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05 脳筋魔法使いと森の主

 次の日、エルフの村で休息をとった俺達はたくさんのエルフに見送られながら村を出た。お土産のエルフ村名物のポーションを飲みながらのんびり歩いていると、後ろから誰かが走って後を追いかけてくる。


 「二人とも、待ってください!」

 「エルフィ! どうした? 忘れ物か?」


 息を切らせながら走ってきた銀髪のエルフは背中に大きなリュックを背負っている。俺達に追い付くと、彼女はその場ではあはあと肩で息を切らせた。


 「はあはあ……、私を、お二人の、仲間に、入れてください!」


 全速力で走ってきたのだろう。かすれた声をむりやり出しながらエルフィは俺達にそう言った。俺は東雲さんと顔を見合わせると軽くアイコンタクトをする。どうやら同じ事を考えているらしい。


 「ああ、もちろん歓迎するぜ」

 「ようこそ! 私達のパーティへ!」


 『エルフィがパーティに加入しました。個別ステータスを表示します』


_______________________________

パーティを組みました。ステータスを更新します。


【プレイヤー名】御手洗 大作

【パーティ】東雲 早苗  エルフィ

【職業】闇騎士 Lv.5


【プレイヤー名】東雲 早苗

【パーティ】御手洗 大作  エルフィ

【職業】僧侶 Lv.9


【NPC名】エルフィ

【パーティ】御手洗 大作  東雲 早苗

【職業】なし

【年齢】150歳

【性別】女

【たいりょく】C

【こうげき】C

【ぼうぎょ】D

【すばやさ】B

【かしこさ】B

【スキル】なし

【装備】エルフ基本装備(葉っぱの服・普通の弓)

_______________________________


 ちゃんとNPCと組んでもシステム反映されるのか。ん? 俺はエルフィのステータスを見ながら、ある事に気が付く。


 「エルフィ、お前年齢欄の150歳ってどういう事だ?」

 「? 産まれてから150年たったって事ですけど?」

 「いやいやいや、どう見ても東雲さんよりもちょっと若いくらいの見た目してるじゃねーか」

 「御手洗さん、それって私が老けてるって事?」

 「いや、東雲さんは年相応でですね……あくまでエルフィの見た目年齢が若すぎる事について私は言いたかったのでして……」


 うっかり口を滑らせた俺は、あわてて弁護しつつエルフィを見る。人間でいうと中学生くらいにしか見えない銀髪の少女は、どう見たって俺の5倍年を取っているようには見えない。俺がジロジロ見ていると、エルフィは顔を若干赤くして恥じらう。


 「やっぱこいつ、東雲さんよりも乙女してますって」

 「御手洗さん、ちょっとお話ししようか」



 東雲さんとオハナシしていると、突然頭上の木の上で大量の鳥が騒ぎ出した。


 「バケガラスが騒いでいる……。御手洗さん! 東雲さん! いちゃついている場合じゃありません! 奴が来ます!」


 弓を取り出したエルフィは真剣な顔で俺達に言う。ただならぬ表情に俺達も武器を取り出し構える。


 「奴?」

 「はい、この森の主、黒龍こくりゅうです!」


 鳥が飛び立つと同時に、西の方から巨大な咆哮ほうこうが聞こえてきた。目を凝らしてみると、はるか向こうに何か大きな黒い塊が飛んでいるのが見える。どうやらあいつがこの森の主のドラゴンらしい。


 「黒龍はなんでこっちに来るんだ?」

 「分かりません。彼はこの森全体を縄張りにしているので、もしかしたら森の住民ではないお二方の匂いを嗅ぎつけてきたのかも……」

 「侵入者の排除に来たって事か」


 遠くに見えた黒い塊は徐々に大きくなっていき、その姿を現す。それは体長5mほどはあろう巨大な有翼龍だった。黒龍は俺達の方へとものすごい速さでまっすぐ飛んでくる。


 「おい、黒龍ってのはお話合いで解決できそうな相手なのか?」

 「100%ありえません。彼は一度定めた獲物を捕らえ損ねた事はないとされています」

 「マジかよ。詰みじゃねーか」


 スライムにすら勝てない俺と、万能とはいえこの世界に来たばかりの東雲さん、そしてただの一エルフに過ぎないエルフィではどう考えてもドラゴンを倒す方法が思い浮かばない。なんとかこの場をしのぐ方法を必死に考える。


 「エルフィ、東雲さん、俺に作戦がある」

 「どういう作戦ですか?」

 「……逃げる!」


 俺達はドラゴンが空中から見つけられなさそうななるべく緑の濃い樹木の下を選んで走り出した。走りながら俺はスラボールに痺れ粉を付けた物をそこら辺の木々の間にロープ状にして引っ掛けていく。追手が地上に降り立った場合を考えてのブービートラップだ。更に葉っぱの服を召喚して身にまとい、より森の中で目立たないように擬態した。


