表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

実話

 これは筆者がまだ中学生の頃に体験した実話です。


 当時住んでいた家は海沿いにある一軒家でした。

 学校まで5kmの道のりを毎日、自転車で通学しておりました。

 その日の事はよく覚えております。

 まだ衣替えしたばかりの6月のはじめでした。

 夜半に降った雨があがり、曇り空の肌寒い日だったと記憶しています。

 私は学校へ向かう唯一の道路を必死に自転車を漕いでおりました。

 ふと、海側にある松林の方を向いた時に奇妙なものが見えたのです。


 150mくらい先になるでしょうか。

 そこには普段人などいない場所なのに松の木の下で、白い服を着た人がこちらに向かって手を振っているのです。

 私はぎょっとしてしまいました。

 朝の7時半にそこに人がいる理由は全くないのです。

 というより、その場所に人がいた事は一度もない、そんな人気のない所なのです。

 

 その光景は今でもはっきり頭に焼き付いております。

 とても奇妙で何故か恐怖を感じる光景でした。


 当時は多感な時期です。

 中学生だった筆者も純真な子供でした。

 幽霊の存在なんかも信じていた頃でしょう。

 私は凄く気になるのに2度見はしませんでした。怖くてできなかった。

 幽霊かもしれないと思った私は、自転車を漕ぐ足に一層力を込めて学校を目指しました。


 私がその日、学校でどのように過ごしたのか残念ながら記憶にありません。

 今から想像するに、友達に幽霊を見たと言い触らして回ったのかもしれません。

 覚えてはおりませんが、私は体操部に入っておりましたので、部活が終わってから家に帰ったのでしょう。

 暗くなった帰り道はさぞや怖かったと思います。

 次に記憶があるのは学校から家に帰って母と話しをした時のことです。


 学校から帰ってきた私に、母が開口一番で告げたことは「××の松林で首吊り死体が見つかったそうよ」というものでした。


 ええ、そりゃあもう驚きましたとも。

 私はその日の朝見た事を母に事細かに説明しました。

 母は幽霊の存在をなんとなく信じているような人だったので、すぐに私を玄関に連れて行き、お清めだと言って塩をふり撒きました。

 母の独自の解釈では、手を振っていたのは私を黄泉にイザナう為のものだったに違いないと言う事でした。



 以上の事は筆者が中学生の時に体験した紛れもない事実です。

 ですが……この話には続きがあります。


 実は亡くなられた方というのが、クラスメイトの一人と親戚関係だったらしく、その女子生徒から自殺現場の詳細を聞く事ができたのです。

 彼女が言うには、亡くなられた方は重い鬱病を患っておられ、普段から自殺衝動があったそうです。

 そして、その方がロープの代わりに使ったのが白い布だったらしいのです。

 私が手を振っているように見えたものは実はその布だったのではないか?

 今となっては確かめようもない事ですが、それが真相だろうと思っています。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