72 新極星の天球
広範囲魔法の一撃をすべての魔王へ食らわす。
攻撃対象を漏らさずにと、俺達集団は一丸で行動を起こす。
黒の魔王へ向けて、他二体の魔王を寄せる。
味方の刻印者の後退を図りながら、全力攻撃によって敵を追い立てる冒険者達。
数は五十から徐々に減り、今や半数以下となるが、次第に三体の魔王が中央へとその身を置くことになった。
俺を堺に、後ろはアッキー、そして待機者が並ぶ。
命を落とす者はいなかったと信じたいが、その数は数十人と少ない。
「……女神ジェイミー、力を」
ざわっと、体質が変化する感覚が全身に走る。
俺はスキルを発動できる状態へ。
タイミングを見計らおうとした時、左の魔王が蹴り飛ばされた。
素早く身を引く影は、俺の壁になるカレンの横を走り抜ける。
そのままルーヴァが俺の後ろへ回れば、ここだと思い、更なる神の名を呼ぶ。
「女神クローディアよ。俺の呼び声に応えてくれ……」
俺がレベル200超えを果たして覚えた滅殺魔法には、新しき神の名前が必要だった。
一呼吸の後、女神からの応答は、体感ともに視覚でも分かるもので告げられる。
魔法陣。
俺を中心に足元から拡大された、緑色系の円の線。
不明な言語が記される模様は、緩やかに回り続けている。
スキル発動の前段階であるはずなのに、異様な圧力を発生している。
質量とでも言えばいいのか、とにかく高濃度の力を感じる。
魔法陣を描かれた大地が軋むようだった。
「イッサさんっ」
「イササっ」
危険を知らせる仲間の声に、自分で展開した大規模魔法陣に呆気を取られていたことを知る。
眼前には――何かを悟ったのか、獣の本性を剥き出し迫る魔王。黒の魔王の唸り声が、吐く息の熱を感じるほどに近い。
だがしかし、俺が怯えることは毛ほどにもない。
「カレン、すまない」
「不要。言ったはずです。私がイッサを守ると」
頼りになる騎士の背中がそう言えば、俺を襲った脅威をぐいぐい押しやるようにして遠ざける。
俺は古代魔導師の杖をかざす。
彼の者らを討ち滅ぼす力が集約するように、高々と掲げる。
そうして、女神からの啓示を、静かに唱えた。
「――新極星の天球」




