百話 フィオラの誕生日パーティー
「「「フィオラ! お誕生日おめでとう!!!」」」
最大な歓声と共に主役のフィオラが舞台に上がった。
村の大勢の人がフィオラの誕生日パーティーに参加していた。
俺の家族とフィオラの家族、友達のカルロス君とペンタ君、フツーウ筆頭の三馬鹿組、フィオラにいつも果物をくれる果物屋のおばさん、この村唯一で天才大工のガジェットさん、母さんと一緒に働いてる医者のおばあちゃん、フィオラの家で飼っているモンスター兼ペットのペコ。
みんなフィオラの為に集まってくれている。
こういった大勢でのパーティーはフツーウ達三人組の家が完成した時以来だ。
「みんなありがとう。えへへ、凄く嬉しいよ!」
みんなで拍手したり歓声を上げたり、フツーウが器用に指笛を鳴らしたりでパーティーは既に大盛り上がりだ。
当人のフィオラは少し照れ臭そうにしていてみんなの前でちょっとモジモジしていた。
主役の挨拶が終わってみんなが乾杯をしたところでフィオラが俺の所に戻って来た。
俺も持っていた二つのコップの内、フィオラは好きなリンゴジュースの入っている方を手渡した。
「ありがと、ライラス」
「これでフィオラも七歳になったな!」
「うん、やっとライラスと一緒だね!」
「そうは言ってもほんの数ヶ月だけだろ」
「それでもだよー! また同い年だね」
「そうだな、これからもよろしくな」
「うん! よろしくね!」
それからフィオラの手を引いて色々な種類のご飯が並んでいるテーブルに2人で取りに行った。
みんなが色々なご飯を持ち寄って来たから今回のパーティーではみんなの家庭の味が楽しめる。
「俺達も、もう七歳か……」
「シャルがこの村に来た時と同じだね、元気にしてるかな?」
「きっと元気だろ、なんたってシャルにはエルトリスさんが居るんだからな」
「それもそうだね! シャルにまた会えるかな?」
「シャルは各地を旅してるんだしいつか会えるさ」
シャルがこの村を旅立ってから早くも2年が経過した、俺達も当時のシャルと同じ七歳になった。
この世界の成人年齢は15歳だからだいたい折り返し地点だ。
この二年間は特に事件やら問題やらが無くてとても平和だった。
俺の剣術はあれから使える技は増えたけど前と変わらず中級止まり、この年で両方上級だったシャルはやっぱり凄かった。何となくの理由で強くなろうとしている俺と信念を持っているシャルでは相当な努力をしないと実力は埋まらないみたいだ。
魔術の方も進展はあまり無くて、二つ以上の魔術を組み合わせて使う複合魔術を幾つか実用的になったのと魔力の量がかなり増えてきたぐらいで上級魔術も火柱の一つ以外、何も上手く使えなかった。
俺と対照的にフィオラはどんどん魔術の扱いが上手くなってきて最近では中級魔術は俺と同じぐらい使えるようになっていって魔力量もかなり上がっていて、魔力のコントロールも格段に上手くなっていた。
少し問題なのはフィオラの得意な属性の水魔術と風魔術の二つは未だに威力が高すぎてコントロール出来ない事だ。
俺は色々試したけど得意な属性が無いみたいだった。
俺もシャルやフィオラみたいに魔力を使う時、凄いオーラを出してカッコいい演出したかっただけにちょっと残念だったけど、フィオラを見ていると”得意な属性”=”完璧に扱える”訳では無くて、あくまで少ない力でより多くの魔力を使えるだけでコントロールが無条件で出来る訳では無いらしい。
憧れはありつつもここまで難しくて苦戦しているのを見ると無くてもいいかなと少し思ってもいる。
「おいおい! 主役のフィオラ嬢が居ないとパーティーが盛り上がらねーじゃねーか! そんな隅の方に居ないでこっち来いよ! 今から俺達三人で大道芸をしてやるよ!」
「フツーウさん無茶振りしないでくださいよ」
「オイラはやりたいんだな」
フツーウが気分が良くなってポチャとガリバーと肩を組んで連行している。
舞台に出た後はフツーウが盛大に火吹き芸を披露していた。
「フー兄凄い! 僕もやって見たい!」
よし、フツーウはここで殺していこう。
きっとフィオラを誑かす為に呼び出された悪魔なんだろう。
「フィオラ、あれは実はフツーウにしか出来ない特技なんだ。悔しいけど俺達は出来ないから諦めよう」
「そうなんだ……やってみたかったな」
フツーウは元盗賊だけあってやっぱりフィオラの健全な教育に悪影響を及ぼす可能性が高い。
まぁ、一番の問題点は俺からお兄ちゃんポジションを取った事が9割を占めているんだけど。
パーティーを聞きつけてきた村の人達の大勢が合流してきてかなり大規模なパーティーとなった。
普段あんまり絡んでいないフィオラのお母さんことマリーネさんとフツーウが話していた。
マリーネさんはニコニコと笑っているけどフツーウの凄いバツの悪そうな顔を見るに俺と同じでたぶんフィオラを危険に晒したから怒られているんだろう。
少し見ていると横目で俺に助けを求めてきたので俺は満面の笑顔を向けてから親指を上に向けて静かに応援した。
「フィオラ、あっちのお肉食べに行こうぜ」
「うん、あれ見た事ないね」
「ガジェットさんが持ってきた料理らしい」
先にフィオラの分のお肉を皿に盛り付けてから自分の分を多めに取りよせる。
ちょっと辛そうだけど肉の欲には勝てなかった。
フィオラがお肉を食べてちょっと辛そうにしていたり、3人組が酔っ払っているフツーウを2人が介抱していたり、俺とフィオラの父親2人とガジェットさんは酒を交わしていて、ペコは相変わらずお肉を頬張っていて、母親同士は子供の話で持ち切りだ。
母さんはマリーネさんに女の子の育て方を聞いていた、俺の妹のルシェネの事について聞いていたのだろう。
どこを見てもみんな笑顔で美味しいご飯に、可愛い友達と妹、賑やかな雰囲気で心もお腹も幸せいっぱいだ。
「凄く楽しいね、ライラス」
「あぁ、幸せだなぁ……」
「そうだね! これからも楽しい事多いといいね!」
ただひたすらに達成出来ない目標に目掛けてトレーニングしていた時では得られない満足感があった。
昔にあった心にポッカリと穴があった感覚が消えていた。
本当に幸せの絶頂にいる人はみんな『幸せ』だなんてこんな他愛ないセリフ言ってしまうんだろうな。
フィオラと楽しく雑談をしていた時だった。
突如、何故だか分からないけど不気味な気配がした。
その場にいた一部の人は何かを感じ取ったらしく、隣町の方角の遥か上空を見上げていた。
それを見た周りの人も一部の人の反応に不思議がり、同じ方角を見た。
先程までみんなで騒いでとても賑やかだったパーティー会場が静寂に包まれた。
何故不気味に思ったかも分からないあい今は何も見えない。
何も無いのかと胸を撫で下ろした。
その刹那。
みんなが見ていた方角から爆音と共に何かが高速で飛来して村の中央付近に何かが墜落した。
全員が爆発音を聞いてから振り返った。
音が遅れて聞こえた……それだけ早かった。
村と少し離れている俺の家から見ても分かるレベルで村の中央が盛大に破壊された。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次話の投稿、楽しみにしていて下さい!!!