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後悔

 俺はクズだ。

 あぁそうさ。社会のごみだ。

 今までに随分と酷い事をしてきたのかもしれん。


 たが、一度だって後悔した事はねえ。

 店の金を持ち逃げした後も、爺の家に押し込み強盗した後も、女子高生を捕まえて強姦した後も。

 女を殺した事だってある。

 あんまり騒ぐもんだから、つい殺しちまった。

 

 それでも、後悔なんてこれっぽっちも感じなかった。

 俺は自分さえ楽しければ、自分さえ気持ち良ければそれで満足だったんだ。それが唯一の正義だったのさ。

 

 あぁ、でもこりゃあないぜ。

 いくら何でもあんまりだろ?

 こうも毎晩出て来られたんじゃあ、うるさくって眠れやしねえ。

 拘置所の独房ん中にうじゃうじゃいやがる。


 ちくしょう。

 俺が殺した女はたったの3人じゃねえか。

 なんで10人以上も居るんだよ。

 どいつもこいつも辛気臭え顔しやがって。

 そろって何か呟いてやがる。

 鬱陶しいったらありゃしねえ。


 もちろん看守にも文句は言ったさ。

 違う独房にも変えてもらった。

 なのにこいつら関係なく出てきやがる。

 

 ここに来て4日目に、ついに俺が殺したと思う女が出やがった。

 変な奴だったから顔を覚えてたんだな。

 いまどき珍しい八重歯が特徴の女で、長くて真っ黒な髪をしていた。

 俺が強姦してる最中も一切抵抗しなかった。悲鳴をあげるどころか、何かをぶつぶつと呟いて、俺を睨みつけてくる女だった。

 腹が立ったんで首を絞めたんだけど、死んでも俺を睨んでやがった。



 寝不足だった俺は、独房のベッドに寝転がっていた。

 やっと眠れそうな気がして寝返りを打ったら、そいつが真横で俺を睨んでやがった。

 

 くそったれ!

 邪魔くせーんだよ!

 言いたい事があるならはっきり言いやがれ!


 そいつはやっぱり俺を睨みながらぶつぶつ言うだけだった。

 頭に来たから殴り掛ったけど、相手は幽霊だからな。当然空振りにしかならねえ。

 諦めた俺はベッドから体を起こして仰天しちまった。

 部屋中にいた女どもがベッドを囲んで、俺を睨みながらぶつぶつ言い始めたんだ。

 

 はははは、なんだこいつら。

 まじうぜーんだけど。

 もう丸3日寝てねえし。

 いいかげん寝たい。

 こいつらに邪魔されずに……。

 なにかいい方法はないか?

 なにか……。


 おっ!

 閃いたぜ!

 いい方法があるじゃねえか!


 なんて事はない。

 簡単なやり方を思いついた。

 クソアマどもに邪魔されずに寝られるぜ。ざまあ見やがれ!

 お前等はいつまでもぶつぶつ言ってりゃあいいんだよ!


 俺はさっそく思いついた方法を試すためにズボンを脱いだ。

 それを手に持って独房のドアの所に行った。

 クソアマどももついて来やがる。

 

 残念だったな!

 お前等がどんなに邪魔したって俺は眠らせてもらうぜ!


 俺は持ってたズボンの股の所を首に縛り、裾の部分をドアノブに括り付けた。

 後はドアを背にして腰を降ろせばバッチリって寸法だ。

 

 どうだ!

 クソアマども!

 これで俺の勝ちだぜ!


 俺はゆっくりと腰を降ろしてゆく。

 クソアマどもも目線を合わせる為に俺を取り囲んでしゃがんでいる。


 あぁー。

 気持ちいい。

 段々意識が遠のいていく。

 その途中で女達の顔が見えた。


 ん?

 

 なんでこいつら笑ってやがるんだ?

 耳まで裂けていそうな、赤い三日月のような笑みを浮かべてやがる。

 まーいいさ。

 これでやっと眠れる……。

 


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