↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/271

十六話 ゴブリン大戦1

「そうか!遂にこの街から出れるのかー!」

「あれ?でもカクってダール出身じゃないよね?」

「あーまぁな。でも2年も居りゃ飽きるってもんよ」

「そうなの?」


 いつもの早朝、ギルドで顔を合わせての雑談。いつも通りの朝だ。


「ま、すぐにここを出るってわけにも行かないよな。ちょっと情報集めなきゃなぁ」

「そういうのは得意だろ。任せる」

「アタシは戦うしか出来ないしなー」

「ま、なるようになるだろ」


 辺りも騒々しく、私達のパーティも自然と声が大きくなっていく。賑やかな朝から、今日も1日が始まる。


「よう!6級になったんだって?」

「おーツェンか!この2人が昇級してな、リーダーの俺は、今や1番の低階級ってわけだ」

「ハッハ、パーティなんてそんなもんだろ!纏め役が1番強いとは限らねーからな!」


 声を掛けてきたのは黒鉄鎧を着けた戦士風の男、ツーツェン。

 彼は6級冒険者であるが、8級の魔術師と2人パーティを組んでいる。パーティ階級が7級であり、同じ階級ということは似たようなクエストを受けるということであり……自然と顔見知りにもまっていくというものだ。

 後発の私達が先に6級パーティになったとあって、何か嫌味でも飛ばしてくる、なんてことはない気の良い奴だ。

 個人的に分かりやすい男は好きだ。こういうタイプ、パーティに居ないからな……ティナが1番近いか?

 逆に魔術師の方はよく分からん。あの2人と違ってパーティ組んで動いたことがあるわけでもないし。


「で、今日は何にすんだ?」

「今ちょうどその話をしてたんだ、お前らんとこは?」

「こっちは2人しか居ないからな。いつも通り軽いクエストを適当に受けるさ」

「でもお前んとこの魔術師、かなり優秀じゃん。5級くらいなら行けるんじゃねーか?」

「いや、今んとこ7級でも生活出来てっから変に上は目指さねえ。6級で足を止めるさ。それに、俺に才能が無いのは誰の目にも明らかだ」


 冒険者の中には向上心のない者も少なくはない。最低限の生活、と考えれば8級でも十分であるし、冒険者ということが大切なのだ。

 そもそも魔獣を狩る仕事柄、食料には困りづらい。ギルドで回収されるのは魔石だけで、肉は本来捨てられてしまう。

 特に美味という訳ではないが、かといって不味すぎる訳でもない。調理法によっては十分に美味しく出来る。

 つまり、日々魔物を狩りその肉を喰らい、討伐依頼の際に日頃蓄えている魔石を提出するだけで生きてはいけるのだ……宿を取るとなればもっと金が掛かるが、彼のようなスラムの住人にはまた違うのだろう。


 スラムの住人にとって労働者とは最も就きやすく、そして最も働きづらい業種と言える。

 身分証を手っ取り早く作れる労働者は誰でも就ける。しかしその反面、差別も多い。要するに労働者になったところで仕事がないのだ。スラム出身者というだけで返されてしまう事も多く、結局まともに稼げないのだとか。

 だから労証が大銅になり次第、冒険者へ転職するものが後を絶たない。

 だが冒険者も甘くない。装備や薬となんだかんだ金が掛かる。中には推薦枠をなけなしの金で買い、その日に死ぬ者も居るとか。金の無いものは死ぬしかない。

 しかしそれでも、それでも魅力的なのだ。冒険者とは力が全ての世界であり、スラムもまた同様。似た世界で生きてきた人間にとって、最も身近で最も夢ある職業に見えるのだろう。私はスラム出身じゃないから知らんが。


「ま、そう言うなって。魔術を使えるだけでも立派じゃねえか。俺なんてスラム出身でもないのにからっきしだぜ?」

「はん、代わりによく利く鼻があるじゃねえか」

「まぁな。俺の魔力は全部鼻に持ってかれたんだ。……っとすまねえ、そろそろ貼り出される時間だ」

「おう。そっちも頑張れよ!紫陽花って言ったっけか?」


 普段どおり、受付の裏から録石の並べられた棚が出てくる。しかし今日の朝はいつもと違っていた。

 運んできた職員はギルド内に伝わるように大きめの声を上げる


「本日は緊急クエストがあります。6級以上の方は参加するように」


 ギルド内がざわつく。緊急クエストとは一体なんだろう?


「カク、これは?」

「強制参加のクエストだな、面倒臭ぇ」


 緊急クエストとは、内容は多岐に渡るが概ね大規模であり、一定階級以上の者が強制参加と言う一種の命令のようなクエストであるらしい。

 報酬も様々ではあるが、概ねの傾向として活躍次第での一攫千金や"飛び級"も狙える内容となっているとか。

 冒険者ギルドが街で運営できる理由でもある。冒険者とは臨時の兵士でもあるとはカクの言葉だ。


「ダールを発つのが先延ばしになったのは確かだな」

「参加したことあるの?」

「いや、前回は5階級以上だった」

「ふーん。あれ、カクって7級だけどどうなるの?」

「俺とティナは6級パーティ構成員だから参加させられる。逆にツェンみたいなのは単体で参加させられるな」

「へー。どんな内容なんだろね」

「6級以上って事はそれほど難しくないか、或いは数が必要かってとこだろうな」


 "数"ねぇ。数が必要なクエストってどんなのだろう、どこかと戦争でもする気なのかな、或いは開拓とか?

