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42/81

42 20対1――②


「エリアルスナイプ!」


 掛け声と同時に、試験管が次々に破裂した。

 女銃士がその武器と技『空気の弾丸』を使い、薬士の投げた瓶を撃ち抜いたのだ。

 つまりは、コンビネーションアタック。

 露ほども期待していなかったので、衝撃がすごい。

 その衝撃の中、痺れ薬を浴びたミロクが床へと崩れる。


「やったねハニー。最高だよハーニー」


「ダーリンが私に愛の力を――」


 膝をつくミロクを見て、状況を再度確認する。

 カレンまでは遠い。

 ライフゲージが回復する模様から、なるべくミロクを遠ざけるようにして戦っていたからな。

 折角削ったライフを回復されては困るから、戦い方としては合っている。

 そして、


「半分かよ……」


 10人は教会送りにされていた。

 と、動けないミロクは前衛職の奴らに任せて、俺はカレンに毒消しの薬を。

 駆けながら横目に見た。

 膝を付いたままうなだれ動けないミロク。

 そこへここぞとばかりに、武器を振り上げ襲いかかる戦士達。

 ライフゲージは黄色は黄色でも程なく赤色に変わりそうな残量。

 恐らく、この攻撃でケリがつく。

 そう勝利を確信しようとした時に、見てしまった。


 女狐の笑う口元。


「待て皆っ、なんか」


 ミロクが舞った。

 それは乱舞であった。

 技スキルでも使ったようなスピード。けれどそれは間違いなく”素”の動き。


 俺はハイアナライズしていた。変わらず技スキルなんて存在しない無職だった。

 だが、一度見た時と違う箇所がある。


「なんでだ、なんで動け――」


 すべての文句を吐き出せず、戦士は光とともに消えた。

 それに続き、ぱーんぱーんと二つ光が弾ける。

 ゆらり。

 フラつきでもなくゆらり。

 刹那の動きから緩やかなものへとなるミロクに、残る皆は後退る。俺もカレンを諦め距離を置く。


「ヒ……ヒヒヒッ、上げて落とす快感ってのは最高だねえ、アタイを襲う時ときたら。ヒヒヒッ。その勝ち誇った顔が一瞬に間抜け面になりやがった」


「そうそう、そういやこんな感じだったな、こいつって……」


 二重人格とまでは言わないにしても、戦い始めると荒々しくなる口調と性格。


「お前ら、アタイが麻痺ったとでも思ったんだろ、ええ? そうだろ。キャハハ、馬鹿だよな、馬鹿、馬鹿」


 乱舞の難を逃れた騎士が、不思議そうな顔と悔しそうな顔のどっちつかずの顔。


「ミロクは『状態異常耐性』のスキル珠を隠し持ってたんだよっ。毒、眠り、麻痺、石化、すべて無効化する」


 吐き捨てるように、騎士へ告げた。

 誰かが言う。

 すべての状態異常を無効化するスキル珠なんて聞いたことがないと。

 あるんだよ。俺は持っている子を知っている。


 誰かが言う。

 どこにスキル珠を隠し持っているんだと。

 胃の中とか、女だしいろいろ隠せる場所はある。


 それで、事実の検証なんて後回しだ。


 要は、このミロクがやっぱり性悪女だったことを俺からは心から叫びたい。


 始めのあの毒騒ぎ。

 結局あれで、毒薬ではなかった=デカルトさんの認識が正しかったとなり、何かを所持していると疑うことをどこかしら疎かにさせられていた。

 たまたま念の為とアナライズしなければ、俺も今だに困惑の中にいただろう。

 こいつ相手にそれは命取りになる……のだが、ミロクにとって俺達の隙なんて大した問題じゃないはずだ。

 強引にでもねじ伏せる力を持っているんだからな。


 だからこそ性根が意地汚い。

 自分が楽しむ為だけに俺達を笑う為だけに、リスクを承知で芝居を打ったんだ。

 攻撃が当たらない、毒が効かないなら、俺達は他の状態異常攻撃を考える。


 戦闘開始からしばらくは『状態異常耐性』をセットしていなかったはずだ。

 一度目のアナライズでは確認できなかったからな。

 もうアナライズされることもないと判断した頃合いに、ひっそりとスキルをセットしたんだろう。



【レベル99 ミロク――無職】


 体力値……202


 攻撃力……241


 防御力……218


 魔法力……205


 素早さ……233


 器用さ……180


・特性スキル/毒の花道<*>


・追加スキル/状態異常耐性



 追加スキルの影響か、『状態ステータス』から毒の印はなくなっていた。

  それで、ますます最悪としか思えない感情の中、まったく理解できないことが一つあった。


「……どうして、無職のお前が追加スキルをセットできる。職があるからこそ追加スキルは使えるんだぞ」

 

 戦士は3枠、魔法使いは2枠など職によって設定される追加スキルのスロットは、当然、無職になんてない。

 てか、無職にあってたまるかっ。2枠で頑張っている有職の俺が馬鹿らしくなる。


「ククク……」


 俺の尋ねに嬉しそうな、それでいて背筋が凍るような笑顔が返ってきた。




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