26 旅立ちの朝は別れの朝ではあるけれど
早起きしたガーマでの朝。
二手に別れることで旅に必要なものも幾らかあり、それらを準備するためだ。
近くではカレンとノブエさんが地図を広げて話す道具屋の軒先で、べたんと座る俺は購入したばかりの荷物箱に細工を施す。
屈むユアはそれを見ている。
俺は平べったいランドセルのような箱の横に、輪っかを取り付けた。
そうすることで、この邪魔な古代魔導師の杖が収納できるって寸法だ。
どっこらせと立ち、よいしょと背負う。
「どうだこれ、おかしくないか?」
杖を備え付けた道具箱をユアに確認してもらう。
「イイんじゃない」
と、てっきりダサいとか言うと思ったが、そんなことを言われた。
うーん。
「何よ。じーと人の顔を見て。またウチにコクる気?」
「だあ、ちょ、あの時はあれは告白とかじゃねーし――その話はもういいだろ。あれだよ。ユアがパーティ分けることによく納得したよなーって思ってさ。それで」
「言ったじゃん。ウチ知らないところで教会送りとかヤだし、勝てないモンスターのところにいても暇だし、何もしなくてもお金は減るんだから、そしたら折角貯めたゴールドも減るし」
「まあ、そうだけどさ……」
「はいはい、皆まで言うな、イッサ君。分かってるよー。イッサがユアちゃんと別れるのが寂しいってことは。だから、はいこれ。これをユアちゃんだと思って大切にするんだぞ、えへ」
ユアからカエルのぬいぐるみを渡された。
イッサはこれで、寂しい夜を迎えずに済むだろう、ってことなんだろうが。
「プレゼントのフリして、ていよく景品のカエル処分すんなよ」
「だってさーこのゲロ吉、全然可愛くないからさー、イッサにお似合いかなーって」
返却はお断りですとユアは腕を後ろで組む。
よって、俺の道具箱は圧迫されることになった。
そこへ、カレンとノブエさん。
話しながら俺達は街の出入り口へ。
「それでは、ユア、私達は行きます」
「うん。気をつけてね」
「ユアも」
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけるのよ~、イッサって私のような女から見れば意外と好みの顔なんだからん」
「あんまり遅いと、別の魔法使い探すかんね。あとちゃんと、カレンを支えてやってよね」
怖いこと言うノブエさんは脇を締めて小さく、支えられるのは俺のだけどなと返答したユアは頭上で大きく手を振る。
「いってらっしゃーい」
「いってきまーす」
再会のある別れの言葉で手を振り返し、俺とカレンはベネクトリアへ向け旅立つ。