 確かに北部、とりわけ北北西の方は未開拓だとは聞くけども。或いは東部の大森林とか?魔力濃度が高すぎて異常天候に陥っている地域だ。何度か足を運んでいるけど


「そんな深刻そうな顔すんな、他国との戦争であれば参加義務はない。それと開拓の線もなしだ。その手のは調査依頼が何度も繰り返された後になる上、俺らの領分じゃねえ」

「取ってきたぞ」

「仕事早ぇよ、どんな内容だった?」

「……ゴブリン狩りだな」


 あら。

 レニーが口を開くと同時にティナが録石を奪い取る。


「……うへぇ、マジでゴブリンじゃねーか。アタシ苦手かもなー」

「なんで?」

「あいつら喋るらしいじゃん?」


 喋るのか。この前見たのは全く喋らなかったから分からなかった。


「レニー」

「大丈夫だ」

「どうした?」

「昇級試験での()、もう大丈夫なのかなってね」

「ほー、難しかったのか?」

「ちょっとねー」


 ティナよ、首を突っ込むでない。少ししたら君もゴブリン殺しを……いや、今回の緊急クエストでやることになるか。飛び級ってそういうことなのかね。



◆◇◆◇◆◇◆



 今日のクエストは大角兎(ケルトジズヘア)狩り。角兎(ケルトヘア)によく似た別種の魔物であり、人を襲い喰らうこともある凶暴なウサギだ。大きさはピットブルの方が近いか。ん、ピットブルってなんだっけ?まぁいいか。

 実は結構なレア魔物であり、角兎程活発に狩られるわけでもないし、それほど頻繁に見られる魔物ではない。肉も角兎に比べたら大味且つ獣臭く不味いらしい。その上そこそこ強く、魔石もそこまで大きいわけでもないと散々な魔物だ。

 だが角と皮に価値がある。よく分からないが角は装飾品として有用らしい。今回の依頼もそれだ。皮は破れやすく綺麗に剥がすのは難しいものの、もし状態良く入手できれば高く買い取ってくれるんだとか。


 ギルドによると南部の森に居るらしい。南部の森……特に固有の名称は無いが、土蟲(ワーム)を狩ったところだな。距離もそこまで離れていない。

 その道すがら。


「ゴブリンとの戦闘ってことはがっつり6級向けだよなぁ」

「気後れしてんのか?柄にもねえ」

「あん?新しいダガーの試し切りにちょうどいいって意味だよ。お前で試そうか?」

「怖いこと言うなよ!……そういやあの金、どこから出てきたんだ?」

「暇な時にバイト(・・・)してんのさ。魔道具に魔力を注ぐ奴」

「あーあれか。じゃあ無理だな。すぐ枯れるし」


 中級以上の魔石には蓄電池のような機能がある。むしろ発火石と呼ばれる低級の魔石だけが消耗品だとも言える。勿論使う度に容量は減っていくのだが……街灯だったりの使う時間と使わない時間が分かれてるような奴は大体これが使われてる。

 魔力を注ぐ……つまり充電するわけだな。労働者として働いていた時はちょいちょいやっていたし、術式もシト・ゼロ・クニード(これに、魔力を)と簡単だし魔力量が多い人間からしたらかなり割の良い仕事だ。私も何度か稼がせてもらった。

 ティナの魔力はかなり多い。常時ゾエロ(纏身)を使っているせいか魔術を使い始めるとすぐ枯れるが、それでも私並みにあったりして。いや、自分の魔力量ってはっきりとは見えないんだけどさ。感じるだけだ。


「新しいのって腰の奴?」

「おう、このゆらゆらした刀身がなぁ……美人さんだろう?」

「ちょっと何言ってるか分からないです」


 にへらと顔を崩すティナ。あ、そういう趣味の人だったのね。

 このダガー、フランベルジュって言うんだっけ。炎の揺らめきを思わせる刀身から来た名前だったはず。やっぱり派生先は炎だよな、R2の出が早いのも好きだ。……またやりたいな。

 というかこんな小さいのでもフランベルジュ加工っていうの?が出来るのか。大体のゲームじゃ両手剣で出てくるからそのイメージが強い。サイズ的にはクリスだけど凸凹してるしフランベルジュだよなぁ……。


「こんな小さいフランベルジュあるんだね」

「このサイズはアタシも初めて見た。だからつい、な」


 やっぱフランベルジュ扱いで、そして珍しいのね。しかし見れば見るほど凶悪だ。こんなので切られたら本当に肉を抉り取られそう。……反面、手入れも大変そうだが。


「これで切られる相手は可哀想だね」

「そういう事言うなよ、やり辛くなる」

「ティナにも赤い血が流れてたんだ」

「あん?」

「じょーだん」


 ゴブリンついでに今度の緊急クエストの再確認をしておこう。また大角兎の出現地点までは時間もあることだし。


「ゴブリンの緊急クエストは5日後だったっけ?」

「あー……えっと?」

「バカティナ、そのくらい覚えとけよ!ったく……その通り、5日後だな」

「アタシは"バカ"だからそういうのは分からん!任せた!」


 てぃな は にげだした!!


「具体的に何をするの?そりゃまあ、ゴブリン狩るのは分かるんだけど」

「いや、詳細はまだ出てない。……近頃のクエスト的に多分野営地へ攻めるつもりじゃねえか?」

「あー確かに」


 最近ゴブリン野営地の調査だのなんだのというクエストがちらほら見えていた。最初は7級扱いだったものの、暫くすると6級向けの詳細調査と討伐が出ていたのを覚えている。

 なるほど確かにその線が強そうだ。……野営地ってどのくらいの規模なんだろう。数匹、ではないよなぁ。


「ま、なるようになるだろ」

「お気楽だねー」

「今考えたって仕方ねぇしな」

 や、やっとゴブリン大戦まで来た……初期プロットとはだいぶズレる形になっていますが、要素としては本章1の折り返し地点です。

 来週からは通常更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。