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十四話 氷の礫

2020/09/19 誤字修正

「あいつらまだかな」


 ティナが愚痴る。何度目だっけ?


「受付に何のクエスト受けたか聞いてみっか」

「確かそれ、教えてくれないよ?情報機密が云々とかで」

「えー」


 そこらへん、地味にしっかりしてるんだよなぁ、ちょっとめんどくさい。

 プルムジュースを一口。労働者時代を思い出す味だ。美味しいから結構好きなのよね。


「あのハゲの言ってたこと、本当かね」

「こら」


 ハゲ試験官曰く私は戦闘力だけなら4級までは堅いとのこと。それは現時点での話なのか、あるいは将来的な話なのかは分からなかったが、とにかくそういうことらしい。

 4級と言えば1つ目の壁と言われる5級よりも高いクラスだ。この前のイッちゃってる魔法使いよりも2つ上。ありえるか?


 そもそも5級に壁があると言われている。6級までは誰でも鍛えれば昇れるらしい。しかし5級に指定される魔物からは話が違ってくる。ダンジョン由来と考えられている厄介な魔物が増えるのだ。

 具体的には土人形(ゴーレム)粘性生物(スライム)なんかのRPGっぽい奴ら。個人的には非常気になる、見てみたい、見てはみたいものの反面少し怖い。特に粘性生物(スライム)なんて竜の依頼のせいで雑魚なイメージがあるが、絶対にそんなことはない。

 そもそも古いゲームだと後半出てくる物理耐性だのがある面倒な敵ってイメージがあるし、現実で考えればもっと厄介だ。あんなのが顔に張り付いたら窒息死確定じゃないか?

 土人形(ゴーレム)も大体のゲームじゃ強い気がするからやっぱり苦戦しそう。魔術師としてはどうなんだろ?水掛けたら脆くなったりしないかな。泥人形になったりするのかな、しないか。


 そんな奴らと現状で戦えるか?1人ではまず無理だろう。ってことはやっぱり将来的な話なのかな。

 冒険者の2つ目の壁と呼ばれるのは3級、ここからは竜なんかも出てくる。エリアズも単体なら3級扱いだ。あいつら群れるから基本的には2級だけど。

 将来的な話というのであれば、そんな2つ目の壁である3級ではなくその下の4級と言われてしまったのはむしろ残念。別に最強になれるだなんて思っちゃないけど、こんななりでも芯の部分は男の子なのだ。出来れば強くなりたい。


 もう1つ、氷魔術について。魔言はウィニェル、氷や雪と訳せるが本によると霧散という意味もあるらしい。消滅魔術か?強そう。

 風のウィーニに水のエルでウィニェル。実に分かりやすい。ウィニェルが使えるって事はエルィニも使えるんだろうか?今度試してみよう。こっちの意味は雨だの嵐だのと天気っぽい奴らなんだけど、これは戦闘には使えそうにないな。

 使用魔力は現状で滅多に使わない属性魔言エレス(土よ)と比べても4倍以上ってとこか?あんましコスパよくない。そもそも氷作って投げるなら石のが強そうだし。

 あれ?これ要らない子じゃね?咄嗟に使ってみて使えちゃったわけだけど使い道あるんだろうか……というか複合属性魔言全般微妙な奴が多い気もする。

 火と水でのエルィチなんて爆発系らしいけど、ウズドっていう爆発そのものを発生させる魔言あるし……うーん?マジで要らない子?まぁ使える手が多いのは良いことかもしれないけどさ。


「おーい、アンジェリアさーん?」

「ん、何」

「話聞いてた?」


 悪い癖だ、また考え込んでた。これだけは転生しても変わらないなぁ。

 一言謝り、何の話か聞き返す。


「だからよ、複合属性の使い方教えてくれってんだよ」

「えっ知らない」

「さっき使ってたじゃねーか!」


 そういう流れだったのね。悪いけど私にもよく分からない。風と水をよく使っていて、風と水の複合属性である氷の魔法を目の当たりにして、そんでピンチだったから使ってみたら撃てちゃったのさ、と素直に伝えても納得してくれない。

 かといって勝手に練習されても困る。ユタとは違いアルア(他者より)はとてつもなく苦手なのだ。他人の魔力なんて見えはすれどいじれない。兄より優れた弟など存在しない。いや、妹か?


