表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/270

二十四話 それぞれの夜

 ふむふむ。魔力受容体がかなり発達していますな。そのくせして細胞自体は変化に寛容であると。

 確か前情報によると呪人(セクセル)との事ですが……これは呪人と魔人(マジケル)の間の子みたいな特徴を持っていますな。

 いや、いや。そうではなく、両者のいいとこ取りと言った感じですか。これはまた面白い。寿命はどちら基準でしょうか……。

 まあつまり、呪人に対して放たれた魔術が想定外の受容体の多さに例外的な反応を起こし、結果的に訳の分からん事になったといったところですか?よく分からないですな。


 つまり、これは罠を仕掛けた主ですら考えても居なかった挙動。逆に言えば、対象を見誤ってしまうような程度のダンジョンマスターが管理しているダンジョンのトラップだと言うことでもあります。

 しかし確かにこの子の体質は特殊。本来ならこのトラップは致死転移系のトラップだと考えられますか。となれば多量の細胞の死によってこの子の体が防衛機能としての退化を選び、転移に対してはそのまま受け入れた、と説明が付けられます。

 では何故衣類が残されているのか。これは推測になりますが、恐らくそのトラップは装備は転移させない物だったのでしょう。では何故装備を残すか?推測に推測を重ねる形ではありますが、探索者或いは冒険者を狩りつつ、たまにドロップ品を渡した上で吐き返す事で、おいしい装備が手に入る可能性があるダンジョンとして更に次の獲物を得るための……要するに釣りのような物を行なっていたのかもしれません。


 これが正しければダンジョンマスターの存在を肯定する事になりますが……おや、男の子が話しかけてきていますね。お腹でも空いたのでしょうか。

 しかし生憎私は家事全般が苦手であります。この時間だと酒場くらいしかやっておりませんが……まあ、軽食くらいなら取れるでしょう。そういえば私もここ2日程食事を忘れていましたし、そろそろ摂っておかないと体に悪いですね。となれば答えは1つ。この男の子と深夜デートでもかますとしましょうか。



◆◇◆◇◆◇◆



 ……僕は捨てられた。何もない。すっからかんだ。あ、お腹もすっからかんだ。おばさん、ご飯食べたい。



◆◇◆◇◆◇◆



 少年が連れ去られてしまった。しかも実の父に。ちょっと言い方悪いかな。いいもん拗ねてるだけだし。

 良い退屈しのぎだったのに。なんて悪びれてみても、やっぱり気になる。結局あの後どうなったんだろう。ロニーはまだ帰ってこない。


 セメニアと別れ、父を見送り、母に寝ろと言われ。今はこうして自室のベッドで今日1日を振り返っているわけだが、確かに子供の出る幕ではなかったんだろうな、と思う。

 じゃあ自分は何故あの子の事が気になったんだろう。自身の特殊な生い立ちのせいだろうか。そもそも私は前世でも基本的には無関心主義だったはずなのに。こっちの世界に来て、性格や考え方が多少変化してるのも自覚はしている。ただ、今回は自分でも驚きの行動力だったな、と振り返る。


 ……うん、やっぱり早めに字の習得をしておきたいな。この世界での紙は思ったより高くない。が、さすがに前世よりは高い。それでも、ノート1冊分程度なら大銅貨1枚でお釣りが出る。そりゃ、現状うちは金に余裕があるとは言えないだろう。とはいえ、困窮しているわけでもないし、ユタが家から出たことによって浮いた金もあるだろう。その部分で少し、ねだってみようかな。


 紙とペン、それからインクを手に入れるには、やっぱりロニーの協力は不可欠かな。今日の一件で、私の本への興味は十分知ってもらえたはずだし、字の練習だのと言えば多分買ってもらえる。よね?

 ああ、手元に紙とペンさえあれば考えをメモしていくのに。こういう時、自身の幼い体を恨む。と同時に、日本語と英語という解読者がまず居ないだろう言語を2つも扱える自身のアドバンテージも大きいのかもな、なんて眠くなり始めた頭で考え続ける。


 ああ、今日はロニーは帰ってこないのだろうか。事の顛末が気になる。のに、疲れた体は正直だ。


 眠い時に物を考えるのは……ちょっと、嫌になる。



◆◇◆◇◆◇◆



「ただいま、だいぶ遅くなっちゃったね」

「おかえりなさい。浮気でもしてた?」

「そんなわけないだろ。お腹空いたよ。何かあるかい?」

「勿論、用意してるよ」

「さすが」


「うん。おいしい」

「で、その子はテルーちゃんに預けてきたの?」

「現状それが1番いいかなと思って。というか、他に心当たりが無い」

「ふぅん……アンにはちょっと荷が重いよね、それは」

「ああ。というより、僕らにも重い。まあテルーならなんだかんだ面倒は見てくれるとは思うけど……」

「問題はあの子がかなりズボラってところかな。たまに様子を見に行かなきゃね。私がここで何を言っても意味無いけどさ」

「あれ?拗ねてる?それとアンは?」

「いーえ?食べ終わったら食器洗っちゃってね。アンならもう寝てるよ」

「分かったよ。ああ、今日はなんか、どっと疲れた。」


「サン、寝ようか」

「そうね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