表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/270

二十四話 終春

 直したつもりなんですけど、いくつかの話をカットして繋げたので変なところが残ってるかもしれません(´・ω・`)

 初夏だと言うのに空気は冷たく、日も低いせいかまだまだ寒い。

 ダールは暖かくない、いや寒い。その中ではまだ過ごしやすい日ではなかろうか。


「行ってきます」

「いってらっしゃい」


 玄関前でサンと挨拶。今生の別れでもないのだし簡単に済ます。現にロニーはここには居ない。……朝に話したとはいえちょっと寂しいな。


「ちゃんと録石送るからね!」

「うん、待ってるよ」


 住み慣れた我が家に花の香を添えず別れを告げる。またいつか戻ってくるさ、その時までさようなら。



◆◇◆◇◆◇◆



 最近日が昇るのが早くなってきたと思う。夏が近い、というよりは夏に入ったのかもしれない。とはいえ朝はまだまだ冷える。今日は群青色のコートにしようかな。最近暖かくなってきたし、このくらいの薄さのが良い気がする。

 髪と同じ色だから統一感出て気に入ってるんだよね、このコート。マントの深緑とも合ってるような気がする。こっちの世界じゃ青も自然界に存在する色だから変に目立つ色ってわけでもないしね。


 朝食は硬めのパンとスープ、それとキツめに香辛料を効かせた蒸し肉、角兎(ケルトヘア)かな。ちょっと野菜不足感はあるけどお腹いっぱいし、体も温まる。冒険者たるもの朝食から気合を入れなければならないのだ。

 ある程度食べ進めたところで2階からロニーが降りてきた。ここ最近、ロニーが起きるのは遅い。帰りも遅いしちょっとだけ生活リズムがズレたらしい。サン?あの人は朝弱いしまだ寝てる。昨晩もお楽しみなようでしたし。


「あ、パパおはよ」

「おはよう。ご飯準備してくれたりするかい?」

「いいよー」


 妙な言い回しをしたロニーがリビングを後にする。多分トイレだな、2階ですればいいのに。

 まぁいいや、今のうちに準備してあげよう。スープはさっき温めたばっかだし、お肉も同じ。パンは籠から載せ替えるだけだし別に手間じゃない。冷蔵庫のピッチャーから果実水を注いではい完成。


「ありがと」

「ん」


 並べ終わると同時にロニーが戻ってきた。男はトイレが早くていいよな、女はちょっとめんどい。


「今日も早いね、クエストかい?」

「うん、何するかは決まってないけど」

「そっか。この前の緊急クエストじゃ活躍したらしいね。あんまり無茶しちゃだめだよ?」


 そう、私達4班はゴブリン討伐数が全9班中3番目と、そこそこ多い方だった。上から順に390、212、164、と魔王にちょっかい出してなければ2番目も狙えた気がする。まぁ倒しまくったからって特に報酬が出たりするわけじゃあないみたいだけどさ。それに、1番の班は数が頭おかしい。


「うちのパーティには優秀な盾が居るからだいじょーぶ。特に大怪我した人も出なかったしね。……紫陽花にはだけど」

「レニィン君だったっけ?盾術士は貴重だから、一緒に組めるなんてラッキーだったね」

「うん、頼りにしてるよー」


 サンもロニーも好きだけど、冒険者としての話はロニーの方がしやすい。なんでだろう、中身が男同士だから?サンはあんまりこういう話を振ってこないせいもあるのかも。


「よっし、食べ終わったし着替えてくるー」


 自室に入り、予め準備しておいた服を着けていく。下着を着けて、肌着を着て、その上から厚手の服を着て、革鎧を着けて、コートを羽織って、マントを重ねる。

 うん、文字にするとすっごい面倒臭く見える。慣れちゃえば平気なんだけど、最初は確かに面倒だった。

 よっし、準備完了。そんじゃ、行きますか!