 ああ、また騒ぎ出した。だからやり方分からんちゅーに。カク!レニー!早く帰ってきてくれー!



◆◇◆◇◆◇◆



 男子組は夕方、閉門ぎりぎりというタイミングで帰ってきた。別の2人組と合同でクエストを受けていたらしい。

 2人が報告を終え、パーティを解散したタイミングで声を掛ける。


「7級なったぜ!」

「ほう、やっと俺のラインに来たか……」

「なんだこいつ」


 なんかカクのノリがいつもと違う。やったか!とか普通に褒めてくれると思ったらなんだこいつ。


「明日には治る」

「なんか悪いものでも食べたの?」

「呆粉にやられた」

「何それ」


 クシャルバタフライという、別名呆蝶(ほうけちょう)とも呼ばれる珍しい蝶。この蝶の鱗粉を体内に取り入れるとパッパラパーになるらしい。

 名前すら聞いたことなかったけど……なるほど確かにこれは酔った時のカクに近い気がする。この前一緒に飲んだ時も結構変なテンションだった。しかもそれでいてすぐ泣くから困る。


「今日はカロチをな」

「カロチ?」

火蛇(フィラルスネーク)だ。短いほうが、呼びやすいだろ?」


 へぇ。呪人大陸の方の言葉かと思った。そういえばレニーってカクと幼馴染とか言ってたな、じゃああっちの大陸の言葉なんて分かるはずないか。


 お互い今日あったことを簡単に話し、そのまま解散。ちなみにカクはレニーが引き取った。



◆◇◆◇◆◇◆



 翌日、今日も朝からギルドへ。もはや習慣になってきたぞこれ。


「おう。7級おめっとさん」

「今日はシラフなんだね?」

「あー昨日はな悪かったな、だから森は嫌なんだ」


 昨日、2人は弓使いと斧使いのペアとパーティを組んだらしい。物理一辺倒だな。その途中、例の蝶がたまたま現れ、捕まえようとしたカクが骨抜きにされたんだと。バカみたい。


「さて、今日から私も7級なのだよ、先輩(・・)?」

「へぇへぇ凄いこってす。んじゃクエスト決めっか」


 流された。



◆◇◆◇◆◇◆



 受けたクエストは火蛇(フィラルスネーク)討伐。昨日、うちの男衆が調査を終えたので本格的に狩ってきて欲しいとのことだった。

 昨日に続いて今日もかよー!と騒ぐカクを引っ張り、大森林へれっつごー。


 大森林は思いの外暗かった。最初こそ明るいものの、少し奥へと足を踏み入れるだけで薄暗くなるのだ。マイナスイオンたっぷり~☆とか言える状況じゃない。それに歩く道も獣道だし、何故か非常に蒸し暑い。ここだけ熱帯雨林のようだ。

 聞けばダンジョンから溢れ出す魔力によって気候がズレ(・・)ているらしい。ダンジョンねぇ……。確か5級から受けられる依頼だよね、ダンジョン系。別に受けずに入ってもいいけど、それで死んでも文句は言うなってことらしい。

 逆にいえばギルドでクエストを受けてダンジョンに挑む場合、支援要請魔道具を渡されるんだとか。なんでもかんでも魔道具だ。いちいち"魔"を付けるのがアホらしくなるくらい、この世界は魔道具で溢れてる。

 そういや昔練習に使ったランプ、それから録石。あれらは魔流具ともいうらしい。魔石を使わず直接魔力を流す道具のことなんだとか。魔、魔、魔、魔……ゲシュタルト崩壊するぞ?


