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7 悩める俺達


「なんかあの子供、ムカつく」


 神殿の外、出入り口前。

 ユアから蹴飛ばされた小石が転がる。


「まあ、落ち着けよ。相手は子供なんだからさ。しかし、二人で20万ゴールドかあ、結構な額だな……」


 近頃まで俺達がやっていたクエスト報酬が、1000~5000ゴールド。

 泡を吹くような金額ではないが、そこそこ躊躇する額ではある。


「私としては、安いくらいだと思うのですが」


「そうよね~、私もそう思うわ。なんたってレベルの上限を上げるんだから。それってゲームで言えば、チートってやつでしょ? それこそこの世界の神様もびっくり仰天な力なんじゃないのかしらん」


 カレンの意見に、クネクネと身体をよじりながらノブエさんが応える。


「そう考えれば、安いというか、破格の額に思えてきた」


「ねー、値段もいいけどさー、ノブっちが言ってたけど、そもそもレベルの上限の話が嘘なんじゃないの。ノコノコやって来た冒険者からお金巻き上げてトンズラーって感じじゃないの。こうして、なんか払っても良いかな、って思う額が、余計詐欺の手口っぽいんですけれど」


「そんなことはないだろ」


 俺がそう言うと、頬を膨らます顔が返ってきた。


「まあ、聞けよ。一つにあのサーシャとかいう巫女。どうやら巫女は巫女でも神様に仕えるような巫女じゃない」


「どういうこと」


「俺さ、あの子供にこっそりアナライズしたんだよね。まあ、こっそりしたところですぐバレるんだけどさ」


 魔法使いの習性と言えばそうだが、初見の相手(普段はモンスターだが)へアナライズ《情報取得》するのは、癖の域である。

 んで、アナライズを受けた方は感覚として知ることができるので、断りもなく人相手に使うと大概嫌な顔をされる。


「それであの子、レベル20で無職の『外の人』だった」


「そうなんだ。ふーん、こっちの神官とかじゃないんだあのチビっこ」


「イッサ、どうして、アナライズで『外の人』とまで分かるのですか」


 と、これはカレン。

 そして、もっともな質問だ。

 ステータスにその辺の情報は載らないからな。

 けど、


「『地元の人』にはない、特性スキルがあったんだよ」


「なるほど。確かに私達と『地元の人』との違いには、そこがありましたね」


 カレンが言うように、『地元の人』にはないこの特性スキルは俺達『外の人』特有のもの。

 恐らく全く同じ効果はないだろう、特殊効果スキルを俺達『外の人』は必ず1つ持つ。


「んで、サーシャの特性スキルは『限界突破の歌声』だったんだ。いかにもレベル上限を上げそうなスキル名だろ」


「私には、苦しそうに歌うあの子が浮かぶだけだわ~」


 ノブエさんのちゃちゃに皆が笑う。

 でもって、カレンがいち早く真顔になり、間違いなさそうですね、と俺の予想を後押しした。

 特性スキルの名前って変なものが多いけれど、効果を匂わすものである。


「はーい、イッサ先生しつもーん」


「ユア君、どうぞ」


「なんであんた、ハイ・アナライズ使ってないわけ。予想とか要らないし。ハイ・アナライズなら効果まで知ることできたじゃん」


「ごもっともです……。なんつーか。アナライズ使った後、ハイ・アナライズは使おうとしたんだけどさ。なんでしょう、睨まれちゃってさ」


「うわ……相手子供なのに、ミジンコレベルのヘタレっぷり。ひくわー」


「ビビったとかじゃねーよ。あの子の機嫌損ねて、上限を上げる話はなしじゃ、とかなんとか言われたら元も子もないだろ」


「あの、我がままそうな感じなら言いそうよね~。初めっからハイの方、うふ、使っとけば良かったわね」


 どの部分がいかがわしいのだろうと、ノブエさんの言葉を検証したが、どうやら普通のようだ。

 確かにおっしゃる通りなんですけれど、SPの回復手段って限られているから倹約癖ついてるんだよね。


 ①、レベルUP時による回復

 ②、ポーションなどのアイテムにより回復

 ③、ヒーラーの譲渡スキルによる回復

 ④、時間による回復


 俺の知る限りこの4つで、①は問答無用で――ハイ消えた!

 だから実質3つ。


 それで、②のアイテムが一番使い勝手も良くて最高なのだが、いかんせん稀少過ぎる。

 ライフゲージを回復するのはまたに手にするが、SPの回復だと俺今までに、3回くらいしか使ったことがない。

 ちなみに、ポーション類はほぼほぼコーラとしか思えない飲み物なので、時に無性に恋しくなる。


 ③はヒーラーの技スキルによって、SPのポイントを分けてもらい回復する方法。

 こういうのもあって、非常にヒーラーは歓迎される。

 幸運なことに俺のパーティーには僧侶職のノブエさんがいるので、この回復方法ができる。

 でもしかし。

 ノブエさんってSPの最大値が極端に低いんだよね……20くらいだったか。

 それが理由で、以前のパーティーから除名されたとかなんとからしいけど。


 最後に④は、まんま時間経過による自然回復。

 何事も時間が解決してくれるってヤツだ。

 すんげーゆるやかだけどな。

 けど、俺のもっとも現実的なSPの回復方法はこれである。


「ねえ、ノブっち。今ウチら、お金いくら持ってるの」


「ちょっと待ってね、手帳を見るから~。急かしちゃや~よ」


 ノブエさんは背中に担いでいた道具入れの中をごそごそと漁る。

 元いた世界と比べれば便利なところもあるこの世界なのだが、こういうところは不便である。

 こういうところとは、情報化しない物質の扱いだ。

 当たり前と言われればそれまでだが、お金とかもこの類で、ゲームだと数値で所持するがここでは硬貨として所持する。

 加えて、お金つまりゴールドには紙幣がないので、かさばるばかりか、


「今、12万ってところかしら~」


 ノブエさんのように帳簿をつけておかないと、一体今いくら所持しているのか即座にはわかり難い。

 そして、ここからは余談だが。

 このように、一人を財布係にするパーティーの通例にも落とし穴があったりする――。



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