「パパ、行ってくるねー」

「いってらっしゃいのキスは?」

「子供じゃないし、もうしないよ!じゃね!」


 さすがに恥ずかしいわ。ん、なんで恥ずかしいんだ?思春期か?そんな歳じゃないと思ってたけど、精神は肉体に引っ張られるなんていうしそんな事もあるのかね。

 ま、いいや。ギルドに向かおう。


 ギルドまでの道は案外分かりやすい。3回曲がって大通りをまっすぐ突き進むだけ。分かりやすくていいね。ちょっと距離はあるけど、別段苦になるようなものじゃない。っていうかこの距離で音を上げてたら冒険者なんてやってらんないと思う。

 というか、前世での駅から職場までの方が遠いんじゃないかな?……ん、職場?前世でも冒険者だったっけ?これ、絶対混同してるな。後で日記読んで直しとこう。やだよスーツ姿のリーマンが剣振ってるとか。


 ちょっとした記憶のズレを何個か発見しつつ、歩き続けること多分10分。いつもの冒険者ギルドに到着。

 中はいつもどおりガヤガヤとうるさい。朝のこの時間は冒険者がギルドに殺到しているから仕方ないのだが、人混みは得意じゃないし、若干のむさ苦しさが嫌な空気を作っている。冒険者は男性の方が圧倒的に多いからかな。


 入って左の奥、魔石棚までそこまで遠くない位置が私のパーティの定位置。いつから何故なのかは不明だが、今日もいつもどおり集まっていた。……ん、レニーは遅れてるのかな?


「よっ。レニーはスクロール買いに行ってるからもうちょっと掛かるってよ」

「クエストは先に決めちゃっても良いのかな?」

「良いってよ。ま、あいつの事だし時間までには戻ってくるだろうけどな」

「今日はどうする?昨日は雷狼(ライグンウルフ)だったけど」


 前回の雷狼はかなり面倒だった。数が多い上チームワーク抜群で、1体ずつの処理が非常に難しい。かと言って複数を同時に相手にすれば雷魔術が四方八方から飛んでくるとかいう鬼畜生物なのはご存知の通り。

 カクとティナは攻撃の際に刃に雷を纏わせるくせがある。どうやら魔戦士全般の基本技能らしいが、雷狼には通らないのだ。どうやらあの毛皮が電気を角に流してしまうらしく、却って相手の魔力回復に繋がってしまう。

 そして爪や牙は常に帯電しているらしく、レニーは防ぐ度にぐぁぐぁ言っていた。前衛職は総じて耐電ブレスレットみたいなのを着けてるわけだが、手首から先に関しては話が違う。

 前回と違い数が多すぎたせいでお互いのサポートもしづらかったし、動き回るメンバーを守るためにあんな大盾を担いで動き回り、防ぐたびに電撃を食らってたレニーが今回1番辛かったと思う。私も自分を守るために結構動き回ってたし。


 うん、認めよう。面倒どころかだいぶ苦戦した。数が増えるだけであそこまでキツい戦いになるとは思っていなかった。所詮雷狼だろ、と高を括ってたと思う。

 最終的にはティナとカクの土壁で閉じ込めて、その中を氷漬けにしてなんとかした。まだ魔力が回復しきってないような気がするってくらい大量放出した。後レニーがめっちゃ重くて土壁の中から出すのに手間取った。筋肉量の差だろうか?盾も重かった。

 30匹以上も居る群れはヤバいね。もうあんなのとは戦いたくない。因みにティナは土壁作ったところでダウンした。前回よりは長続きしてたけど、やっぱり継戦能力に欠けるな。ゴブリンの時も明け方に死んでたし。


「まだ更新されてないしな……お、レニー」

「すまん、少し遅れた」

「むしろ丁度いいんじゃね?ほら」


 カクが指差した先には録石棚を運んでいる職員。ナイスタイミングだ、レニー!


「そういえばなんで録石棚の録石って読めるの?」

「どういう意味だ?」

「普通魔力流さないと読めないじゃん?でも録石棚に置かれてるのはここからでも読めるよね」

「……カク、なんでなんだ?」

「バカしか居ねぇ。いいか、録石棚ってのはだな……って今説明する事じゃなくねえか?」

「それもそだね。決めちゃってから教えてよ」

「そろそろ街を出るって言ってたよな?これはどうだ?」


 ガタイある人は良いね、あんな人混みの中からも録石を取ってこれるんだからさ。私なんて椅子に登って見てるもん。早く身長伸びないかな、もう伸びないのかな、このままチビなのかな……いや、ロニーやサンの身長的にもうちょっと伸びるはずだ。そう信じよう、信じたい、信じさせて……。


