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十八話 空虚の子

2021/06/06 一部描写の変更と追加。

「ママー!行ってきまーす!」

「気をつけてねー」


 母に別れを告げて、私は家を出る。砂と草が目立つあの場所へ。



◆◇◆◇◆◇◆



 なんて壮大な事は無く、今日は特にすることがないので公園へ行く。公園と言っても遊具が有るわけでも無く、ただ開けた空間にベンチが置かれているだけだ。それでも、公園を囲うように並ぶ屋台のおかげか、午後には人が割りと居たりする。昼はすっからかんだけど。

 あ、もちろん移動中にも魔力を纏わせ続けている。これを続けたら闘気が無くてもなんとかなりそうな気がしなくもないのだ。しなくも……多分ならないんだろうなぁ。


 そんなすっからかんな公園に来た私は、いつもの通り砂場に向かう。魔術練習の一環として土を砂に変化させただけの簡単な物だが、これが小さい子達に大受した。やっぱり砂場は大事なのかも?

 砂場の砂を集めて、泥団子を作る。発水の魔術の練習ではあるのだが、傍から見ればただの一人遊びしている子供だ。変に怪しまれたくはない。


 3、4、5……と、7個目を作ってる途中で、疲労感が強くなってきた。ああ、この感覚は魔力の消費量が増えてきてる時の感覚だ。水の維持だけとは言え、重複して魔術を発動させるとこうなる。

 それでも、いつか必要になりそうなので続ける。



 とは言え限度もあるもので、7個目を作り終えたところで休憩する事にした。魔力の放出を止めると、さっきまでぬらぬらしてた泥団子が、急速に乾燥していく。

 魔術を終了させると、水や土といったものは魔力へと戻ってしまう。今回は自然の土と魔術の水を使ったから、ただの土だけになったってことだ。

 ああ、水をずっと見ていたら喉が乾いた。サンから貰ったお金で何か買うとしよう。


 この世界の数字は、残念ながら元の世界とは違い、十進法ではないらしい。或いは魔人(マジケル)が、この街が、この国が、なんて可能性もあるけど。四進法、或いは十六進法だ。

 文字をほとんど使わないこの世界でも、数字くらいは店で見かける。その数字の形のせいかは知らないが、残念ながら十進法ではない。だから前世持ちとしては、ちょっとややこしい。


 ポケットに入った数枚の硬貨は中銅貨と呼ばれているもの。8枚で昼食1食分だと言うのだから、1枚辺りの価値は100円とかそのくらい。中銅貨は16枚で大銅貨に、逆に1枚の中銅貨は16枚の小銅貨になる。中銅貨を100円とするなら小銅貨が6円、大銅貨が1600円ってところだろうか。

 小銀貨以上は見たことがないので分からない。分からないが……この分だと16枚で次の硬貨になるのだから、金貨ともなれば凄まじい価値になっている気がする。

 銅貨で3種類ってことは金銀銅があるとしても全部で9種類だろ? 小銅貨の6.25円掛ける16の8乗だから……あ、これあかんやつや。


「何書いてるの?」


 と、数字に絶望していると声が掛けられた。集中しすぎて周りが見えてなかったらしい。砂場に書いてしまった数式を慌てて掻き消して――。


「お絵かき」

「面白いの?」


 聞き覚えのない声だとは思ったが、見てみれば本当に知らない子だ。こんな子町に居たかな。


「面白いよ。君は誰?」

「分からない。君は?」


 小さい子だからこそ、単刀直入に聞くと言うのが手っ取り早くて効果的だ。……と思っていたのに分からないとな。お主何者じゃ?


「私はアンジェリア。アンって呼んで。パパやママは?」

「アン……アン。うん、気付いたらここに居たの」


 これは……迷子か。見かけたことのない子だし、なら近くの大人にでも押し付けたほうが早いか。

 厄介事はごめんだしな。今はもう少し数字いじりを楽しみたい。


「そっか、じゃあ見つけなきゃ――」

「アンじゃない!」


 謎の男の子と話していたら、今度は聞き覚えのある声が。

 赤毛とそばかすが特徴的な私の数少ない友人、セメニアに見つかったらしい。


「何してるの? その子誰?」

「お絵かきしてた。この子迷子なんだって」

「へー、あんた名前は?」

「? アン、助けて」

「はあ? アンはこっちでしょ? あんたもアンなの!?」


 喋りつつも距離を詰めてくるセメニアに対し、男の子はたじろいでいる。ちょっと可哀想かもな。


「怖がってるよ。あんまり脅かさないで、セメニアちゃん」

「別にいーじゃない! で、あんた誰?」

「アン、彼女なんて言ってるの?」

「もしかして喋れないの?」


 ……あれ? 男の子とセメニアが会話出来てないぞ。いや、男の子だけが別の言語を扱っているような反応だ。じゃあなんで私だけが分かる? あれ?


「私の言葉、分かる?」

「うん、分かる」

「君は本当に、どこから来たか分からないの?」


 うん、私と男の子の会話は成立してる。んでセメニアは――


「ちょっと! 2人して何言ってるか分からないじゃない!」

「しー」


 分からないらしい。これは一体どういうこっちゃ?

 とりあえず今はこっちに集中しよう。セメニアにはちょっとだけ静かにしてもらって、彼と話を続けることにする。

 あんまりうるさくすると大人に怒られて大変だからな。男の子も怯えてるっぽいし。


「うん、気付いたらここに」

「んー……記憶喪失って奴なのかなぁ……? 詳しい大人に診てもらったほうが良いかも」

「僕は病気なの?」

「もしかしたらの話だよ。とりあえず、行ってみよ?」


 なーんか面倒な事に巻き込まれた気もする。ここんところ平和だったのになあ。

 さて、どうやってセメニアを納得させるべきか。……いや、諦めよう。今日はもう数字じゃ遊べそうにない。セメニアが「新しいおもちゃを見つけた!」って顔してやがる。

 ……リーダーでも押し付けるか。


「カクカクシカジカなのよ。だからセメニアちゃんも一緒に行こう?」

「オッケー! ならこっちよ!」


 こういうお転婆タイプには、形式上のリーダーを任せておけばグズらないのを私はよく知っている。子供達だけの大冒険が始まる。なんつって。

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