 エルフィの「敏捷呪文アクセル」を全員にかける事で、【すばやさ】がBある東雲さんとエルフィはチーター並の速度で、遅れながら俺も陸上競技選手以上の速度で森の中を駆け巡る。目標の発見が困難になった黒龍は速度を落としたが、確実に俺達の後を追って空から着いて来ている。ブービートラップの効果でドラゴンは地上には降りられないようだ。この擬態は上から見られた方が木の葉っぱ越しに見るため、見つかりにくさが上がる。あとはドラゴンが諦めるまでの根気比べだ。


 俺達が駆けていると、突如目の前に青白い光が現れた。


 「ここは……森?」


 青白い光の中から、黒いブカブカの外套にトンガリ帽子を被った女の子が出てきた。どうやらこの人は運悪くこの場に出現してしまったルーキーらしい。女の子は目の前からあり得ない速さで駆けてくる葉っぱの服を着た中年と女の子二人を見て腰を抜かした。


 「へ、変態だーーー!」


 このままだとこいつはドラゴンの餌になってしまう。事情を説明する暇がなかったので、俺はルーキーに痺れ粉をかけると、そのまま肩に背負う。


 「おや、誘拐ですか御手洗さん」

 「ちげーよ! 人命救助だ!」

 「お二方! 向こうに洞窟が見えます!」

 「よし、そこへ向かうぞ!」


 俺達は近場にあった洞窟に滑り込んだ。ひとまずはここに身を隠そう。洞窟の入り口に手早く蜘蛛の巣状にスラボールを張り巡らせると、その表面に葉っぱの服を分解したものをびっしり張り付ける。これでぱっと見は森と同化してくれるだろう。


 洞窟内には壊れた木箱や、錆びた鉄の部品が散乱していた。どうやらここはドワーフの古巣らしい。ドワーフが使っていたであろう古びたベッドに痺れ粉で痙攣している少女を寝かせると、俺たちはほっと一息ついた。空中では獲物を見失ったドラゴンが咆哮をあげ、辺りを飛び回っている音がする。ここが見つかるのも時間の問題だろう。


 ……痺れ粉の効果が切れてきたトンガリ帽子の少女がむくりと体を起こす。


 「あなた達は一体何なんすか? それに外を飛んでいるドラゴンも」


 俺達は簡単に自己紹介をして、脱出不可のデスゲームとなったこのゲームの現状をざっくり説明した。少女がドラゴンを見ていてくれたおかげで話は思ったよりもすんなり進んだ。


 「マジっすか、そんなラノベみたいな事ってあるもんなんですね」

 「理解が早くて助かる」

 「あたしは泉妻いずのめ七海ななみっす。協力プレイとか燃える展開大好きなんでパーティに入れて下さい。細かいプロフィールはそこでチェックお願いしますっす」


 なんていうか、ものすごく話が早い娘だ。詐欺とかにあって騙されないか心配になる。


 『泉妻七海様がパーティに加入しました。ステータスを更新します』


_______________________________

【プレイヤー名】泉妻 七海

【パーティ】御手洗 大作  東雲 早苗  エルフィ

【職業】魔法使い Lv.1

【年齢】22歳

【性別】女

【引きこもり歴】7年:Bランク 

【ボーナス】マジックアイテム入手

【たいりょく】AAA

【こうげき】A+

【ぼうぎょ】B+

【すばやさ】A+

【かしこさ】D(D-)

【スキル】肉弾戦特化ステゴロ…一定時間【こうげき】【ぼうぎょ】が倍になるが、魔法・アイテム・装備が使えなくなる

【装備】魔法使い装備(杖・外套・下着)

________________________________


 脳筋魔法使い、彼女を一言で表すならそれしかない。この大ピンチにかなり頼りになる戦力がやってきたようだ。


 「ボーナスのマジックアイテムって何だ?」

 「ああ、外套に入ってたこれっすか?」


 泉妻さんはそう言うとポケットからいくつかのアイテムを取り出した。キラキラ光るボールにピンクのグローブ、そして大きな葉っぱだ。


 「ボーナス貰った時にアナウンスの人に説明されたっすけど、このボールは『閃光弾』。でっかい音が鳴ってめっちゃ光るらしいっす。この可愛いグローブは『通り抜けグローブ』、殴った相手を拳が通り抜けちゃうらしいっす。手を引っこ抜いたら穴は元通りになるみたいなんで、ぶっちゃけ意味ないっすよね。最後のが『天狗の団扇うちわ』、すごい風が起こせるらしいっす。これも魔法で再現できるんで魔法使いのあたしには不要っすね」

 「すげえ便利じゃねーか。もしかしたらドラゴン倒せるかもしれねーぞ」

 「え? このがらくたが便利に見えるんすか? 変りもんっすね」


 【かしこさ】が低い発言をしている泉妻さんは置いといて、俺はドラゴンを倒す作戦を頭をフル回転させて立てていた。

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