分類:護衛

報酬:小銀貨3枚

内容:ダーマト・セムまでの片道護衛

期間:1日前後

名前:シュン

詳細:本日8時に出発します。休憩を挟みません


 レニーが持ってきた録石はこれだった。小銀貨3枚……6級のクエストとしては最低ランクだし、あの街道を使うのだろうから魔石収入も期待出来ない。

 まぁ安いとは言え先日受けた護衛クエストよりかは高い。あっちは6日で小銀貨6枚……日当小銀貨1枚だった。関所での支払いは雇い主が行なうってのは前回ので確認出来たし、ダーマに移動するついでなら中々良いクエストかもしれない。


「こういうクエストってダーマでも報酬貰えるの?」

「片さえ渡せばどこでも貰えるさ。あんま遠いとこだと現地の通貨で渡される上に手数料持っていかれるし、そもそも有効期限あっけどな」

「へー。じゃあギルドに預けてあるお金も下ろせるの?」

「労働者の方か?あれはそもそもダニヴェスの一部の都市にしかねーからな」

「あそっか、冒険者ギルドには銀行ないんだっけ。ってことはお金は持ち歩かなきゃなのか……ちょっと重いよね」

「銀行に預けるってのも手だな。下ろす時に手数料掛かるけど」


 紙幣ではなく金属貨幣なせいか、量が増えてくると常に持ち歩くには嵩張る。紙幣って歴史的にはどこらへんで生まれたんだろ?産業革命とかあそこらへんかなぁ。生きてるうちには見れないかもしれない。

 銀行もあるにはあるものの手数料がかなり高い。そもそもあれ冒険者以外で使ってる人居るんだろうか?街の中に居る人は大抵労働者だし、そもそも労働者ギルドの銀行もあんまり使われてないって聞く。……やっぱ持ち歩くのが正解なのかね。


「つーかアタシらは別に良いんだけど、アンはダールから離れてもいいのか?」

「この前許可出たって言ってたろ」

「そうだったっけ?忘れてた」

「んじゃこのクエスト受けるとして……方向的にはウィグマやダーロの方面だな。ダーロ行くか?あっちの方が稼げるだろうしよ」

「マジか!ダーロ行こうぜダーロ!」

「今はちょっと物騒だけどな……噂じゃケストが魔導人形を復活させたとも言うし」

「えっあれ実在するの!?」

「あくまでも噂だぞ」


 北帝の魔導人形というおとぎ話がある。

 今は滅び名前も忘れられた北部帝国が機械仕掛けのゴーレムを作成するもその途中で魔法陣が暴走、国ごと滅んでしまう。しかしゴーレムだけは完成、様々な国を滅ぼしていく。最終的にはンジュブレ国の兵士1人に言いくるめられる……みたいな内容だったはずだ。

 ンジュブレ国も今は存在していない。ダールから南に進むとリニアル(大河)が二股に分かれ、その間……デルタ地帯って言うんだったか、にあった国らしいのだが突如ダンジョンが多数出現して滅んでしまったという。

 魔導人形自体は北部帝国があった辺りに帰ったとかなんとか。その北部帝国もシグミの辺りにあったっていわれてるし、ありえない話じゃないのかもしれない。……うーん、ちょっと怖いけど、まぁ私には関係無いっちゃ無いね。


「んじゃ、これ受けてダーマに移動、ダーロに行く系のクエストがあれば受けるって事でいいか?」


 ダールを離れるときが来た。



◆◇◆◇◆◇◆



 いつもどおりの朝。門の前にはいつもの3人と護衛対象のシュン、それから蜥蜴馬車が居た。

 今日は護衛クエストを受けた。が、今回受けたのは片道護衛。行き先はダーマト・セム(ダーマ)、この前の護衛クエストで通り過ぎた街だ。あの時は入らなかったけど、今回はあそこが目的地。そしてダーマに暫く滞在することになっている。つまり、ダールには暫く戻ってこない。


「別れは済んだか?」

「死ぬまで会えないって訳でもないしねー」

「それもそうだな。んじゃ出発すっか!」


 ダリルレ・リニアルにさよならバイバイ。私は彼らと旅に出る。……電気ネズミが足りないな?

 紫陽花が綺麗な季節ですね。

 本章1前編終了です。幕間を挟んだ後、本章1後編に入ります。ダンジョンにフォーカスを当てた話になります。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