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生まれる場所を選べたら。
両親を選べたら。
どんな場所で、どんな親がいいだろう。
華やかな都会に暮らす、お金持ちの家か。たっぷりの愛情と豊かな自然に囲まれた、田舎の家か。
そう考えたことは、一度や二度ではなかった。
しかし、いくら瞼の裏に理想の家庭像を思い描いても、ひとたび目を開ければ乾いた現実が突きつけられる。
目前にあるのは荒涼とした不毛の街で、夢や希望はどこにもない。空気は常に埃っぽく、道端や路地裏はゴミの溜まり場と化している。暴力と犯罪が横行闊歩し、貧しくとも慎ましやかに生きる人々を脅かす。
警察は頼りにならなかった。市民を守るはずだった正義は、不正と欺瞞に食い潰された。
外は安全ではない。内も安全ではない。家に帰れば、理不尽な拳が飛んでくる。
狭く、生き苦しい世界に枷をはめられ、もがいてももがいても沼から這い上がれずにいる。
それでも立ち続けるしかなかった。
負けるわけにはいかなかった。