表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集 

冥界に繋がるトンネル

作者: 不知火Mrk-2

 片山輝夕が通う学園は村の集落に建てられており、一本のトンネルで都市部と繋がっていた。都市部に住んでいる彼は思う。このトンネルは冥界に通じていると……。

そう思い始めたのは一年前に起きた事件が絡んでいた。

ある日、都市部と田舎を繋ぐ一本のトンネル。その場所で幼馴染の女の子が行方不明になった。二歳年上の彼女は、はにかんだ時の笑顔が可愛らしく、身体からは香水の良い匂いを感じさせる。腰まで長いロングヘアが、お姉さんのような雰囲気を表現していた。昔は困った時、いつも助けてくれた幼馴染。今度は助けてあげる為の行動だったのだ。

輝夕は行方不明になった幼馴染を追いかけるように田舎にある学園に進学した。何れ事件の真相が分かると信じて……。

遊学してから三ヵ月経ち、七月中旬に差し掛かった頃。真夏を感じさせる太陽の日差しが教室内を照らし出す。

「輝夕、ねぇ輝夕てば! いつまでボーッとしてんのよ!」

 授業が終了した直後の昼休み時間。教室で考え事をしていた輝夕の表情は、どことなく上の空状態だった。席に座りながら、何と無く外の景色を眺めていると、女の子に声をかけられた。

彼は視線を目の前に向ける。そこには日焼けで肌を黒く染めた天海紫苑が佇んでいた。紫苑はツインテールの髪型が特徴的で、この田舎に住んでいる女の子。狐顔が少々取っ付き辛い雰囲気を醸し出しているが、見た目に寄らず仲間思いの優しい性格をしている。

「輝夕、お昼休みなんだから、少し風に当たりに行かない?」

「うん……」

簡単に返事をすると、彼は席から立ち上がり、紫苑と共に学園の中庭に向かった。

田舎の集落にある学園は多くの木々に囲まれており、風で靡く木々の音が心を落ち着かせる。二人は中庭にある木で作られたベンチに腰掛けた。

「輝夕、いつも考え事しているみたいだけど、悩んでいるなら私に話してみなよ。人に話せば気が楽になるかも知れないし」

 隣に座る彼女は、輝夕の横顔を見ながら優しく問いかけたのだ。

「……」

「黙ってないで、少しくらい話してみなよ」

「じゃあさ……。紫苑、あのトンネルで起きた事件って知ってる?」

「……もしかして、村にあるトンネルの事を言ってるの?」

「そうだけど、あの場所で一年前……」

「輝夕……私からアンタの悩みを聞いといて何だけど、トンネルの話はしちゃいけないの」

彼の発言を遮るように紫苑は、両手で耳を塞ぎながら喋る。彼女は何かに脅えている様に声を震わせていた。村のトンネルには何かがあるのかもしれない。彼女の喋り方は、輝夕の心にそうゆう風な感情を抱かせた。


行方不明になった幼馴染の女の子を捜すため、輝夕はその日の夜にトンネルに向かった。

クラスメイトの紫苑に、『あのトンネルには深く関わらないで』と散々忠告されたが、そう言われると如何しても近づきたくなったのだ。

都市部に住んでいる彼は、真夜中にペダルを漕いで、トンネルの前に辿り着く。先の見えない長いトンネルは、朝方の時間帯と違い異様なオーラを放っている。輝夕は自転車を押しながら空洞内に入り込んで行った。

薄暗い光を放つ電灯が通路を照らしているものの、深夜の時間帯にこの場所を通ると、まさに心霊スポットに思えた。

刹那、彼はある事に気づく。真夜中は自動車も人も余り通らないトンネル。そんな場所かだからこそ他人の足音が聞え易い。彼以外の足音が空洞内に響き渡っていたのだ。

予想だにしない足音が聞え、咄嗟に後ろを振り向く。しかし、薄暗い電灯で照らされた通路には誰もいなかったのだ。幽霊でなかった事に胸を宥めるが、足音の正体が幼馴染であれば良かったと淡い期待を抱いていた。

「はぁ~、やっぱりこの場所に来ていたのね」

暗闇に近い場所で突然声をかけられ、背後を振り向いていた彼は、心臓の鼓動を高めながら正面を振り向いた。

「うああああああっ!」

余りにも唐突過ぎて、トンネル内に声を響かせてしまう。その場に尻餅をついた輝夕に声をかけて来たのは、クラスメイトの天海紫苑だった。

「どど、如何して紫苑がこんな場所に居るんだよ!」

腰を抜かして通路に両手をついていた彼は、紫苑のスカートを覗く様な態勢で問いかけた。

「幾ら注意しても、輝夕ならここに来ると思ったからよ。それより、さっさとこの場所から逃げるわよ」

 そう告げた直後、彼の背後に視線を向けている紫苑は、膠着したように動かなくなった。

足を震わせている彼女は、何かに脅えているような感じがある。彼は紫苑と同じ場所に視線を向けた瞬間……。鉄の塊が彼の首に直撃した。

「うぐっ、ぐはぁああ!」

意識を失う直前、彼は鉄の棒を持つ幼馴染を見た。そのまま眠るように瞳を閉じる。次に見た光景は紫苑の自宅の天井だった。

後で紫苑に聞いたことだが、一年目にあのトンネルで一人の女性が殺される事件があった。その被害者が輝夕の幼馴染だったようだ。あの場所で死んだ幽霊が、冥界に連れて行こうと、今でも待機しているらしいとの事。

読んで頂きありがとうございますっ!


できれば感想を頂ければ幸いです、後……多分夏休み中は毎日投稿をすると思います!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