22 カレンの告白
オシャレなカウンターテーブルにはドリンクが2つ。
そのうちの1つはアルコールが入っており、普段から飲みもしないのに注文してしまった。
注文した以上は口を着けるのがマナー。
くいっと青い液体を喉へ通す。
カレンの俺への告白。
告白に違いないそれは、俺の思っていたのと違っていた。
結果、思いも寄らない果ての思いも寄らない結果だった。
いやはや、ややこしいな。
『私はテレル山でレベル上限を上げたら、このパーティを抜けます』。
俺が期待して待ったカレンの口から出た言葉はこれだった。
そして、俺だけに話したかった理由であるが、俺がこのパーティのリーダーであるから、脱退に際して代表者への事前の断りだそうだ。
こういうのがカレンの中にある筋らしく、どうしてもテレル山へ向かう前には伝えないといけなかったそうな。
なんかそれが、最低限の礼節らしい。
自分の勘違いによる、穴があったら入りたい恥かしさに、いつかはと心の片隅に置いていたカレンが抜けてしまう現実を、再確認させられた俺。
まともな返答はできず、とりあえず何か飲もうかと俺はお茶を濁すのだった。
「カレンはもっと、不真面目にならないとな」
粗方落ち着いた思考で出した答えである。
「不真面目ですか。……私は十分に不真面目です。みなさんに伝える覚悟がないばかりに、ずるずると引き伸ばしてしまいました。身から出た錆ですけれども、だから今、ユアやノブエさんへ伝える機会を逃してしまっています」
言って、しゅんとなるカレン。
だから、そういう物の考え方をだね、と言いたいのだけれど。
面倒な性格と言えば、それまでだが――。
カレンとしては、ユアやノブエさんにも脱退することはちゃんと伝えたい。
けれども、今回の冒険『カジノ』の主役であるユアやノブエさんの楽しい一時に水を差したくない。
じゃあ、明日にでも伝えればと思うのだが、テレル山へ向かう前に自分の脱退をユアやノブエさんへ話さないのは不誠実だ、的なことで駄目らしい。
俺の解釈だと、明日になればパーティの目的が『カジノで楽しもう』から『テレル山でレベル上限上げ』に変わる。
この変わった時点で、旅の目的の意味するところが、レベル上限を上げた後=カレン脱退、としないことが仲間への偽りになる。
たぶんこんなところで、無駄に悩んでいるんじゃないのかな。
「結局私は、自分が誠実でありたいためだけなんです。こんな風に、自分が悩んでるってそれをイッサに分かってもらって、それで私は自分を、正当化しようとしている意地汚い女なんですっ」
強い語気に驚きながらに、カレンってこんな感じだっけと違和感を覚えた俺の目が、いつの間にかカラになっていたグラスを捉える。
そうして、ある推測に至る。
「カレンの飲んだほうが、酒だった……のか」
「お酒。はい。私お酒飲みました。大丈夫れす、大丈夫です。私こっちで成人むかれてますから」
それから、カレンがテーブルへ打っ伏すのに、ものの数分と掛からなかった。
可愛い子は寝顔も可愛いくて、見てる分には良いのだけれど、
「なんだかなあ……」
である。