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新たな世界で最高の人生記録!  作者: 勇敢なるスライム
第2章 少年期
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百七話 初めての温泉

 未知の強敵である花の化け物を討伐した。

 子供達2人の前で泣きじゃくって恥をかいた後にサンプルとして化け物の死体から幾つか毟り取って鞄にしまう。


「師匠、早く帰って綺麗になりたいです~」

「僕も早く体を洗いたいよ」


 そう言った綺麗な金髪に金色の目をした美少女のシャルは今はスライムや化け物の血と体液でかなり汚れている。

 調査の以来の道中で見つけた元暗殺者で現冒険者の子のミナはスライムで汚れていた。


 かく言う私は砂と化け物の血と体液で汚れている。

 どうしてあの化け物は血が緑で体液は紫色なんだ。

 死ぬほど強かったし気持ち悪いし、倒した後も汚れるからすっごく不快なモンスターだった。


「まぁまぁ、そんな二人には良いお知らせがあるよ」

「なんですか師匠!」「僕もちょっとだけ気になるな」


 2人が興味津々だから嬉しくなってイタズラでもしようかと思ったけど今回は見逃してあげよう。


「なんとあの街の隅の方に広くて綺麗な温泉があります!」

「温泉ですか!? 前に師匠に連れて行って貰ってから温泉は大好きです!」


「その()()()()って何?」

「とってもいい所ですよ! ミナ君も絶対気に入ると思いますよ!」


 シャルが温泉って聞いてテンションが上がってミナの手をブンブン振り回して喜んでいた。

 ミナは結局温泉が分からなくて疑問が深まる一方だ。


「えぇ、僕は遠慮しとよ。よく分かんないし……」

「つべこべ言わずにみんなで入りに行くよ。先に身体を綺麗にしてからギルドに向かおう、それに1度入ったら良さが分かるよ」

「わ、分かったよ……」


 ーーーー


「うわぁ、入り口から豪華だねー」

「はい、この街の建物は何処も綺麗で豪華ですね、エーデンス王国を思い出します」

「あの時はちゃんと見ていなかったけど確かに思い返すと綺麗な国だったね」


 天然の温泉や山奥にある温泉は基本的に人は管理していないけど街中にある温泉は流石に人の手で管理されているので勿論お金がかかる。

 少し雑談をしながら大人一人、子供二人の料金を払って脱衣所に向かう。


「さぁ! 早く入ろう入ろう! ほらミナも進んだ進んだ」

「分かったから押さないでよ」


「し、師匠……」

 脱衣所の前に来たらシャルが呼びかけてきた。

 ミナを押している手を止めて振り返る。


「ん? どうしたのシャル、少し顔赤いけど大丈夫?」

「えっと、その……一緒に入るんですか?」

「うん? いつも一緒に入ってるじゃない」

 シャルがモジモジしていて何処か落ち着いて無くて恥ずかしそうにしている。

 シャルとはこの二年間で一緒にお風呂に入る事は良くあったのに今更何で恥ずかしがっているんだろう。

 それとももう親離れの時期が来てしまったのだろうか。


「師匠じゃ無くて、ミナ君の方です」

「シャルは僕とその()()()()に一緒に入るのは嫌なの?」

「嫌とかじゃ無くて、その……こういうのは普通男女別で入るっていうか、男の子はあっちの方に入るんですよ」

 そう言ってシャルが隣にある男性用の脱衣所を指差した。


「う、うん。それなら問題無いじゃないか」

「え? それってどういうーー」

 もしかしてこの子(シャル)ーー


「だって僕、女だもん」

「えぇぇぇぇぇ!?」


 やっぱり勘違いしてた……

 確かにミナは一人称が僕だし常にフードで顔を隠しているけど。

 とは言っても……


「だからシャルリアは僕の事を()()()て呼んでいたのか」

「ご、ご、ごめんなさい!」

 シャルが勢いよく腰を曲げて頭を下げた。


「いや良いよ別に。僕、気にしてないし」

「シャルは普段しっかりしているのにこういう所は相変わらずだなぁ」

「師匠は気付いてたんですか!?」

「うん、歩き方とか声色でね。でも私が気付いたのはこの街に来てからだけどね、エーデンス王国で初めて会った時は対峙した時間が短くて分かんなかった」


 実際、ミナと戦ってた時間はほんの数分でその後はハンソンが飛んできて肘が直撃してすぐに退場したから殆ど癖を見つける暇が無かった。

 この年でなかなかの実力があるのを見るにこの子(ミナ)もかなり苦労してきたんだろう。

 シャルと友達になってお互い支えあって過ごせると良いな。


「はいはい! 話はここまでにして早く入りに行こう!」

「はい!」「了解」


 脱衣所に入って脱いで身体を清めて温泉に入る。

 簡単な工程だけどそうもいかないみたいだ。


「どうしていきなり服を脱ぐんだ!」

「え? 脱がないと温泉入れないよ?」

「ぼ、僕は帰る! 身体を綺麗にするなら濡れたタオルで十分じゃないか!」

 帰ろうとするミナを下着姿のシャルが腕を強引に引っ張っている。

 温泉に入るのはもう少し先になりそうだ。


「ダメですよ! ちゃんと綺麗にしないと臭くなっちゃいますよ、一緒に入りましょう!」

