す。体がびしょびしょになって困っていると視界が暗くなった、顔にふわふわした何かがある。
「ちゃんとタオルを用意しとかないと風邪を引くぞ」
父さんがタオルを持ってきてくれた。この地味な優しさが父さんの良いところだな。
さて、体も綺麗になった所で一人で反省会だ。今回は良かったんだけどまだ無理だった。今回は父さんにも言われた通り"さすがのラウドでも無理だろ"と思い込んでいたのが敗因だ。考え方を改めよう。
せめて10歳になる頃には倒したいが、それは無理かも知れない。
俺は実践経験が少なすぎる、相手もラウドだけだから戦い方がワンパターンになってしまう。
いくら試行錯誤しても今のままでは限界がある、経験と日々の鍛練を積まなくては、ラウドには勝てないな。
何か良い作成か何かを考えておかなければいけない。
深く考えているとラウドが木剣を投げてきた。すかさず片手で受け止める‥‥‥すまん嘘だ、落とした。慌てて拾ったのでちょっとカッコ悪い。
「ライラス。お前は本当に深く考えすぎだなぁー、父さんは心配だぞ」
顔に出てただろうか、いや黙っていたからか。
「俺に話してみろ、少しは考えが発展するかもしれないぞ?」
倒す相手にラウドをどう倒すか、なんて相談出来ないしな、ここは俺の友達の友達の話なんだけど、作成で行くか。
「これは僕の友達の友達の話なんですけど‥‥‥」
話していると父さんに遮られた。最後まで話聞けよ!
「ん?ライラス友達いたのか!?どんなやつだ?いつできたんだ?男か?女か?今度家に連れてきてくれよ!歓迎するぞ!」
しまったぁー俺友達いないんだったぁー!なんで気がつかなかったんだよ。まってくれ!俺こっちに来てからまだ年が近い人と話したことないじゃん!
村を歩いていた時は自分は16歳だと思っていたから5歳位の子供がいても年下だと思ってたけど、今の俺は5歳児なのか!
前世が16歳まで生きてきて、今は5歳だから合わせると21歳なのか、まだ気持ちは高校生なんだけど‥‥‥
「すみません、嘘です、僕友達いません。今のは忘れてください」
友達いないのを自分で言うとなんく悲しくなってきたな、心のなかで泣いておこう。
「いないのかよー、ライラスが全然友達と遊ばないから心配してたんだぞ?そこは『心配して損した』とか言わせてくれよな」
仕方ないだろ、転生してすぐに家で引きこもって魔術の勉強してたんだから。
「もうその話は置いておいて、僕が悩んでいるのは父さんの事です、どうやったら倒せるか。とかですね」
「なんだそんな事かよ。ライラスは年が年だ、さすがに5歳に負けたら俺は師匠に会わせる顔がないぞ、せめて成人してからだな。15歳ぐらいまで毎日訓練、鍛練してようやくまともに戦えるぐらいだぞ?今は毎日を必死に生きて経験を積めばいいんだ。そうすればいつか勝てるようになる、そう遠くない内にな!」
そう遠くない内に、か。そうか俺は焦っていたんだな。転生して早く強くなりたかったから目標を決めて早く越えて強くなったって実感が欲しかったんだな。
父さんに話したら少し気持ちが軽くなった。
この後は森を調べにいく、もしかしたら何かトラブルが起こるかもしれない。
今日は長い1日になりそうだ!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
そろそろ森に調査に行かないと行けません。
これからもどんどん進展していくので面白かったり気になったら次話に期待していてください!!




