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十一話 アンと録石

12/15 最後の1行付け忘れてたのを追加しました。


 私は考えていた。ユタのその考え、或いは決意と言う物に対して。

 ユタは独り立ちするようだ。私もそれはしたい。だが彼は7歳だ。私に至っては1歳。さすがに冒険者となるには早すぎる……だろ?私の中の、現代日本の常識が邪魔をする。ここは日本じゃないんだけどなあ。

 あ、でも10歳になるまでは、とか言ってたな。10歳で独り立ちするつもりなのか?……異世界物だと確かにそのくらいの年齢で冒険者にー!とかテンプレだけどなあ。実際家族がってなると話が変わってくる。


 今日からセレンは1週間程家を空けるらしい。テンプレ的だが冒険者ギルドというものがこの世界には存在していて、そこで"討伐"依頼なる物を受けたからだとか。1週間って結構遠いのかな?

 確かに仕事をしなければ金が尽き、そうなったら露頭に迷いかねないんだが。サンはセレンと同行してる。浮気だったりして。ねーな


 つまり、今日は魔術を教えてくれる人が居ない。外ではロニーがリハビリと称した筋トレと魔トレをしてる。

 なら私は録石チャレンジでもしよう。あれから数日間、サンとセレンに魔術を教わり、ユタとこっそり魔力制御の練習をしているが未だに録石が上手く扱えない。

 いや、前よりかは上手くなったと思う。一瞬音が流れるようにはなった。ユタは「コツさえ覚えたら難しくはないよ」って言ってたけど、その"コツ"と言うのは教えてくれない。ユタと一緒に魔力の制御を繰り返すうちになんとなくは流せるようにはなったんだけど。


 と言うわけで、暫くは録石チャレンジだ。ユタかセレンが居る時じゃないと魔術は使っちゃダメって言われたし。ぐぬぬ。



◆◇◆◇◆◇◆



 それは唐突だった。ある日突然自転車に乗れるようになるが如く、パズルのピースがハマるが如く。


 録石をイジって3時間、私は飽きていた。3時間もの間神経すり減らして録石に魔力なる謎の力を送り込んでいたのだ。そりゃ飽きるわ。

 集中力も途切れてきたし、休憩するかなーとは思いつつ、適当に流してみたら音が流れた。いや、音が流れ続けた。

 あまりにも呆気ないチャレンジクリアに自分でも少し驚いたが、少しするとロニーに自慢してやりたくなった。だから私は外に行く。


「パパ!ろくせき!使えるようになった!……パパ?」


 あれ、さっきまで外に居たはずのロニーが見えない。奴はどこ行った?せっかく使えるようになったのに……。なんて考えていたら、後ろから声が掛かる。


「おお!凄いじゃないか。ユタより早いぞー」


 振り向くとロニーの姿は見えない。でもロニーの声がするし、ロニーの魔力もうっすら見える。


「パパ?」

「ごめんごめん。透明化の魔術付けっぱだったね」


 そう言うとロニーの姿が現れる。え、何それ凄い。その魔術あれば覗き放題じゃん!なんで女に生まれてしまったんだ……男の体なんて見たくないが、女の体も見たいなんて思えない。大人になれば男の体を見たくなるんだろうか……。


「あれ?でもアンは魔力が見えてるんだろう?魔力は隠せてなかったから見えてると思ったんだけどなぁ」

「なんかね、パパの魔力ぼやぼやしてるの」

「ああ、やっぱりそう見えちゃうのか……うん、アンが気にすることじゃないよ」


 ロニーは私の頭を撫でながら苦笑する。


「パパ、とうめいの魔術ってどうやるの?」

「うん?アンにはさすがにこの魔術は早すぎるよ。というか、これを考えついたユタもユタだけどね……はぁ、自信喪失しちゃうよ

 まぁまだまだ改良の余地はある魔術だけどね。魔力を隠せるわけじゃないから」


 はぐらかすロニーだが、自信喪失は本音っぽい。つーかやっぱユタは異常だと思う。なんだあいつ。


「さってと……そろそろご飯だね。すぐ作るからね」

「うん!」


 太陽は真上を通り過ぎた。前世なら13時とか14時とかの頃合いだろう、確かに腹ペコだ。



◆◇◆◇◆◇◆



 食後、ロニーはまた外で暴れてる。あれもうリハビリじゃねーよ暴れまわってるだけだよ。

 そんな事より録石だ。せっかく聞けるようになったんだから、家中の録石を聞いて回ってやる!!