「いーやーだー!」

「どうしてそんなに嫌がるんですか! 綺麗になれるんですよ!」

「だって……みんなの前で脱ぐんだろ……恥ずかしいじゃないか」

 ミナが顔を赤らめて口元を隠していた。

 それを見たシャルが小さな声で可愛いと溢していた。


 さっきまで恥ずかしがっていたシャルと気にしていなかったミナの立場が逆転している。

 断るミナと諦めないシャルで少しの間言い合いして先に折れたのはミナの方だ。


「あぁー! 分かったよ! 脱げばいいんでしょ! 脱げば!」

 半ばヤケになったミナがずっと被っていたフードを外した。


 フード越しでしか顔を見ていなかったからはっきりと顔を見たのは初めてだった。

 そこには綺麗な顔に透き通る様な銀色の短髪で吸い込まれそうな程の青い瞳の少女が居た。

 しっかりと顔を見たなら性別が男の子じゃ無くて女の子だという事が直ぐに分かるだろう。


「か、か、可愛い……ミナすごく可愛いです! お人形さんみたいです!」

「あ、あんまりジロジロ見るなよ。恥ずかしいだろ……」


 シャルはミナが恥ずかしがるたびに喜んでいるのを見るにかなり同性の友達が増えて嬉しいみたいだ。

 私達がいる戦う環境ではいくら魔力があるお陰で男女の力の差は無いにしろ好んで戦う女性は少ない。

 だから尚更友達が出来てそれが同じ女の子なら嬉しいはずだ、私もカンナと仲良くなった時は凄く嬉しかったのを今でも覚えている。


 ミナが赤面しながらゆっくり服を脱いでいるのを見ていると凄く悪い事をしているみたいになって居た堪れなくなるので私も自分の服を脱いで入る準備をする。


「早く行こうよミナくん……ミナちゃん?」

「呼び方は何でも良いって。あ、でもめんどくさいから今のままの方がいいかも」

「なら早く行こうミナ君!」

「はいはい」


 子供たちのいざこざが終わってようやく温泉に入れる。

 二人の後を追いかけて三人で脱衣所を出たらそこには圧巻の景色が広がっていた。


「何ここ、初めて見た……」

「これが温泉だ、身体を綺麗にしてから暖かいお湯に浸かって心身共に休める場所」

 ミナは恥ずかしさと共に初めて見る光景に胸躍らせて複雑な心境で辺りを見回している。


「それにしてもここの温泉は広いね、前に来た温泉の倍ぐらい広いんじゃないかな」

「はい、それに何か変な匂いがします。嗅いだことのあるような無いような」

「嫌いじゃないけど確かに変な匂い……」

 二人が揃ってスンスンと匂いを嗅いでいる。


「これは温泉独特の匂いだね、前に来た時の匂いを覚えてるんだろうね」

 二人がキョロキョロと辺りを見回しながら温泉に入ろうとした。

 私は二人の方を掴んで引き戻す。


「はい、入るのは先に身体を洗ってからだよ。他の人だって入るんだから」

「すみません」「ごめん……」


 身体を洗い終わってから私は先に温泉に浸かった。

 一悶着あった後、シャルがミナの頭を洗っていた。

 年齢は確かミナの方が上なんだけどシャルはミナと会ってからずっとお姉ちゃん気分だった。


「湯気出てるけどほんとに入って大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよミナ君、師匠も入ってますし」


 ミナが恐る恐る足からゆっくりと入っていく。

「ちょ、ちょっと熱くない? なんだか鍋に入ったみたいだ……」

「時期に慣れていくよ」


 温泉に浸かって緊張が解けたのか脱力して温泉を楽しんでいた。

「僕、結構温泉好きかも……」

「入って良かったでしょ」

「うん……」


 それから初めてにしてはかなり長めに入ったせいでミナがのぼせたのは言うまでもない。



 温泉から上がった後に依頼の完了をギルドに報告してサンプルも渡しに行った。

 しかし未知の化け物の正体はギルドの人でも知らないみたいだった。

 新種かそれとも何かの影響で変異した個体か、どちらにせよ厄介な事に変わりは無い。

 でもそんな中良い事が一つあった。


「ねぇねぇ見てシャル! こんなに報酬貰っちゃった!」

 私は銀貨や金貨が大量に詰まった小さな巾着袋をシャルに見せつけた。

 シャルが中身を確認して目を輝かせていた。

「どうしてこんなに大量に貰えたんですか? 確か最初は銀貨七枚でしたよね?」

「現在未発見のモンスターのサンプル持って帰ってきたのと受けた依頼が規定の難易度より高かったから報酬が上がったんだよ!」

「僕の方もかなり報酬が上がったよ、僕の依頼は森の奥での野草採取だったから」


 だからあんな森の奥地に居たのか。

 野草採取に夢中になって気付かずにスライムに囲まれた感じか。


「なら今日は三人でご馳走食べに行こうか!」

「賛成です!」「まぁ、美味しい所なら付き合ってもいいよ」


 こうして三人で普段なら行かないちょっと高い店でディナーを楽しんだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

次話の投稿、楽しみにしていて下さい!!!

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