13 ドラゴン戦線異常なし
◇ ◇ ◇
ウーゴの街を出発して2日目の朝には森林地帯へ入り、昼前にはロニ森林園へ到着した。
そして、見透かしの水晶にてアナライズされる俺。
森林へ入るためには、道の入り口で待つ受付の人へ『入森料』なるものを支払わなければならなかった。
料金はレベル1つにつき10ゴールド。
俺は99なので990ゴールド。
ジュエルドラゴンの出没地が私有地なのだから、開放してくれるだけありがたく、仕方がないと言えば仕方がないので、ゴールドを支払うことに異論はないのであるが……。
俺はこういったこの世界の、レベルに応じた料金システムには不満だった。
宿屋もそうであるが、高レベルってだけでなぜか利用料金が高くなる。
なあーんか、損してる気がしてやまないんだよね俺。
この世界。無駄な高レベルって、確実に損だよな。
「ロニ森林園って言うくらいだから、やっぱりロニさんって人が、ここら辺全部の地主なんだろうね。絶対お金持ちだよね。間違いなくお金持ってるよね。男の人かな、女の人かな」
『玉の輿しー玉の輿しー、人生一発逆転の玉の輿し~』と自作の歌を口ずさむユアの後をついて行く。
すると木々がない開けた場所へ出る。
んで、先客のパーティがいたので、
「ども」
と挨拶と会釈を送る。
「ああ、どうもどうも。今日は良いドラゴン日和で良かったですね」
つまりは、快晴の良い天気ってことね。
職業忍者っぽい人から、脳天気に言われた俺達は歩みを止めることなく、次の”開けた場所”へ向かう。
それを繰り返すこと数回目、人影のないところにやっと出くわした。
「結構、他のパーティもいたなあ」
どうやらここは大人気スポットのようである。
まさに世界共通っていうか、儲け話は人を惹きつけるもののようだ。
「んじゃ、後はここでジュエルドラゴンがやってくるのを待つだけだな」
「ですね」
と、カレン。
そして、
「ドラゴンめ、とっとと来い。強く賢いウチが一撃で成敗してやろう。だはははは」
ユアがなんか空へ吠えていた。
変な物でも拾い食いしてたか……と、不審に思う目を向けていると、くるりと褐色少女が振り返る。
「兄貴の持ってたマンガにさあ、ドラゴンと戦うヤツがあって、なんか折角だしその主人公をマネてみた」
「へえ……あれだな。なんつーか、そのマンガ面白いの?」
「うーん、ズバリ、つまらない」
「そうか。あと……あれだな。なんつーか、あんま他所のところでは、そういうのやめておいた方がいいぞ」
「心配されなくても、ウチ、イッサと違うから。叫んだら気持ちイイかなーって思ってやっただけだし」
「あらあ、気持ち良くてヤっただなんて、なんの話をしてるの~、私も混ぜて混ぜて~」
とまあ、こんな感じでのんびり過ごしてピクニック気分を味わっていると、お目当てのモンスターが上空からやって来た。
竜系モンスター、ジュエルドラゴン。
その姿はドラゴンじゃないって言ったら、炎上すること間違いなしのザ・ドラゴン。
体長は15メートル~20メートルクラスが一般的らしい。
俺はあんな大きいモンスターを相手にする時、相手をクジラと思うようにしている。
日本人は昔、デカいクジラを獲って食べていた。
どういう方法でかは知らないが、先人達はレベルも魔法もない世界で戦い勝利した。
だから……俺もやれるだろう、ってなもんだ。
「いや~ん、ほらユア見て。イッサの目が漢の目になってるわ~」
「なんだかんだ言って、うちの魔法使いはやる時はやる魔法使いだからね。期待してるよー」
「来ます」
バサリバサリ。
土煙を上げる大地へ、尖る爪を持つ獣の足が着く。
広げていた翼を折り、ドラゴンはその突き出る口を開け吠えた。
騎士は剣を抜く。
盗賊は獲物を狙う。
僧侶は身構える。
魔法使いは手をかざす。
「いざ、カレン・マクガレイ推して参るっ」
「君のお宝、ユアちゃんがいただいちゃうよー」
「私の魅力に嫉妬しないでね」
「俺の魔法とくと味わって逝け」
さあ、戦闘開始だ!