幕間 ジオルネンジ2
2018/06/26 彼の種族が魔人になっていたのを修正。
ふと、生まれた。
それが知覚できる。分かる事はただ1つ。"生まれた"。
辺りを確認、土で出来た小部屋のようだ。だが、扉の類はない。自分はどうしてここに来たのか。
……思い出せない。何があったのか、自分が何なのか、ここがどこなのか。上も下も、周りも全て土だ。だが五体満足であることは確からしい。少なくとも腕が2本、足が2本生えている種族なのだということは知っていた。
ただ1つ、中央に浮かぶ水晶のような球体だけが浮いていた。
ただ1つ、思い浮かぶ言葉がある。
ただ一言、水晶に触れ唱える。
「開け」
掠れた泥人形の声に呼応し、水晶の輝きがより一層強くなる。
知識の奔流が脳を襲う。世界の成り立ち、自分自身という存在、ここが何処か、何をするべきか。それら全てが一斉に襲ってきた。
ただ少しだけ。そう、ほんの少しの不純物が紛れ込んでしまったと知ったのは大分後だった。
◇◆◇◆◇◆◇
ふと、目を覚ました。
どうやら俺は気絶していたらしい。不思議だ。気絶していたはずなのに気絶していた間の記憶がある。まるで自分を俯瞰で見ていたような気分だ。
いや、それ以上だ。ここ以前の記憶もある。俺はどうやら……死んでいたらしい。だが、今は生きている。ただの泥人形ではない、が……唯一、自分の名前は思い出せない。
しかし目的は、やらねばならぬ事は分かる。俺はこの――玩具の世界で生物を殺し続ける事が使命だ。
「『メニュー』」
再び水晶に触れ、唱える。現れるのはメニューリストとマップ。とはいえ選択肢は非常に少ないし、マップも狭い。何せ2立方メートルしかないこのマスタールームしかないのだ。
最初に選ぶのは『召喚』。その中から魔素が100%を超えない魔物を選ぶ必要がある。さて、誰にしようか?魔物自体の知識は与えられなかったし、説明文を読んで選ぶしか無い。とはいえこの魔素だ、最下級を数体呼ぶか、或いは下級を1体呼ぶか。魔素は上限を超えて蓄える事が出来ないらしい。
当然、下級を呼ぶべきだろう。それも出来れば話せる奴が良い。1人は寂しい。そうだな……不死か。これから死を運ぶんだ、これでいいだろう。
名称:ワイト
分類:モンスター
種別:不死種
条件:--
階級:中級以上
詳細:言葉を操るスケルトン。素質に恵まれている。
「『召喚→不死→スケルトン→ワイト→下級』」
『エラー。存在しない魔物です。先に――』
水晶から音声が発せられる。どうやら説明文通り、ワイトは中級かららしい。……ならばこれならどうだろう。
名称:メイジ
分類:モンスター
種別:不死種
条件:--
階級:下級以上
詳細:言葉を解するスケルトン。低位魔術を操る。
「『召喚→不死→スケルトン→メイジ→下級』」
『承認。召喚します』
再び水晶から音声、その後光が発せられた。その光の中、ボロボロの木の棒を持った骸骨が現れた。
スケルトン・メイジ。下級から召喚できるスケルトンの一種であり、低位魔術、つまり5術までを操ることが出来る。始祖の魔術は扱えないようだがスケルトンの中では珍しく言葉を理解するらしい。
「お前、俺の言葉は分かるか?分かるなら頷け」
カタリ。スケルトン・メイジが頷くと、乾いた音が響いた。どうやらカタログ通り理解はできるらしい。
「何か話せるか?話せなければ首を横に振れ」
今度は首を横に振った。なるほど、声帯が無いものな。仕方あるまい。期待していた会話は出来ないものの、ある程度の意思疎通が出来るものが生み出せた。今はこれでいいだろう。
「スケルトン・メイジでは長いな。お前はルーメイだ。分かったか?」
