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3 俺は耳を疑った。いいや、自分の耳を信じたい

       ◇ ◇ ◇



 レベル99騎士カレンが、仲間になって一週間が経った。

 クエスト報酬の受付所にて、


「いやー、一人増えただけではかどるはかどるー」


 ユアが屈託のない笑顔で、窓口のおっちゃんと喋る。

 そうしてから、跳ねてこっちへ戻ってきた。


「はい、ノブっち3000ゴールド」


 モンスターのドロップアイテム『アリアントの牙』10個と引き換えに得た報酬。

 報酬である金貨はパーティーのお財布担当のノブエさんへと渡る。


 冒険者ギルドが発注しているクエストをこなして金を得る。

 とてもシンプルな仕事だ。


 冒険者になるにも、ギルドへ行って用意されている羊皮紙に名前などを書き込み、そこで祀ってある女神像からの職種のお告げを聞くだけでいい。


 冒険者とは誰でも就けるありふれた存在……なのであるが、俺達のような『外の人』がほとんどだったりもする。

 『地元の人』には人気がない仕事なのだ。


 『外の人』とはこの世界以外に、別の世界を知る人間を指す。

 もっとも、俺は俺の知る地球以外の世界から来訪しました! なんて奴とは会ったことがないし、もっと言えば日本以外からの『外の人』を知らない。


 対してこの世界しか知らない人達、元からここにいる人達を『地元の人』。

 さっきの受付のおっちゃんは地元の人。

 ちなみに、地元の人にもレベルはあって、上限も恐らく俺達と同じ99。

 寿命や病気での死亡以外、天に召されることもなく、その辺も一緒だ。

 

「あの、皆さん。折り入ってご相談があるのですか」

 

 受付所を出てすぐだった。

 先をゆく俺達へ、カレンが声を掛けてきた。

 神妙な顔に、このタイミング。

 当座の資金稼ぎが目的で、俺達と一緒に行動していたのは知っているからして。


「とうとう、この時が来たか……」


 はあ、と俺は溜息。

 長い袖の上着に長い裾のスカート、襟元もきっちり閉められ、ユアと比べれば肌の露出が少ないカレンだが、麗しきその容貌は目の保養に十分だ。

 どうやら、そんな彼女とのお別れの時が来たらしい。


「カレン、魔王退治に行くんだね」


 と、ユア。


「いえ、魔王退治には行きません」


「そうかあ、もう行く――うほ、行かないの?」


 と、これは俺。


「何、分かりやすい顔で、嬉しそうにしてんのさ」


 ユアからの指摘はスルーして、じゃあ、カレンの相談って何? って話だ。


「レベル95以上、私を含め半分を最大レベル99のパーティーで挑んだのにもかかわらず、魔王は倒せませんでした」


「うーわ、それで勝てないんだ。魔王ってやっぱ魔王なんだね。ゲキ強じゃん」


「完敗ってわけではありませんでした。あと少し、あと一歩のところまでは追い詰められたような気はしています」


 他人事のような軽さで話すユアに、カレンは悔しそうな表情を見せていた。


「ですから、私、そのあと少しを補う為に、レベルを上げようと思うのです」


 カレンの言葉に俺は固まった。

 普段から冗談をいうような性格でもない彼女――、


「あ、あはは、強くなりたいのはわかるけど、何言ってんだよ、レベルを上げるつたって、カレンは俺と同じ上限の99なんだぜ、それ無理っしょ」


 俺はカレンを否定した。

 だが、言いながらに俺の気持ちは、彼女の「レベルを上げる」その言葉の意味へ期待を高める。

 どくんどくんと勝手に高鳴る心音とともに、二の句を、返答を待った。


 そして、凛とした顔はこう告げた。


「魔王城へ乗り込む際に私、風の噂に聞いたのです。レベルの上限を引き上げる巫女がいる、と」




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