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6 巫女はこんな人だった


「ウチ、追加スキルのほうの上限がなくなるってオチあると思うなー、カレンは?」


「そうですね。私は、巫女はいるにはいたけれども、装備品にレベルを付与してくれる力だった、とか。特性スキルや追加スキルにはレベルが設定されています。しかし、武器武具にはないので、装備品を鍛えるレベルがあっても不思議ではないような気がします」


「ユアのもカレンのも、ありそうだわね~。でもそれだったら、取りあえずは強くはなれそうだから、この旅も報われたことになるかしらん」


「ノブエさんはどう思われます」


「私~、私はやっぱり、レベルの上限を上げてくれる巫女の噂は眉唾で、何かしら、最高レベルの冒険者を狙った罠なんじゃないのかなって、思っているわ~。どうしましょう、何が起こるのかしら、わくわくするわ~」


 日が沈む前、険しかった山道を登り終えた先。

 ローマとかギリシャとか、その辺りの地名が似合いそうな神殿を目の当たりに、乙女ら(心はとの条件付き1名を含む)が駄弁る。


 誰も素直に基本的な『レベルUP』を信じちゃいね。

 カレンでさえ……いや、まあ彼女の目的は強くなる手段であるからして、問題ないけれどさ。


「こんにちは、冒険者さん。こちらへはどのようなご用件で」


 纏う格好は、メイドさんだった。


「こんちわーっす」


 見た目だけだと、ユアよりお姉さん。

 その女性に、友達の家へ遊びに来たような軽さでユアが挨拶する。


「こちらにレベルの上限を上げる力を持つ巫女殿がいらっしゃると聞いて、訪ねて来ました」


 そうカレンが言うと、メイド服のお姉さんはカレンに詳しい経緯を聞くようであった。

 二人の話が終われば、俺達は奥へと案内された。

 踏み入れた大広間。

 数段高いところに、いかにもな感じでお目当ての人物らしき影があった。


「子供じゃん」


「だな」


 ユアに同意。

 着物――というより浴衣か。

 薄い紺の和柄のそれを着こなす、銀髪ツインテールの10歳くらいの子供が、軽く見上げた先にある豪華な椅子に座っている。


「ここじゃ、見た目は当てにならないわよ~ん」


「そだね。ウチ、ほんとはカレンに負けないくらい、たわわな女子高生だったしね」


 ノブエさんの忠告にユアが自分の胸元を見る。

 確かに、個人差はあるが、こっちの姿と元いた世界の姿は異なる。

 俺も鏡を見てびっくりしたものだった。

 カレンが、数歩前へ出る。


「あれじゃね?、階段登る時、あの子のパンツ見えんじゃね?」


「うわ、ロリコン。ヤバ、通報しなきゃ」


「ち、ちげーよ、勝手にロリコン呼ばわりすんな。んで、どこに連絡すんだよ。俺はただ、浴衣ぽい服の丈、短いから心配してだな」


 ユアに言い訳していると、


「貴方がレベルの上限を上げる力を持つという巫女殿であられるか」


「いかにも、妾がその奇跡の力を持つ巫女じゃ」


 上方からの子供の言葉を受け、更に歩み出たカレン。


「なんだろうな。子供のほうもそうだけどさ、堅苦しいやり取りというか……」


「カレンてああいうことあるよね。成りきってるっていうか、騎士的、武士的な感じ?」


「だよな」


「あら~、成りきるって大切よん。自分に嘘ついたら本物になれないわ」


 ノブエさんが言うと説得力あるなあ……と、ユアと顔を見合わせている頃も古めかしい言葉が飛び交い、俺達は自分を妾と言う子供に迎え入れられる。


「名をサーシャと言うようです」


「へえ、外国人?」


 ひそひそと喋るカレンとは違い、ユアの声がデカいこと。


「誰でもかんでも俺達と一緒にすんじゃねーての。多分『地元の人』なんだろ」


「それで、カレンと言ったか。レベル99はそちと、そこのお前か」


 ん!?


「はい、私と彼、イッサが巫女殿のお力を賜りたく」


 俺の代わりに応えてくれたカレン。

 カレンが既にこのサーシャへ伝えていた可能性もあるが。


 アナライズ《情報取得》された痕跡はない。

 なら、上限まで達しているレベル99の者を”見極める”力が持っていると考えられる。

 それはつまり――本物ってことか。本当にレベルの上限をっ。


「ご紹介に預かりましたイッサです。よろしくお願いします」


 20歳そこそこの俺は、10歳と思しき少女に丁寧な態度で頭を下げた。

 プライドとかそういったものと一緒に、生意気そうなガキだな、とか思っていた過去の気持ちなんてのもゴミ箱へポイだ。


「ふむ。承ろう。では、一人10万ゴールドじゃから、20万ゴールドを支払うがよい」


 その声に俺は静かにしていたが、


「え、お金取るの?」


「当たり前じゃろう小娘。世の中タダより高いものはない。そう親から習わなかったか」


 小さな巫女サーシャはそうユアに言って、ふふんと得意気な笑みを浮かべていた。



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