カタリ。またも乾いた音が響く。完全に理解できているらしい。中途半端なバカを呼び出すよりかは良かったかもしれない。
「さて、ルーメイ。お前には『メニュー』が見える。そうだな?」
カタリ。同意を示す音。『開拓→マスタールーム』とメニューを開き、保有残存魔素が2割を切っている事を確認する。どうやらルーメイの召喚だけで85%程度消費したようだ。
「俺は魔素が貯まり直すまで眠る。魔素が……そうだな、スケルトン・メイジをもう1体呼び出せるまで貯まったら起こせ」
カタリ。癖になるような乾いた音だ。だが安心した。スケルトン・メイジは思った以上に知能が高い。恐らく人間種程度はあるのだろう。
さぁ、回復するまで眠ろう。睡眠は不要だが、無為な時間を過ごすのも耐えきれない。
◇◆◇◆◇◆◇
体を揺さぶられ、目を覚ました。ルーメイだ。
「『メニュー』」
水晶に触れず唱える。起きた時、また知識が増えていた。どうやら『メニュー』は水晶に触れずに使う事も出来るらしい。一部の項目は使用不可になったり、マップの更新が遅くなったりのデメリットはあるようだが。
残念ながら開拓はこの"簡易メニュー"では行なえないようだ。水晶に直接触れ、『メニュー』と唱える。
表示された選択肢の中から進める。『開拓→第1階層→部屋』ふむ、先に作ったマスタールームから繋げる必要があるのか。とりあえず縦横1平方キロメートル、高さ500メートルの広めな大部屋を作る。
ここがいわゆるボス部屋になるのだ。このくらいあってもバチは当たらないだろう?
『承認。開拓します』
何も感じない。音や揺れはあると思っていたのだが、知識通りここは完全なる異空間らしい。さて、部屋を作ったならば繋げなければならない。『メニュー→開拓→第1階層』……ほう、ユニークなる選択肢が増えている。
中を覗いてみれば扉、壁、窓等様々なオブジェクトが選択できるようだ。まずは扉を選択。マスタールームとボス部屋を繋げてみる。ついで、ボス部屋に光源を設置。消費魔素が最も小さいものを選んだが、それでも残りは1割を切ってしまった。……部屋を確認したらまた寝るか。
「ルーメイ、着いてこい」
カタリ。小気味良い音に気分を良くしつつも、新たな部屋を覗いてみる。
とは言え光源が設置されている以外特に言うこともないただの大部屋だ。ルーメイと軽く見て回り、すぐにマスタールームへと帰還することになった。
「ルーメイ、保有魔力が9割を超えたら起こせ」
◇◆◇◆◇◆◇
それから俺は部屋を広げ、モンスターを作り、ダンジョンを作り上げた。1層しか無いものの全部で7部屋からなる広めのダンジョンだ。出現するモンスターは現在はアンデッドしか居ないが、だが十分だろう。
その他、宝箱を設置し餌を入れておいた。今回設置した宝箱は中身が再生されない残念なものではあるが、自動再生機能を持つ宝箱は非常に消費魔素が多い。だから、諦める他無かった。
期限の3ヶ月が迫っていた。ダンジョンは作成後3ヶ月以内に世界へと繋げるための"入り口"を作らなければ消滅してしまう。"入り口"が何らかの理由で使用できなくなった場合も、3ヶ月以内に新たに繋げなければ水晶が崩壊する……つまり、俺が死ぬ。
客寄せの宝箱に難易度の低い3部屋、難易度の高い3部屋を設置。そしてボス部屋にはリライフドラゴンと大量の不死土蟲を配置した。その他、ダンジョンクリーナーと呼ばれる粘性生物の番をいくつか配置。
彼らは生物の死骸などを喰らい、増殖していく便利な魔物だ。勝手に増えていく上にダンジョン内が綺麗になるため必須だろう。
さぁ、準備は出来た。仕事を始めよう。




