28 彼の出会いは彼女の再会でにゃんにゃんする
「キミ、エロいにゃーね。ルーヴァの服、切り刻むつもりだったね、にゃ。カレレの彼氏じゃなかったら、噛み付いていたよにゃ」
モンスターを殲滅した岩肌の側。
今俺の目の前には、やっつけのようにして『にゃ』を付ける軽口が好きらしい獣っ娘がいる。
年の頃は俺と同じかちょっと上なのかな?
とある盗賊っ娘にはない豊満なボディと、とある盗賊っ娘にはないセクシーさを口元に感じる獣人女子だ。
が、正確にはこの世界に獣人はいないので、職業が獣人の冒険者ってことになる。
そのようにカレンから紹介された。
ちなみに服は、不思議なことに(残念なことに)ダメージを負わないんだなこれが。
つまり、彼女の冗談ってことである。
「ルーヴァ、イッサは今お世話になっているただのパーティ仲間です」
とのカレンの紹介に、
「お世話しているらしいただのパーティ仲間のイッサです。先程は特に深い意味があって、あの魔法を使ったわけではありませんので、誤解なきようよろしくお願いします」
「これこれは、にゃ丁寧にありがとうにゃね。ちなみにルーヴァの耳と尻尾は飾りにゃので動いたりしないから、期待しちゃだめにょろよ」
なんだか、いろいろ定まっていない獣人ルーヴァに愛想笑いを浮かべていると、隣から小柄な子が一歩前へ。
ローブを纏う赤髪の、どことなくおどおどしているようなその子は、ルーヴァと対照的に素朴な感じの可愛いらしい子。
「初めまして、あのボク、アキラと言います。僧侶職です。えっとボクのレベルはルーヴァやカレンさんと同じ99です」
なんだろ。
オレっ娘じゃない分マシな気もするが、変な獣人の次はボクっ娘僧侶でした。
などと、微妙な濃さがあると思いつつもこの二人、かつてカレンと魔王退治に行ったんだなよ。
実力は本物のレベル99ってことで……さっきの戦闘は、別に俺達の出る幕でもなかったような気がする。
「いやや、でも助かったよ。獣人職って単体技しかないし、アッキーも自分の回復でSP使いまくってたから、もしかするとヤバかったかもしんない」
「本気を出せばルーヴァがあの程度の相手に苦戦することはないですよ。大方貴方はモンスターが逃げ出してくれるのを待っていたのでしょう」
「んー、そうなれば良しとは思ってたけど、半々かな」
カレンとルーヴァの話に耳を傾けるも、話の内容は理解できるがイマイチ得心には至らない。
そんな俺の気持ちを悟ったのか、ボクっ娘アキラちゃんが『ルーヴァは地元の人なんです』と教えてくれる。
ああ、なるほどね、だからあんまり生き物は――。
「一応冒険者だし、ルーヴァは遠慮なくモンスターは倒せるにゃよ」
付けネコ耳がくるりとこっちを向く。
「俺に対してはネコ娘にゃんすね」
「そうにゃ。男の子はこれが好きなんだろ、にゃ」
「いや俺はその属性持ってにゃいから、別になんともにゃいっすよ」
「そうにゃのか。イササはもええににゃらないのにゃね」
「もええにはにゃらにゃいっすね」
こうやって、にゃーにゃー会話を続けることしばし。
カレンがさてと、動きを見せた。
「イッサ。それにルーヴァにアッキー。積もる話はありますが、ここでずっと立ち話もなんですし、村に行ってからゆっくり語らいましょう……にゃ」
どうやら言ってみたかったらしいカレンの初々しい『にゃ』に、俺は前言撤回突破で激しく萌えた。