十二話 それから
12/21 サブタイトル間違えてたので修正
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魔術の練習を繰り返し、ユタの誕生日やなんやら色んなイベントはあったが、今年で私は3歳だ。
毎日の訓練の成果か、同年代の子よりも保有量の高い私の魔力は発生系だけでは使い切れない。かと言って大量に魔力を使うような魔術は、街の中では使えない。だから今日も、魔力を纏わせつつ録石を読む事で魔力の操作と消費を同時に行なう。ちなみに発案者はユタである。やっぱあいつぱねぇ。
あれから2年が経った。それなのにロニーの失われた魔力は戻らない。
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「ただいまー」
「ユタ兄、おかえり!今日はね――」
ユタが学校から帰ってきた!
早速捕まえ、今日行なった訓練の成果を報告する。今日はエル・クニードを5分程維持出来ただとかそんな感じの話である。
そんな話をしつつ、帰ってきたばかりのユタを庭に連れていく。
「新しい魔言!」
月に一度、ユタは魔術に使われる魔言を教えてくれる。魔言はその音を知っているだけでは2割もその力を引き出せない。むしろ暴走してしまう事もある。と言うか何度か暴走させたことあるしな……。
だから魔言の音と意味、その成り立ちや魔力の動きなんかを詳しく理解するためには月一で、とユタに言われているのだ。
庭とは言え借家……というか長宿なのでそんな広いものではないが、屋内で使うよりかはマシだ。
「うん、じゃあ今日はキュビオだね。これは今までの魔言とちょっと違うから……」
「どう違うの?」
「魔力の流し方によって性質がかなり変わるんだ。まずはズビオをイメージして……いや、実際に見せたほうが早いよね。アルア・ゼロ・ゾエロ」
詠唱に合わせて、周囲の魔力がユタの左手へと集まる。
「そして……ウィーニ・キュビオ」
両手を近づけ、そう唱えた途端、魔力が右手へと吸い込まれて……消えた。
「まずこれが消失としてのキュビオだね。次はこれ。シト・イゲキュビオ《この者、強く抑えよ》」
」
ユタの魔力が私に手に纏わる。
「なにこれ?」
「んーっと……魔纏とか発水なんかを唱えてみて」
「?うん、エル・クニード」
毎日使う魔術だ。適当な量の水が出るように指定して……あれ?出ないぞ?
「あれ?出ない」
「これは魔術を阻害する魔術なんだ。封魔具とかに使われてるね」
「知ってる!お店とかに飾ってあるやつだ」
「そうそう、喧嘩とかを防ぐための魔道具だね。さて次は……アン、魔纏を唱えて」
「え、うん。ゼロ・ゾエロ」
「ありがとう。じゃあ撃つよ。……ウィーニ・キュビオ」
「撃つって!?」
さっきのユタに合わせ、左手に集める。集めきったところでユタが手を私に向け、詠唱する。
同じように私の魔力がユタの右手に流れ……あれ?なんか魔力が……。
「これが転移としてのキュビオだね。相手の魔術を操れるようになる。しかも、魔力は相手が消費し続ける」
「ズルい魔術だ!……これいつ解けるの?」
「アンが魔力の供給を止めれば終わるよ。だからあんまり使わないね……古い魔道具の魔力を移し替える時なんかに使うらしいけどね」
「へー」
魔纏を解除したらユタの魔纏が消えた。確かにこれはあんまり使えないんじゃ……まあ知ってて損は無いよね?
「今のところはこんな感じかな?色々使えて便利な反面、ちゃんと制御しないと今までの魔言以上に暴走しやすいから気をつけてね。
柔軟性は暴走性を表裏一体であって、その魔力の質や量、想像、発動時の空間条件に加えて――」
「ユタ、うるさい」
「こ、これからいい所なのに……とりあえず、色々な事が出来る魔言なんだ。キュビオの真名は吸収。だからまずは何かを吸収するイメージを持つことが大切だよ。後は制御だね。昔暴走させたのもキュビオだったでしょ」
「ま、まだ覚えてたの……むー」
吸収、吸収か……極めたらブラックホールみたいなの作れるのかな?最初の暴走はそれこそブラックホールみたいなもんを作ってしまったしな。
後はなんだろう。魔術を吸収して魔力を回復する盾とか鎧なんかも作れるかな。これで体覆ったら無敵じゃね?……いや、それなら皆やるか。きっと何かしら理由があるんだろうな。自分で魔術放てなくなるとか、なんかそういう、干渉があるんだろう。
「じゃあ、実際に使ってみよっか」
「え?いつもはもっと色々説明してから……」
「あんまり時間もないからね」
時間。多分、はじめて魔力を暴走させた時の話だろう。とても衝撃的だったのでよく覚えている。
「後半年くらいしかないからね」
ユタはそう言って、困ったように笑いかける。
「ご飯出来たよー」
そんな事を考えていたら、サンから声が掛かる。今日も1日が終わる。