◆◇◆◇◆◇◆



 頭痛い。録石って使い過ぎると頭痛くなる。アン学んだ。

 いやいてーよ。なんだこれ。眉間の奥のほうがズキンズキンしてる。自分の鼓動に合わせて頭痛が来る。ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……


 だがそれのお陰で新しいことをたくさん学べた。頭は痛いが。

 まずこの世界の文字について。実はかなり気になっていたんだが、生まれてから数度しか目にしていない。それも数字を見ただけであり、それ以外は見たことがない。よくよく考えてみれば当たり前だと思う。

 こんな便利なものが存在してるんだ。本ではなく録石が主流の世界で、文字はほとんど使われていないらしい。王族や貴族、それに一部の人らを除くとそもそも文字を必要としないから教えてない。というのが理由だ。もしかしたら紙が高価だったりするのかもしれないし、識字率を上げると国家転覆がーって言うアレかもしれないがそこら辺は録石だけじゃ分からない。

 前世持ちの私としては、メモとかどうすんの?と思うところだが、メモはメモで専用の録石……と言うか、録石の欠片と言う小さな録石を使うらしい。文字すっ飛ばして全て音声入力の世界だ。素晴らしい。もう漢字練習とか言う苦行からは解放されるんだ……!いやこの世界に漢字みたいな複雑な文字があるのかは謎だが。後頭痛い。


 それから魔術についても面白い録石を見つけた。「魔術初級書。魔力の制御と魔言、魔術の構築について」と言う録石だ。なんでも魔術学校なる施設が作っている、いや書いている?録石であり、簡単ながらも分かりやすくまとめられている。乗っていた魔術の1つを窓から撃ってみたらロニーに怒られたのはご愛嬌である。

 "リチ・ダン(炎よ、放て)"と言う魔術であり、この魔術は「低級火球」なんて通名を持っていたりする。つまり低級火球と言えばリチ・ダンであり、リチ・ダンと言えば低級火球なのである。それ以外にも生活魔術というジャンルの中に水を生む"発水"だったり"発火"だったりも記載されていた。


 今まで疑問に思っていた謎に少しばかり近づけた気がする。それは"この世界は科学ではなく魔学?が発達した世界なのではないか?"と言う疑問である。録石を読み進めるうちに、この世界は思った以上に発達していて、それらのほとんどが魔力によるものだと言うことが分かった。

 録石とは前世で言う紙、音の流れる録石は本であり、映像の流れる録石はDVDのようなもの。魔術は剣であり銃であり、家電の代わりに魔道具と呼ばれるものが存在してる。つまり頭痛い。


 ……想像していた中世ファンタジー世界ではないな。こういうの、マジックパンクって言うんだっけ?思ってたよりも面白いかもしれない。最弱キャラがスライムな世界でも、石の中に閉じ込められてしまう世界でもないということだ。頭は痛いけど。


 ダメだこれ。頭痛いの治んない。ロニーのところ行ってなんとかしてもらおう。クッソいてえ。治ったら"ダニヴェス魔物百科第3巻"を読んでみよう……1と2は見当たらなかった。



◆◇◆◇◆◇◆



 録石をかなり読んだが、情報の古い物もかなり多い……つーか400年前の録石とか普通に読めるのがびっくりだわ。情報古すぎてダールの事が書かれてなかったり、そもそもリニアルがセラって名前で呼ばれてたり歴史を感じる物だったぜ。

次回16日の更新はお休みです。

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