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47 魔王討伐作戦開始


       ◇ ◇ ◇



 冒険者やギルドのエージェント約150名でまとまる集団三つで、この魔王討伐作戦は始まる。

 三つに分かれる討伐隊には、それぞれ名前が与えられていた。


 ギルドのお偉いさんから名前をとった、アリーゼ隊、デカルト隊、ベルニ隊となる。

 俺達はデカルト隊所属となった。

 このデカルト隊の頭は、レベル110の戦士のおっさんが務める。


 それで第一作戦である教会や聖なる祠の奪還は、予定では五箇所。

 その内三箇所を、各討伐隊で攻め落とす。


 初の大規模集団戦に戸惑いはあったが、さすがはレベル99以上の集団である。

 モンスターとの戦いは臨機応変お手の物。

 レベル110の骸骨モンスター、スケルトンロイドが今までにないスキル攻撃なんかを仕掛けてきたが、なんなく対応、すべての敵の駆逐に成功する。


 戦いが終わる頃には、隊の中でのパーティ同士の連携や役割が自然と構築されていた。

 こうなるともう負ける気なんて微塵もなく、士気も高まり――いざ、次の戦地へっ、てな感じなんだけど、俺達は奪還した教会のある街で足止めを食らっていた。


 壊れた建物の柱を利用して、大きな布を張る簡易な陽射し除け。今はザアザアと雨が降るので雨除け。

 急ごしらえ、質素な駐屯所で晩の飯にありつく俺達。


「まったく、なんでとっとと進軍しねーんだって、やっかまれちまったよ。血の気が多い連中ばかりと言うか、頭張る以上、そういう小言は避けて通れねえと言うか」


 デカルト隊指揮官、マサさんが愚痴りながらに骨付き肉へむしゃりとかぶり付く。

 マサさんのパーティと俺のパーティは今後の予定について、上限突破者同士の会議も兼ねた食事をしていた。

 

「結果として、悪天候の中進むことにならずに済んだものの、折角高まった士気には水を差された形にはなりましたね」


 雨と掛けましてその心は、かどうかは分からないがカレンが言う。

 俺達がここに留まる理由は、天候でもなくギルドから三日ほど滞在するようにと通達があったからだ。

 魔王が教会を奪い返しに来る可能性を考慮し、様子を見るらしい。


「どうなんでしょう。ギルドの読み通りに魔王は教会を奪い返しに来るでしょうか」


 とアッキー。


「どうだろうな。根拠はないが、魔王たる者居城でどーんと構えとくもんじゃねえのか? と俺は思う。勇者が攻め入ったけど魔王留守でしたって話聞かねーし」


「あんちゃんの言うようにゲームだとそうだな。ま、俺も戦争を経験した世代じゃねえから、よく分からんが、大将ってのは最後の砦に居るってのが世の常だよな」


 がはは、と笑うマサさんも俺と同じく魔王が奪い返しに来るとは思っていなさそうだ。


「私達が徒党を組み反撃に出ることは魔王も考えていたことでしょうから、仮に奪い返しに来ないとなると余計に不気味には思えますね」


「カレンちゃんの言い分は最もだ。だからこそ城に篭もるんじゃねえかとおっちゃんは思うぜ。おめえらも戦い慣れた狩場とそうでない狩場だと全然勝手が違うだろ?」


 マサさんの言わんとすることは分かる。

 よく知る土地での戦いは地形を利用した戦闘が可能になるし、いざという時の待避所なんかもある。

 戦闘の有利さがある分、倍とまで言わないが、戦闘力がトータル的には向上する。

 逆に不慣れなバトルフィールドでは、トラップやら思わぬ状況に陥るなどして、普段の能力を発揮できないまま戦闘が終わることも多い。


「魔王としては下手に奪い返しに出向くより、今の状況になれば元から籠城の構えだったってことだろうな」


 とデカルト隊指揮官が言うので、魔王は来ないとの結論で話し合いは終わる。

 それで、雑談があれこれあちこちで行われるのであったが。

 しばしの時を経て気づけば俺は、隣に座るアッキーと話し込んでいた。


「つまり、この肉は草や石ころと同じってことなのか?」


「はい。純然なこの世界のものです」


 俺の言葉に、湿気なのか、赤毛をややクルクルさせる頭がしっかりと頷いてくれる。

 肉を口にしたついでに、前々から思っていた素朴な疑問を口にしたのが始まりだった。


 疑問は――なんで動物は教会送りになんねーんだろ、である。


 人間、ひいいては少し経緯が異なるがモンスターも転移後復活する。

 ただ、動物は教会送りになることはない。

 命を絶たれた体はしっかりと食料として存在する。


 それで、アッキーが言うには、俺達『外の人』並びに『地元の人』、そしてモンスターも元からこの世界に存在するものではないからだと説明された。

 元から世界とともにあるものは教会送りなり魔監獄送りになることもないそうだ。


「まあ、この世界のルールってことならそれでよし。逆にイノブタが教会送りにされると困るからな。神様には感謝ってことで」


 言って、俺は話を終わらせようとする。

 アッキーからは『ふえーる』のスキル珠貰ったし(ハートのレア型はもらえずお礼に普通の珠を貰った)なんか悪い気もするが、小さく神話ではどうのこうのが聞こえたので、これ以上深入りしてはならない。


 他にも、『外の人』に江戸時代の人がいないのもちょっと気になってたので、話題にしようと思っていたが……これは、ネタに困った時にしょう。

 いろんな時代からこっちへ来ている人が『外の人』であるが、俺の知る限りそう、何十年も開きがない――限定されたある一定の範囲の時代からなんだよなあ……。


「など、古代と呼べる時代には神の加護なるものもあったそうです。例の巫女サーシャさんも古代遺跡でもある神殿から出なければ、きっとモンスターから襲われることもなかったのかも知れません」


「ぬお、まだ話続いていたのね、アッキー」


 こうしてザアザアと降る雨の中、俺達魔王討伐作戦での初戦でもあった勝利の夜は宴もなく、ひっそり仲間達との談話で終わる。




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