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29 アッキーの趣味と秘密

 ここは風呂場である。

 もっと言えば、露天風呂。詳しくは今晩お世話になる村の共同浴場の脱衣場である。

 そして今、服を脱ぐのを躊躇う俺の傍には、ずっと着いて来ていたボクっ娘アキラちゃんがなぜかいる。


「うーんと、アキラちゃん? もうここからは男湯になるから、その……君は向こうに行かないと」


「いえ、ボクはここで合っています。……あの、イッサさんが言いたいことは良く分かります。ボク、よく女の子と勘違いされるので」


 俺は君の言っていることが良く分からんのだが……もしかして。


「あれか、あれだったのか。どう見ても女の子にしか見えないが、君は俺に自分は男の娘って、そう言いたいのか」


「はい。ボクは男の子です」


 ガーン。

 とか擬音付きで驚くこともなく(少しは「は!? マジで」とはなったが)、そっかとあっさり返す。

 俺が今いるところは、見た目でもなんでも判断できない時がそこそこあったりする世界だからな。


 今日知り合ったばかりだし、まじまじ見ては失礼だよなと自制心を働かせ、さて、と俺は上着を脱ぐ。

 そうしたら、隣の棚へガシャリとパンパンに膨れた革袋が置かれた。

 何気なく見てたら、


「これはスキル珠の入った革袋です」


 アキラちゃん、もといアキラくんが言う。


「へえ、って、えらくどっさりな感じだな」


「はい! ボク、スキル珠を集めるのが好きで、ほんとは額とかに飾っておきたいのですが、それだとかさばってしまって。だから仕方なく……革袋に入れると珠同士が擦れて傷が入らないか心配なんですよね」


 なんか途端にハキハキ感満載になったアキラくんが、その革袋の口紐を緩めていく。

 別に中身を見せてくれなんて一言も言っていない……が、太陽のような笑顔の前にして俺の意思表示は無理でした。


「イッサさん。これ見て下さいよ。リング状のスキル珠です。あとこっちはハート型。かなりレアですよこの形状は」


 へえ、珍しいと言うか、初めて見た。


「それ、女子に贈ると喜ばれそうだな、ちょちょ」


 もっとじっくり見てくださいと言わんばかりにスキル珠を手渡された。


「大丈夫です。この二つは『ふんばーる』と『ふえーる』なので、スキルレベルのない物ですから」


 いや、レベルのリセットを心配したのもあるが、こういった貴重な物ってあんま触りたくないやん。

 更に『ふんばーる』『ふえーる』系って元々レア珠で、その珍型なんでっしゃっろ。あきまへんって、そないな貴重なもんわてなんかに。

 などと戯れている間にも、次のレアスキル珠を袋から探す様子のコレクターアキラ。

 どうやらスキル珠講座はまだ続くようである。

 うむ。

 ここは悪いが阻止せねば。


「なあなあ、アキラちゃん、いやアキラくん。俺達風呂入りに来ているわけだ。それ部屋に戻ってからでいい?」


「はっ、すみません。久しぶりに見せる相手がいたので嬉しくて。ここがどこか忘れていました。すみません……」


 しゅんとなるその様に心が痛くなるが、それはそれとして、俺はほいほい脱いでいく。

 隣でも、はらりはらり衣服が脱がれていく。

 ……なんだろう。

 彼の顔を見ているとついついちゃん付けしたくなる自分の気持ちは理解できる。

 ただ、この目の前にある、丸みのある白い背中と柔らかそうなお尻を見て湧き上がる自分の気持ちには疑念を持ってしまう。


「ええと……アキラくん、君男の娘っていったよね。確実にそう言ったよね」


「はい、ボクは男の子です。あの、ただこっちの世界に来たら体が女の子になっていました」


 それは……つまりそこにあるのものは、男子であってそうじゃないケツってことなのかっ!?




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