十五話 ロニーの剣術1
「パパ、剣教えて」
帰ってきたロニーに、唐突に、お願いしてみる。
「ただいま。いきなりだね。前にも言ったけど、剣なんて学んでどうするんだい?」
「ユタにも教えてたじゃん」
「うーん……アンも冒険者になりたいのかい?あんまりオススメはしないよ?冒険者ってのは、こう言ってはなんだが……」
そこで言いよどむロニー。
「まあ僕の子だし、そうなるか。うん。いいよ。でも教えるとなったら、僕は厳しいよ?」
「ありがとう!あ、おかえりなさい、パパ」
「順番が逆だよ……ハハハ」
私はこうして無事剣術を教わる約束を取り付けた。
◆◇◆◇◆◇◆
最近……いや、生まれてからずっと、魔術に触れ、魔術を教わってきた。でもファンタジーなら剣もまた鉄板だよね?
でもロニーが訓練してるのを見ていると、ちょっと流石に気が引けてしまう。私は人間だ。あんな化け物じみた動きなんて出来るはずがない。それにまだ1歳だったし。
暫くするとユタがロニーから武術を教わっていると聞いた。ユタはロニーをべた褒めしていた。本の虫のようなイメージのユタがついていけてるのなら、私にも出来るんじゃないかな?なんて考えてみたり。
そしてユタが家を出た。つまりロニーはその分の時間が空いているはずだ。今ならお願いしてみたら教えてくれるかな?体は女でも心は男だ。多分。
男の子はそういうものに憧れるのだ。少年心はいくつになっても失われないのだ!いやまだ合わせて30歳だけど。いや当時は28歳か?25+3だもんな、うん。
確かサンに街の外に初めて連れて行かれた日だったかな。帰ってきたロニーを捕まえて剣教えて!と聞いたのは。
その時はサクッと断られてしまった。理由は簡単で、"3歳の子供にゃ無理だ"って感じの理由だ。まあ魔術に飽きてきて気分転換的な感覚でお願いしちゃったがバレてたのかもしれないが。
5歳になった。もう体も完全に自分の物になっている。多分ピアノだって折り紙だって出来るはずだ。いやピアノは弾けねーけどさ。
魔術も順調……まあ、人並み以上には扱えてるし、問題はない。全てはあいつが悪いのだ。
とにかく、ちょっと躓いちゃってるので……と言うのもあるが、体術は体内を流れる魔力を把握するのに役に立つ!……いや、これもユタが言っていた事だが。ユタが言うんなら間違いないだろう。実際そのとおりだとも思うし。
と言うわけで魔術のために剣術を学ぼうと思うのだ。いや剣に限らず槍でも斧でも良いんだがな。なんとなく剣がいいなと思っちゃうのは男心なのだ。許せ体よ私は心は男の子のままなのだ……そう信じたい。
色々言い訳なんかも考えてみたわけだが、ロニーは結構簡単に許可してくれた。ラッキー!
……その時の私は知らなかったのだ。剣術というのがどれだけ辛いのかと言うことを……!!
その証明に、今私は空を見て寝そべっている。いや、もう立てないのだ。筋トレってこんなに辛いものなのね……確かに前世でもあんまりしてなかったけどさぁ……なんか、足が動かぬ。もうだめぽ。パパおんぶして(25歳:男性)。あ、キモいな自分。
◆◇◆◇◆◇◆
ロニーが剣を教えてくれると言った次の日。私は街の練兵場に連れてこられていた。ロニー権限で借りた……と言うわけでもなく、冒険者ギルドの設置された街では、兵士達が使っていない時には開放されているらしい。
現に周囲ではポツポツとだが人が居る。中には動物……魔物?っぽいのも居る。残念ながらアノールは居ないが……あれ可愛いのになぁ。広さ的にはサッカーグラウンドくらいかな?結構広く感じる。
ロニーと空いてる場所を適当に見繕い、訓練を始める。
「と、その前に。どのくらい魔術は使えるようになってる?」
「……2術まで。でも魔言は色々知ってるよ」
「それじゃあ魔力は?」
「んー?自分の量はちょっと分からないけど……普通に使ってたら魔力が切れる事は無いかなぁ」
「ちゃんと練魔してるみたいだね。じゃあ全ての武術の基本……筋トレから始めようか」
あーやっぱりそこなのね。女の体なのであんまりムキムキにはなりたくないんだが……腹筋萌えの人とかも居るしいいか。つーか別に結婚とかしたくないし。男と結婚とか地獄やん?
そこから一通り体を動かし、温まってきた辺りで筋トレ……ストレッチか?が終わる。
「よし、一旦はここまででいいかな。それじゃあ次は闘気だ」
「闘気?」
「試してみようか。僕の体に火球を撃ってみて。大丈夫、怪我はしないから」
「えっ……うん、低級火球撃つよ。リチ・ダン」
ユタも似たような感じで色々教えてくれたなあ。ロニー譲りなのかな、なんて考えつつ、小さめの火球をロニーに……直撃した。は?ロニー??
「パパ!大丈夫!?」
「全然大丈夫さ。闘気と言うのは肉体強化術の1つで……魔人なら多かれ少なかれ皆やってるんだけどね。それを意識的に使えば、こんなことも出来るんだ」
そういったロニーは片足を上げ……足を降ろした下にはサッカーボールくらいの岩があった。え、今何した?
「今魔術でこの岩を作ったんだけど、アンはこれを壊せる?」
「え?……やってみる」
いきなり壊せって言われても。岩か……放出量を限界まで絞りつつ放出速度を上げれば発水をウォーターカッターみたいに出来るかな……。
魔力を糸のように張り詰め……消失までの時間は短くても問題無い……集中して……。
「エル・クニード!!」
私の手から水が勢い良く放たれる。
一旦切ります。