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二十話 古物商1

2021/06/06 一部描写の変更と追加。

「なんとなく分かるけど、中々全部は……ってこと?」

「そーだねー。大体エレルがこっち来る事無いし」


 エレルと言うのは、エレヒュノイズ人の総称らしい。例えば私達ダニヴェスの国民なら、ダニルとなる。日本に住む人を日本人というようなもんだな。

 雑に言えばエルで人を表すので、国名や地域名にエルを付けて○○人と呼ぶ。英語とは、勿論日本語ともちょっと発音も違うが、だいたい-eleの発音に近いか? 発音記号はさすがに覚えてねーや。


「じゃあ、さっきの私の言葉も、セネ語ってこと?」

「お嬢ちゃんの言葉は私には分からんかったよ? なんか、魔力がふわってしてるのは分かったけど」


 あれ? おかしいな。私の仮定が正しければ私は神様からのチート能力で言語能力ステータスMAXのはずなんだが。

 ……冗談は置いておいて、理由は分からんが少年に通じる言葉、つまりセネ語を話していたと思っていたんだが、彼女には通じていないようだ。これはどういう事だ?

 それに、魔力を感じたと言う。私にも感じられる魔力の変化だ。大人の彼女に感じられないはずはない、か。だとすれば、何故私は彼と意思疎通が図れている? どうして私の言葉は伝わって、セメニアの言葉は伝わらない?

 それだけじゃない。私の言葉が伝わるのは魔力的なアプローチでなんとかしているにしても、何故私は彼の言葉が理解出来る? もし本当に神様からのチート能力なら、私は生まれたばかりのときから周りの言葉が理解できたことになる。でも実際はそうじゃない。これは努力で手に入れた言葉だ。


 多分、今考えても答えは出ないんだろうな。そんなこともあった、とするしかない。今の私には、答えを知るための材料が足りてないんだと思う。……彼女なら「紙」を用意出来るかもしれないし、ちょっと聞いてみようかな。記憶が失われるって言うんだから、今のうちに覚えてることを書き連ねたい。他の人に見つかっても、適当な言語をでっち上げればいいだけな話だし。


「これは……難問ね!」

「うん、確かに……どうしたらいいのかなぁ」

「お姉さん的には、こーゆー面倒な問題は大人に任せてもらえるといいんだけど?」


 ぼーっと考えてたらセメニアの一言で現実に戻された。今はこの男の子だ。何故私がこの男の子に気がかるのかは分からないが、とにかく助けたい、と本心で感じ始めている。多分、私と似た境遇……つまり、何も分からない場所で言葉も通じないと言う境遇を哀れんでいるんだと思う。ちょっと驕ってるか?

 いっそ大人に任せちゃうのが1番なんだろうな。彼女は男の子の言葉を理解できるようだし。


「ダメ! せっかくアンがやる気出してるのよ!?」

「へー君はお姉さんなの?」

「違うわ! 私はアンの……友達よ! それに、私にはセメニアって名前があるんだから!!」

「そっかそっか。セメニアちゃんはアンちゃんのお世話を見れて偉いね。普段あんまりやる気ない子なの?」


 外野がうるさい。つーかセメニアよ。私はそんなに怠惰かね。割りとやる気に満ち溢れた子供を演じきれてると思っていたぞ……魔術関連に関しては全力だし。

 そもそもセメニアと仲良くなったのだって公園で魔術練習してた時だったし。こと魔術に限定すれば私は結構全力だ。……あれ? それって普段は全力じゃないってことになるな?

 ……まあ、いいか。今はそんなのよりも男の子……いや、話が本題からズレた今ならアレ(・・)を要求しやすいかも。


「ねぇお姉さん、さっき言ってた本、見せてもらえたりしませんか?」

「うーん……本って言っても、たくさん言語があるからなー。どれがいい?」


 どれがいいと言われても、私には分からない。だって、そもそもこの世界に生まれてから、文字とは数字だと思っていた1人だ。日本語か……せめて英語で書かれた本でもあればいいんだが。英語はペラペラってほどでもないけど、読み書きならほとんど完璧に出来ていた。前世における典型的な日本人だな。私の場合はゲーム由来だが。

 まあそれでも何かしら本を見せてもらえるっぽいのは大きい。前世と繋がりのある文字があったりしないかな……無いだろうな。そもそも数字の数え方が違うんだ。16進数なんざ一般人には分からんだろ。私はちょこっとプラグラミングに興味を持ったせいで理解自体は出来るけども。


「文字? って言うのがよく分かんないから、いっぱい見てみたい」

「んー……まあアンちゃんだしね。特別に良しとしてあげよう!」


 何故私だから良いのかは分からないが、とりあえず何かしらは見せてくれるみたいだ。子供だからどうせ読めねーし、見せてやってもいいだろう的な感じかな?


「アーンー……この子の事は?」

「うー……ほ、本になんか書いてあるかなって?」

「え、文字読めるの?アンのパパママって貴族なの?」

「え、なんで貴族?」

「ふふん、アンも知らないことあるのね! きぞく(・・・)の人たちは文字が読めるのよ! だからアンもきぞく(・・・)なのかなって……って、つまりアンはへーみん(・・・・)?」


 多分私はへーみん(・・・・)だろうな。だって、あの両親だ。確かにロニーはいい仕事についてそうだけど、あくまで武術指南だろ。元冒険者って言ってたし、腕を買われて雇われてるだけだ。サンはあんまり何かしてるイメージないし。

 ってことは多分、2人共平民だろうな。その2人の子である私も勿論平民だろう。


「平民だと思うよ? でも、知らないことって興味あるじゃない?」

「……ふーん?私はそんなの、どうでもいいわ! それがこの子の秘密に繋がるってわけでもないし!」


 価値観の相違が激しい。……ま、ちびっ子なんてどれもこんなもんか。

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