 閑話休題。

 大森林はダールから意外と近い。この前土蟲(ワーム)を狩った森よりも少し遠いくらいだ、だが中に入れば話が違う。木々が空を覆い鬱蒼と生い茂る……樹海かな?首吊り死体とか見かけたらもらしちゃうぞ。

 暗さと足場の悪さ、それに特有の蒸し暑さが組み合わさり体力がごりごり削られる。入って20分程でゾエロに頼る始末だ。こういう時、レニーは凄いと感じる。魔術も使わず肉体だけで、しかもあんな重そうな盾を背負って歩くとか考えられない。

 逆に異常な魔力濃度のおかげかゾエロの維持は楽だ。というかほとんど魔力を使っていない。……魔力って皮膚呼吸かなんかで補給されるんだろうか?


 そうこうしているうちにカクが反応する。ちなみに私の魔力視はほとんどオフだ。空気自体の魔力が非常に濃く、強めると全く何も見えなくなるからね。

 私達は戦闘準備へ。先頭をカク、次がレニー、3番手が私で1番後ろがティナ。最近無言でこの形になるようになった。これで歩いたら竜の依頼になっちゃうぞ。


「水弾!」


 カクのサイン、水魔術を放て。無詠唱の出来ない私に代わり、ティナが放った。目標までは20mはあろうかという距離だが、当たったようだ。蛇特有の威嚇音が空気を震わせる。


「大きいな、火に気をつけろよ!」


 5mは越えようかという大蛇と戦闘が始まる。

 とはいえ大毒亀に比べれば正直弱い。唯一気をつけるべきは口からの火炎放射だが、口を空けた瞬間ティナが水弾を打ち込むせいで全く見れない。

 カクはヒット・アンド・アウェイで蛇の体力を削っている。レニーだけは私の護衛みたいな感じになってるけど、実は結構ありがたい。さっきからターゲットがずっとこっちなのだ。


ウィニェル・ダン(氷よ、穿て)


 氷の礫を作り、火蛇に放つ。土弾に比べ魔力の消費が激しいだけの劣化品かと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。土弾と違いかなり薄く、そして重く出来る。

 恐らく相性もあるのだろう、風と水の魔術は他の魔術に比べ魔力消費が少ない。さらにいえば土魔術なんて日常生活で使うことなんて滅多に無いし、慣れもあるのかもしれない。土魔術ももっと使わないとな。


 硬度を上げ、それでいて薄く、平たな氷弾を放つ、放つ、放つ。首の付根を狙い続ける。

 蛇に当たるたび、鱗が裂け血が弾ける。怖いのはカクに当たることだが、あいつは気にせず撃てという。実際全部避けてるっぽいし、言われた通り気にせず撃つ。


 5発、たった5発だ。累積した切り傷からか蛇の動きが突然止まった。頭はまだ動いているが体が動いていない。背骨でもやったのかな。

 カクのダガーが紫色に光り、火蛇の胸に数度突き立てられると火蛇の生命反応が途絶える。トウ()系でも使ったのかな。魔力は少ないものの、器用に色々使えるのがカクだ。


「うっしまず1匹。蛇は余すこと無く食えるんだよなー」

「あーアタシも蛇の肉は好きだな」

「脳のチーズ蒸しとか最高だよな!」

「……いや、それはねえわ。普通にグロい。つーか脳って食えんの?」


 結局この日は7匹討伐した。火蛇は果実食性であり、人を食べることはほぼ無いからか肉も売れるらしい。さすがに2匹しか運べなかったが、これでも非常に重く、帰りはよったよったと亀の歩みが如くだった。


 実は大毒亀より強い魔物って7級までには居ないのかもしれない。なんちゃらスパイダーとかなんちゃらベアーとかは6級だしね。

 今までナイフって書いてましたが、カクとティナのは正しくはダガーですね。今後はダガーで統一します。過去話の修正は気が向いたら……。


 実際の蛇に草食性は居ないらしいです。果物食べてる蛇とか想像するだけで可愛いのになぁ。

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